"決勝の舞台で戦いたい"|藤井 雄一郎監督インタビュー
今季は5節を終えたところで1週のBYEを、10節を終えて2度目のBYEを迎えた。ここからは3月15日(土)の第11節から4月12日(土)の第15節までまた5連戦、そこで3度目のBYEを挟んでラスト3節、そして順調なら静岡ブルーレヴズにとって初めてのプレーオフへとシーズンは進んでいくはずだ。
ちょうどシーズンの折り返しとなる第10節を終えたところで、藤井 雄一郎監督にここまでの戦いを、ブルーレヴズオフィシャルライター大友 信彦とともに振り返っていただいた。
――最初の5節を4勝1敗の3位でスタートしたブルーレヴズでしたが、中盤の5連戦は3勝2敗、ここまで4位で来ています。中盤戦の5連戦について、どんな手応えをお持ちですか。
「まあ、スピアーズ戦は点差が開いてしまったけれど、ウチのチームとしてはどのくらいのベースで戦えるかという意味で、成長してきたと思うし、どういうときに負けるかということも分かった。それはこれから活きてくると思います」
――もう少し詳しく伺えますか。
「試合ごとに、我々としてフォーカスする部分がブレイクダウンだったりコンタクトだったりするんですが、それを試合で出せるか?という部分について、練習でぬるくなるとそれが試合で出てしまう。
しっかりやったときは、ブレイブルーパス戦、ヒート戦のようにキッチリ結果が出たなと感じています。スピアーズも強かったけど、どうにもならないという感じじゃなかった。プレーオフへ行けばもう1回やるでしょうし、そのときは違う戦いになるでしょう」
「イエローカードが3枚出ましたからね。トップチームとの戦いでイエローが3枚出たら勝つのは難しい。誰かにその負担が掛かっていきますし、自分たちの勝ちパターンが崩れてしまう。選手自身は、点数ほど歯が立たないとは思わなかったはずです。
その分、次のヒート戦は最初から決めに行きました。ホントはまだ使いたくなかったサインプレーも使ったし…まあ、ヒートとは今季はもう当たりませんし、手の内を隠すよりも自信を与えることも必要だし。それを選手たちは前半からキッチリ体現してくれました」
――この5連戦で成長した選手、チームの成長した部分を聞かせていただけますか。
「成長した選手と言えば、HO作田(駿介)とWTB矢富(洋則)ですね。
矢富はヒート戦で先発に入りましたが、彼が入ることでトライ王を争っているマロ(ツイタマ)を後半のインパクト要員として、フレッシュレッグスとして使うことができた。矢富自身もトライをあげるなど、前半ジャブをしっかり打ち込んでくれたし、その分後半はマロが走り回ってくれた。
「クワッガが秋のテストマッチからずっと出ずっぱりで少し疲れ気味で、パフォーマンスもイマイチだったので、一度休ませたかったんです。そこで庄司が遜色ないプレーでチームを勝たせてくれたし、一週休ませたことでクワッガの調子もガッと上がりました。
やっぱり選手もずーっと出ていたら疲れてくるし、客観的な目で見てあげて、試合を休ませたり、あるいは試合には出続けても練習を休ませたり、練習の内容、負荷を個別に変えたりしています。それもあってか、今はケガ人も少ない」
「何人かいますけれど、大きなケガはないです。FB山口 楓斗も走り始めていてもうすぐ帰ってくるし、PR伊藤 平一郎もそろそろ戻る。PR山下 憲太はもうちょっとかかるかな。でもディビジョン1では一番ケガ人が少ないんじゃないですかね。
ただ、戻ってきた選手がすんなり入れるポジションが空いているかどうかはまた別です。新しい選手も伸びている」
――新鋭という意味では、SH北村 瞬太郎は新人賞候補にも名前を上げられるほど活躍を続けています。本人は、レヴズに来て藤井さんにプレースタイルから人格から『全否定されて目が覚めた』と言っていました。
「ポテンシャルはもともとあったのでね。でもまだまだ。もっともっと良くなりますよ」
「ハーフに関しては、SOにある程度経験のある選手がいるし、早く捌くこと、精度を上げること、そこからスタートしていけば育つだろうと思っていました。SOもサム・グリーンと家村 健太で切磋琢磨して成長していけばいい。あとは、アーリーエントリーで天理大から来た筒口 允之もロングキックなどいいものを持っている。ディフェンスが良くなれば10番争いに絡んでくるかもしれないですね。南アフリカから来たSH/SOのサネレ・ノハンバは、どっちかというとSHかな、と考えています」
――アーリーエントリーの新人では誰が最も早く出てきそうでしょうか?
「一番早いのはPRの稲場 巧かもしれない。スクラムがめちゃくちゃ強い。楽しみです」
「休ませる選手は休ませて、ゲームタイムの少ない選手は花園ライナーズとのトレーニングマッチに出しました(3月8日(土)ヤマハ大久保グラウンド、60-31で勝利)。良かった選手も何人かいました。ここまで出ている選手のコンディションとの兼ね合い次第では何人か出てくると思う。まあ、ここからはポイント(勝点)も関係してくるんでね」
――プレーオフ争いのことですね。シーズン前は『(プレーオフに進める)6位以内はマスト』という言い方だったと思いますが、ここまで4位で来ていて、改めて、どの順位を狙うというのはありますか?
「やっぱり2位までに入らないと、決勝に行くのはキツいですよね。
(3-6位だと、第16節から)休みなしの5連戦で、一週休んだ相手と準決勝をやらなきゃいけない。決勝まで行けば6連戦になりますから。
もともと、開幕前からこの日程を知った時点で『2位に入らなかったらキツいな』とは思ってたんです。これは、どこのチームも思ったことだと思います。どこも優勝するつもりでやってるはずですからね。
――その状態でも、今季は一度も連敗ナシでここまで来ています。
「やっぱり連敗はね、チームのエネルギーがなくなっていくし、極力避けたいのが本音ですよね。だからヒート戦は『必勝』で臨みました」
――スピアーズ戦で大敗したときも藤井監督は悲観的になっていない様子でした。さすがサニックスで監督をしていただけあって、ちょっとやそっとじゃへこたれない。
「そんなん、屁でもないです。サンウルブズでは13連敗してますから(笑)。1回大負けしたくらいのことは何でもない。ただし連敗はしたくないですね」
――今季のリーグ全体を、そしてレヴズの立ち位置をどう見ていますか。
「やっぱりレベルが上がってますし、やり方を少しでも間違えると食われてしまう。その可能性がある中でも(勝つだけでなく)どう成長していくか、マインドを考えて戦わなきゃいけない。
まあ、去年は簡単なゴールキックを外して負けたり、引き分けたりがありましたから、それが今年の肥やしになってるのかな。
結果は8位だったけど、やってる本人たちは『もっとやれた』と思ってたはず。そこはみんな、見てる方向がバラバラじゃなかったのが良かった。いろいろなことが見えてきて、今季は春からみんな頑張ってレベルアップしてきましたね。
――さて、今週末から始まる後半戦に向けての抱負を聞かせてください。
「点を取りたいですね。ここまで、チャンスを作ってもスコアまで行けてない場面があったので、そのチャンスをしっかりモノにしたい。
そのためにはブレイクダウンのテクニックとか、反則しないことも含めて細かいアライメント(並び方)を整えていけば、もう少しキッチリと点が入っていくと思う。ここまでは少し雑なところがあったけど、これからはその部分の精度を上げていかないといけない。
特に次の試合で戦うワイルドナイツはそんなにたくさんチャンスをくれるわけじゃない。開いたように見えた扉もすぐ閉まる。本当のトップチームですからね」
「大事なのは自分たちのペースで戦うこと。あとは、相手はコネクト力が強いチームなので、こちらの強い部分を使ってそのコネクトを外していくことです」
――で、外したときは速やかにスコアすると。
「そういうことです」
――最後に、今季の目標を改めて聞かせてください。
「決勝の舞台で戦いたいと思っています。そのためには2位以内に入りたいし、まず今週のワイルドナイツに勝ちたい。ホームの試合だし、勝利という結果を求めていかないと成長できませんからね」
――ありがとうございました。まずは今週のワイルドナイツ戦、そして後半戦のレヴズの戦いを楽しみにしています!
大友 信彦(おおとも のぶひこ)
1962年宮城県気仙沼市生まれ。早大第二文学部卒。1985年からフリーランスのスポーツライターとして活動。『東京中日スポーツ』『Number』『ラグビーマガジン』などで取材・執筆。WEBマガジン『RUGBYJapan365』スーパーバイザー。ラグビーは1985年から、ワールドカップは1991年大会から2019年大会まで8大会連続全期間を取材。ヤマハ発動機については創部間もない1990年から全国社会人大会、トップリーグ、リーグワンの静岡ブルーレヴズを通じて取材。ヤマハ発動機ジュビロのレジェンドを紹介した『奇跡のラグビーマン村田亙』『五郎丸歩・不動の魂』の著作がある。主な著書は他に『釜石の夢~被災地でワールドカップを~』『オールブラックスが強い理由』(講談社文庫)、『読むラグビー』(実業之日本社)、『エディー・ジョーンズの日本ラグビー改造戦記』(東邦出版)など。
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