クラブW杯5位が示す浦和の方向性 最終戦で生まれた来季を照らすゴール
リーグ最終盤で見えていた攻撃面の減退
CWCに出場した浦和は、5位決定戦でウィダード・カサブランカに勝利してシーズンを終えた 【写真:ロイター/アフロ】
浦和レッズはJリーグ勢として初となる海外でのFIFAクラブワールドカップ(以下CWC)に参加するも、自身の初戦となった準々決勝で開催国枠での出場を果たしたアル・ジャジーラ(アラブ首長国連邦=UAE)に0−1で敗戦して5位決定戦に回った。
浦和のチーム状態は下降していた。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝でアル・ヒラル(サウジアラビア)に2戦合計2−1で勝利してクラブ史上2度目のアジア制覇を果たした後、チームはJリーグ第33節・川崎フロンターレ戦、第34節・横浜F・マリノス戦をいずれも0−1で落として国内での活動を終えていた。リーグ戦に限れば第32節の鹿島アントラーズ戦も0−1で落として3連敗を喫しており、堀孝史監督率いるチームは深刻なゴール欠乏症に陥っていたのだ。
そんな中、チームは横浜FM戦の2日後に開催地であるUAEへ渡航し、CWCに向けて当地で調整を重ねてきた。
実は、チームは川崎戦から攻撃時の戦い方に変化を加え、自らがボール保持してゴールを奪う形を模索し始めていた。それは4−1−4−1のシステムをビルドアップ時に3−4−3へ変化させるもので、その可変型アタックは今季途中で契約解除となってチームを去ったミハイロ・ペトロヴィッチ前監督が用いた戦略と相似性があった。
堀監督は指揮官就任以来、壊滅的だった守備組織の整備を進めることにまい進してきた。その尽力はACL制覇によって結実したが、一方でリスクを回避した攻撃面の減退をも導き、攻守のバランス取りに苦慮することとなる。ACLでは準決勝で対戦した上海上港(中国)、そして決勝のアル・ヒラルのように血気盛んに攻め込む相手に対して自陣で構え、千載一遇の好機をモノにする戦いで結果を得てきた。しかし実力がきっ抗するJリーグの舞台では専守防衛に努め続けるわけにもいかず、自らがボール保持した際に手詰まりになってスコアレスで敗戦するケースが続いた。
公式戦3戦連続のスコアレス敗戦
CWC初戦でアル・ジャジーラ(白)に破れ、公式戦3戦連続のスコアレス敗戦を喫した 【写真:ロイター/アフロ】
そして浦和は、前半に武藤雄樹の右クロスから1トップの興梠慎三が右足ボレーでボールをたたく、最大のビッグチャンスを迎える。この好機に至る流れは右SBの遠藤航のオーバーラップから前方に流れた武藤の抜け出し、そしてファーサイドに飛び込んでクロスにコンタクトした興梠の挙動と、チームが狙いとした絶好の形でもあった。しかし興梠のシュートがバーの上を越えて好機を逸したことで、浦和は勝機すらも逃してしまう。
個人的には、このチャンスで決めてさえいれば、堀監督の采配は的中し、称賛に値する評価をも得られただろう。しかし現実は厳しく、相手エースFWアリ・マブフートにカウンターからゴールを奪われた浦和はアル・ジャジーラの軍門に下り、公式戦3戦連続のスコアレス敗戦を喫してしまう。
試合後の選手たちは一様にショックを隠せず、準決勝の相手に決まっていたレアル・マドリーとの一戦に挑めない悔しさをあらわにした。ただ物事を客観的に捉えれば、現状の浦和はすでに今シーズンのピークを越え、激しい心身の疲労を抱えながら中東でのゲームに臨んでいた。他の大陸代表がシーズン半ばでCWCへ参戦したのに対し、今シーズンの終盤を迎えていたJリーグ所属の浦和は満身創痍(そうい)だった。すなわちアブダビでの浦和は、FIFA(国際サッカー連盟)主催の国際大会で精魂を込めて戦えない状態だったとも言える。