浦和レッズを支え続けたサポーターの存在 耐え難き年月を経て、奪還したアジア王座
平坦ではなかったアジア王者への道
浦和はアル・ヒラルとの決勝第2戦を1−0で勝利し、2007年シーズン以来、10年ぶりにアジア王座を奪還した 【赤坂直人/スポーツナビ】
浦和レッズは11月25日、アル・ヒラル(サウジアラビア)とのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝第2戦を1−0で制し、2試合合計2−1で優勝を果たした。
今季の浦和は昨年のJリーグ・チャンピオンシップ決勝で浦和を破った鹿島アントラーズが天皇杯も制したことで2月18日の「FUJI XEROX SUPER CUP 2017」への出場が決まり、そのゲームから中2日で敵地オーストラリア・シドニーでのACLグループステージ初戦を迎える強行日程を強いられた。
強化キャンプを張ってトレーニングを積んだといっても、チームの熟成は途上にある。それなのに、いきなりアジアの舞台で結果を残さねばならないジレンマ。しかも17年シーズンの浦和は昨季、屈辱にまみれたJリーグ制覇をももくろんでいたため、その負荷は甚大だった。
多大な責務を背負う中で、指揮官のミハイロ・ペトロヴィッチは気高い理想を掲げて一層の攻撃的思想を選手たちへ植え付けた。そのハレーションは徐々にチームをむしばみ、リーグ戦で失点を重ねて成績が低迷すると、約5年半チームを率いた指揮官はクラブから無念の契約解除を言い渡された。
一方で、リーグと並行して戦っていたACLは薄氷の上を渡り続けていた。グループステージこそウェスタン・シドニー・ワンダラーズ(オーストラリア)、FCソウル(韓国)、上海上港(中国)が同居する死のグループを抜け出したが、ノックアウトステージのラウンド16では敵地での第1戦で済州ユナイテッドFCに0−2で完敗を喫しながら、続くホームでの第2戦を3−0でものにし、逆転勝ちでベスト8進出を果たす。
続いて、ペトロヴィッチ監督から指揮権を受け継いだ堀孝史監督体制で臨んだ川崎フロンターレとの準々決勝は等々力陸上競技場での第1戦を1−3で落としてまたしても正念場に。しかし埼玉スタジアムでの第2戦では相手の退場もあって4−1の大逆転勝ち。そして準決勝の上海上港とのリマッチは、第1戦のアウェーでFWフッキに強烈なシュートを突き刺されたものの、柏木陽介のゴールで追いついて1−1のドロー。続くホームではラファエル・シルバが値千金の決勝ゴールを奪い、最小得点差で勝利を果たした。
迎えたアル・ヒラルとの決勝ホーム&アウェー。敵地・リヤドでの第1戦は浦和がラファエル・シルバ、アル・ヒラルがオマル・ハルビンがゴールを決めて1−1で終えた。そのとき、浦和はひとつの確信を得たに違いない。どれだけの苦境も、どれだけの死地も、あのピッチの上で、あの仲間たちに囲まれている限り、われわれは乗り越えられる――。
第1戦で宗教戒律、渡航条件の厳しいサウジアラビアへ乗り込んだ浦和サポーターは約240人。その中には普段サウジのスタジアムでは入場を規制される女性もおり、影で両国外務省、サッカー協会の多大な尽力があったことを物語る。
そして、“赤き者たち”の情熱的なサポートの数々。世間ではソールドアウトした前売りチケットをめぐる転売問題も起こる中、クラブ、チーム、サポーターが三位一体となって目標へ邁進したことが“あの”スタジアムの荘厳な雰囲気を作り出した。
選手とシンクロしていたサポーターの思い
浦和には常に傍らに寄り添い、支え続けたファン、サポーターの存在が 【Getty Images】
ハーフタイムには、スタンドが一丸となって飛び跳ねる『歌え浦和を愛するなら』をゴール裏だけでなくメーン、バックのサポーターたちまでもが紡いだ。印象的だったのは、選手たちがロッカールームから再びピッチへ戻るまで、サポーターたちが声を発さずに静かに待ち続けていたこと。サポートは自己満足にあらず。あくまでも選手の支えとして、その魂を鼓舞するために声を枯らす。お互いを仲間として尊重し合うからこそ、彼らの思いはいつでもシンクロしている。
そして、スタジアム全体に鳴り響く「WE ARE REDS!」の大コール。柏木は「僕らには世界一の応援団がついている」と言った。ウェスタン・シドニー、FCソウル、上海上港、済州ユナイテッド、川崎フロンターレ、そしてアル・ヒラルは、この埼玉スタジアムの空間で苛烈なプレッシャーに苛まれたはずだ。
かつて横浜マリノス(当時)でプレーした経験のある元アルゼンチン代表FW、ラモン・ディアス監督率いるアル・ヒラルは、多くのサウジアラビア代表選手とハイレベルな外国籍選手が融合した中東のスーパーチームだ。今季のACLで13戦無敗の猛者は第1戦、第2戦共にポゼッション率で浦和を上回り、選手個々のスキルでもホームチームを凌駕(りょうが)する力を見せつけた。それでも浦和が怯むことなく戦えたのは、常に傍らに寄り添い、支え続けたファン、サポーターの存在があったからだ。