浦和に必要なのは意識改革と人材刷新 堀体制の失敗を教訓にできるか
志半ばでチームを去ることになった堀監督
浦和は昨季途中からチームを指揮していた堀孝史監督(写真)と天野賢一ヘッドコーチとの契約解除を発表した 【(C)J.LEAGUE】
堀監督は昨季途中の就任からチーム改革をスタートさせ、クラブ史上10年ぶりにAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を制覇し、アジアサッカー連盟が選出するAFC年間最優秀監督賞を獲得する栄誉も得た。一方、国内タイトルはルヴァンカップでセレッソ大阪に敗れて準々決勝敗退、天皇杯は鹿島アントラーズに敗れてラウンド16敗退、そしてJリーグは7位にとどまり、必ずしも芳しい成績を挙げられたわけではなかった。
堀体制で感じたいくつかの疑問
ペトロヴィッチ前監督体制の浦和は3−4−2−1から攻守で可変するシステムを用いて、選手たちにポジショニングの徹底を課していた。そして、究極の「パターン」の修練を基盤に破壊的な攻撃を繰り出すアグレッシブなチームだった。ただ、その好戦的な姿勢はいつしか守備の弱体化につながり、失点に歯止めが効かない状態に陥って前監督は契約解除の憂き目に遭った。そんなチームを引き継いだのだから、堀監督が守備の修正を図るのは容易に理解できる。
ただ、昨今の浦和に在籍する選手の大半はペトロヴィッチ監督が掲げるサッカースタイルにマッチした能力を備える者たちだ。広島時代の教え子である柏木陽介は指揮官より以前の10シーズンに浦和へ加入。他に槙野智章、森脇良太、西川周作、李忠成などはペトロヴィッチ監督のスタイルを熟知した選手たちで、それに1トップの特性がある興梠慎三、サイドアタッカーの能力に特化した関根貴大(現インゴルシュタット/ドイツ)、駒井善成(コンサドーレ札幌へ期限付き移籍)、高木俊幸(現セレッソ大阪)、梅崎司(現湘南ベルマーレ)、シャドーポジションに適した武藤雄樹、柏木、ビルドアップ起点の阿部勇樹らがチームの骨格を成していた。
そんな中、堀監督は自らが浦和ユース監督を率いた時代に用いた4−1−2−3システムを持ち込み、そのポジションに現有戦力を当てはめる作業を施した。その結果、左ウイングのラファエル・シルバ(現武漢卓爾/中国)、アンカーの青木拓矢、インサイドハーフの長澤和輝、矢島慎也(現ガンバ大阪)など、ペトロヴィッチ監督体制時には重用されなかった選手たちが台頭して新たなチーム内競争が生まれるポジティブな現象が起こった。
ただ一方で、前述した関根、駒井、高木、梅崎、矢島らが他クラブへ移籍して再編を余儀なくされてもいる。また、新システムのポジションに当てはめられた3トップの頂点の興梠、ウイングの武藤、李、サイドバック(SB)の遠藤航、宇賀神友弥らがそれぞれの特長を発揮し切れずにプレーレベルが落ちる弊害も生まれた。現有戦力と指揮官の求めるスタイルがマッチしない中でチームコーディネートが進み、それが今季始動直後のキャンプや公式戦開幕時期まで懸案事項として持ち込まれたことでチーム全体のパフォーマンスが落ち込む要因を生んだのは確かだろう。
訪れた予想外のアクシデント
カウンターの担い手であるラファエル・シルバが急きょ移籍し、攻撃の軸を失った浦和は甚大なダメージを負うことになる 【(C)J.LEAGUE】
その後、クラブは約1か月半後の3月5日にオーストラリア代表FWのアンドリュー・ナバウトを獲得した。しかしナバウトはチーム合流直後に代表へ招集されてチームを離れ、貴重な国際Aマッチウイーク中のリーグ中断期間にチームとの連係を図れず、彼のデビューは堀監督が契約解除される端緒となった第5節ジュビロ磐田戦(1−2)まで待たねばならなかった。
そもそも指揮官は選手補強に関して、さほどクラブからサポートを得られていないように見えた。3月の欧州遠征でヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いる日本代表へはDFの槙野、遠藤、宇賀神と3人が選出されるも、代表でレギュラーポジションを確保できているのは槙野1人。西川、槙野、柏木、興梠のセンターラインがいずれも三十路を迎える中、中堅選手が存在意義を求めてチームを離れ、若手成長株だった関根は昨季途中に海外へ移籍してしまった。
ACLは対戦相手の浦和対策が緩い中でラファエル・シルバの個人技を頼りに守備的なアプローチで栄冠までたどり着いたが、前述したように国内タイトルはすべて頂点には及ばなかった。特にJリーグ7位という成績は客観的に評価すべきで、さらなる上積みを図るには前年以上の戦力、特にチームの中軸を担う日本代表クラス、もしくは実績を備えた外国籍選手の獲得が必須条件だった。