新時代到来を予感させるマンCの躍進 グアルディオラ体制で生じた3つの進化

田嶋コウスケ

14勝1分け無敗と圧倒的な強さを見せる

シティはリーグ戦15節を終え、14勝1分け無敗と圧倒的な強さを見せている 【Getty Images】

「ジョゼップ・グアルディオラ監督が来るまで、イングランドにおけるパスサッカーの王様はアーセナルだった。その証拠に、ボールポゼッション率でアーセナルが過去12シーズンで7度もリーグトップの数値をたたき出している。しかしペップがやって来た今、攻撃サッカーの称号はマンチェスター・シティへ継承されることになった」

 こう指摘するのは、11月5日(以下、現地時間)に行われたマンチェスター・Cvs.アーセナル戦を放送した、英国営放送BBCのサッカー人気番組『マッチ・オブ・ザ・デイ』である。称賛の言葉どおり、グアルディオラ率いるシティはアーセナルをまったく寄せ付けず、ビッグクラブ同士の直接対決を3−1で制した。

 その後もシティの快進撃は止まらず、プレミアリーグ15節までの成績は「14勝1分け無敗」。リーグ戦では連勝記録を13試合まで伸ばしている。しかも、15節までの得点数は「46」とリーグトップ。2位マンチェスター・ユナイテッドの「35点」に11点もの大差をつけ、「1試合平均3ゴール」という量産体制を築いている。加えて、1試合平均のボールポゼッション率でも、リーグトップの70.5%をマーク。2位トッテナムの60.5%、3位アーセナルの59.9%を大きく引き離しているのだ。

 そんな圧倒的な強さを見せている今、早くも英メディアでは「2003−04年シーズンのアーセナルのように、シティがプレミアで無敗優勝を成し遂げるのでは?」と、“偉業達成”に期待する声も聞こえ始めた。昨シーズンを3位で終えた彼らだが、急速に進化を遂げている強さの秘密はいったいどこにあるのか──。

戦術が浸透、攻守の切り替えも大きな武器に

グアルディオラの標榜するスタイルがチーム全体に浸透、一体感を持ってプレーしている 【Getty Images】

 1つ目の理由は、在任2季目のグアルディオラの標ぼうするサッカースタイルがチーム全体に浸透してきたことである。選手1人1人が何をすべきかを完全に理解し、一体感を持ってプレーしている。

 攻撃では「ポゼッション」と「ショート&ロングカウンター」を巧みに使い分け、極めて幅の広いアタックを実践している。どこが勝負どころか、あるいはどのタイミングで遅攻・速攻に転じるべきか。そんな意思統一が明確になされている。

 また、攻守の切り替えの速さも大きな武器だ。ボールを失うと「攻→守」へ素早く切り替え、瞬時にして敵のボールホルダーを囲い込む。そして、ボールを奪うと、「守→攻」にスイッチしてカウンター──。第14節でシティと対戦したサウサンプトンの吉田麻也も、「プレスの巧さ、切り替えの速さ、選手の能力やチームとしての質の高さ」を彼らの強さの理由に挙げていた。

 こうした進化の一端が見えたのが、10月17日に行われたナポリとのチャンピオンズリーグ、グループリーグ第3節だ。正確なボールポゼッションでナポリが得意とするプレッシングをかわし、2−1の勝利につなげた。なかでも目を引いたのが、シティが前半9分に挙げた1点目のシーン。最終ライン→中盤とスピーディーにパスをつないで、ピッチ幅を存分に広く使いながら敵のプレス網をかいくぐり、最後はラヒーム・スターリングがネットを揺らした。

 4−3−3のウインガーとインサイドMFによる良質なコンビネーションも、ナポリにとって脅威だった。積極的にタテ突破を狙う両翼のスターリングとレロイ・サネ。その後方のインサイドMFとして、パスやドリブル、ミドルシュートでアクセントをつけるケビン・デ・ブライネとダビド・シルバ。彼らが中→外、外→中とテンポ良くパスを回し、交互にゴール前に顔を出すことで、攻撃に厚みと迫力を加えていた。

 またディフェンスでも、攻→守への素早い切り替えでナポリをブロック。試合後のグアルディオラ監督も「ナポリという欧州最高クラスの相手に、われわれは完璧なパフォーマンスを示した。極めて高レベルのパフォーマンスができなければ、今日の試合に勝利できなかった」と自画自賛する試合内容だった。

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著者プロフィール

1976年生まれ。埼玉県さいたま市出身。2001年より英国ロンドン在住。サッカー誌を中心に執筆と翻訳に精を出す。遅ればせながら、インスタグラムを開始

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