アジア勢きっての長期政権を築くケイロス 「4年前以上」のイランで奇跡を起こすか

河治良幸

モロッコとの初戦をにらみ、アフリカ勢と3連戦

3月の親善試合でシエラレオネに4−0で勝利。アフリカ勢への対策は十分 【Getty Images】

 イランが初戦で対戦するのはモロッコだ。フランス人のエルベ・ルナール監督が率いるモロッコは、基本的にコンパクトな守備ブロックを組み、攻撃は中盤を起点にしてパスで崩していくスタイルだ。それはイランの基本的な戦い方に似ており、グループ内で最もイランとチーム力が近い。ボールの主導権を握りにいくのか、やはり意識的にカウンターを狙うのか、その判断がポイントになる。

 モロッコは傑出した攻撃のタレントこそいないが、ユベントスに所属するCBのメディ・ベナティアを中心に守備が安定しており、アフリカ最終予選を6試合無失点で乗り切った。アフリカ最強クラスの攻撃力を誇るコートジボワールとの試合も、2試合無失点だった。アフリカのチームに起こりがちな組織の乱れがほとんどないチームに対して、イランは得意の鋭いサイドアタックから打開していきたい。

 3月、イランはシエラレオネ、チュニジア、アルジェリアというアフリカ勢と3連戦を行った。シエラレオネに4−0で勝利すると、チュニジアにはサブ中心のメンバーで0−1と敗れたものの、アルジェリアには2−1で勝利した。特にチュニジアとアルジェリアは、モロッコと同じ北アフリカで共通点が多い。この時期にアフリカの3カ国と集中的に試合をしたのは、ケイロス監督やイランサッカー協会が、いかにモロッコとの初戦を重視しているかを証明するものだ。

 明らかな格上に挑む形となるスペイン、ポルトガルとの対戦は、基本的にどちらも“弱者の戦い”になる。だが、異なるのは両国のスタイルだ。スペインは得意のパスワークで主導権を取りにくることは間違いなく、守備も高い位置からプレッシングではめてくる。それに対し、イランは下がりすぎずに抑えながら、カウンターで仕留めるタイミングを見極めていく展開が予想される。

 一方の欧州王者ポルトガルは、ポゼッションを基調としつつ、時にはカウンターを織り交ぜ、時には意図的に引いて守る時間帯も作るなど、柔軟な戦いをしてくる。その上、前線にはクリスティアーノ・ロナウドというエースを擁している。またカウンターに対するリスク管理が高いところも厄介だ。

 試合を通して見ればボール保持率は50パーセントを切るだろう。それでも、自分たちがボールを持ってアクションを起こしていく時間帯は何度かくるはずで、その中でチャンスを作れるかどうか。セットプレーもカギを握りそうだ。ただ、3試合目となると互いのここまでの勝ち点も試合に大きくかかわってくる。仮にポルトガルが引き分けでも突破、イランが勝ち点3を取ることが突破の条件になっていれば、かなり苦しい戦いを覚悟しなければならない。

チームのブラッシュアップ次第で「奇跡」も

ヨーロッパリーグにも出場したFWゴッドス(左)はイランの秘密兵器になれるか 【Getty Images】

 ケイロス監督がどう対戦をシミュレートしていくかは大きなポイントだが、まずは初戦でモロッコに勝利して、その勢いをスペインとポルトガルにぶつけていくのが理想的なプランだろう。イランは直前キャンプで最終予選のライバルだったウズベキスタン、さらにトルコ、リトアニアとテストマッチをして、本大会に向かう。

「4−2−3−1」の基本システムと主力はほぼ固まっているが、スウェーデンでプレーするFWサマン・ゴッドス(オステルンド)のようなフレッシュな戦力や、アズムンとジャハンバフシュを縦関係の2トップにする形など新たなオプションを組み込む作業を、ケイロス監督はこれからしていくはずだ。前回大会に比べ、タレント力も戦術面もバージョンアップしているイランだが、全体の中でも厳しいグループに入ったことは間違いなく、世間的にはグループリーグ突破をそれほど期待されているわけではない。

 しかし、何度か辞任騒動を起こしながらも、7年間にわたりチームを率いてきた名将が気鋭のタレントを引っぱるイランは、ロシアの地で“奇跡”を起こすだけの準備ができている。

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著者プロフィール

セガ『WCCF』の開発に携わり、手がけた選手カード は1万枚を超える。創刊にも関わったサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で現在は日本代表を担当。チーム戦術やプレー分析を得意と しており、その対象は海外サッカーから日本の育成年代まで幅広い。「タグマ!」にてWEBマガジン『サッカーの羅針盤』を展開中。

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