自己防衛と責任転嫁ばかりのモウリーニョ ダービーマッチでプライドを見せられるか

田嶋コウスケ

繰り返す選手批判。責任転嫁の目立つマン・マネジメント

チームのトップスターであるはずのポグバ(右)とモウリーニョの間には不仲説が 【Getty Images】

 記者会見という公の場で、モウリーニョが選手批判を行うことも珍しくない。

 特に、将来有望と期待され、14年にサウサンプトンからマンチェスター・Uに籍を移したルーク・ショーには、舌鋒鋭く批判を浴びせ続けている。ユナイテッドにいる複数の選手が、こうした執拗(しつよう)な批判を「行き過ぎ」と感じているとの報道もある。たしかに、プレーや態度に満足できないのなら、公の場ではなく本人に直接伝えればいい。

 また、出場機会が減っているポグバとの確執も伝えられる。英紙『サンデー・タイムズ』で健筆を振るうジョナサン・ノースクロフト記者によると、「緊迫とまでは言わないが、親密にはほど遠い」関係だという。モウリーニョにベンチ行きを命じられているそのポグバは、フランス代表の一員として、ロシア代表との強化試合で躍動する姿を披露した。

 さらには、モウリーニョ自らの手で獲得したムヒタリアンは、才能を引き出される前に、サンチェスとの交換トレード要員としてわずか1年半でアーセナルに譲渡。そうかと思えば、負傷を抱えたアンデル・エレーラの復帰時期をめぐっては、ユナイテッドのメディカルチームを公然と批判したのも記憶に新しい。選手やスタッフと親密なコミュニケーションが取れているとは言い難い。

 これだけではない。2度目にチェルシーを率いた時期を顧みても、エデン・アザールやセスク・ファブレガス、ジエゴ・コスタら主力選手との確執が伝えられ、実際にチームは音を立てるように崩れ去った。在任3シーズン目で成績不振を理由にチェルシーを解任された事実は、あらためて記すまでもないだろう。

 過去を振り返ると、チーム全体で一枚岩になって戦うのが、モウリーニョ体制のストロングポイントだった。ジョン・テリー、フランク・ランパード、ディディエ・ドログバらを擁したチェルシー1次政権では、強固な団結力を武器に連勝街道を突っ走り、チェルシーを50年ぶりとなるリーグ優勝に導いた。45年ぶりとなる欧州制覇に輝いたインテルでも、退任発表後にマルコ・マテラッツィと涙を流しながら熱く抱擁を交わしたシーンは印象的であった。選手との絆の深さは、間違いなくモウリーニョの財産だった。

 ところが近年のモウリーニョ政権では、不必要な選手批判と冷遇が目立ち、チームとして一体感を感じることができない。それは今シーズンのマンチェスター・Uも同じだ。

意地とプライドを懸けたマンチェスター・ダービー

04年、モウリーニョはポルトを率い、CLでマン・Uを撃破して大きく名を上げた 【Getty Images】

 今からさかのぼること、14年前──。03−04シーズンのCLベスト16で、当時ポルトの指揮官だったモウリーニョは、ファーガソン監督率いるマンチェスター・Uを撃破した。その名を世界中に轟かせたこの試合後、まだ41歳で白髪も少なかったモウリーニョは、胸を張って言い放った。

「敗れたファーガソン監督が感情的になっていた理由が、わたしにはよく分かる。世界のトッププレーヤーが在籍しているのだから、もっと良い結果をつかむべきだった、とね。マンチェスター・Uの補強予算の10%しかない相手、つまり、われわれポルトに試合を支配されたら悲しむのは当然さ」

 ポルト時代、チャレンジャー精神に満ちていたモウリーニョは、その勢いのままCLの頂点まで上り詰めた。しかし、挑戦者として歩み続けた彼も、いつしか「追われる立場」として身を置くようになった。言うなれば、ポルトガル人指揮官は今、14年前のファーガソンと同じ境遇にある。

 レアル・マドリー在任時代から感じることだが、「常勝」が義務付けられるマンチェスター・Uで、モウリーニョは目に見えない重圧やプレッシャーに苛まれているように映る。常勝軍団の指揮官として「守るべきもの」ができたことで、モウリーニョはかつてのギラギラした姿を失ってしまったように思えてならないのだ。その結果が、「自己防衛」や「責任転嫁」であり、「選手批判」ではないだろうか。

 その傍らには、タイトルを獲得し続けるジョゼップ・グアルディオラ監督の姿もある。抱えている重圧は相当に大きいのだろう。気がつけば、55歳になったモウリーニョの頭部は白髪の方が多くなっている。

 マンチェスター・Cのリーグ優勝がかかった第33節のローカルダービー。2位のユナイテッドに勝利すれば、首位シティの優勝が決まる。その3日後に控えるリバプールとのCL準々決勝・第2戦に備え、シティ陣営は控えメンバーで臨むとの報道もなされている。

 果たして、モウリーニョはこの大一番で、意地とプライドを見せられるのか。注目のマンチェスター・ダービーは、英国時間7日の午後5時30分(日本時間25時30分)キックオフである。

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著者プロフィール

1976年生まれ。埼玉県さいたま市出身。2001年より英国ロンドン在住。サッカー誌を中心に執筆と翻訳に精を出す。遅ればせながら、インスタグラムを開始

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