東京V監督が重要視する判断基準と哲学 ロティーナ「成長プロセスを見てほしい」

小澤一郎

東京Vを率いて2シーズン目となるロティーナ監督。日本での手応えと、今季の展望を聞いた 【スポーツナビ】

 クラブ初となるスペイン人監督として昨季からJ2の東京ヴェルディを指揮するミゲル・アンヘル・ロティーナは就任1年目にして年間5位、これまたチーム初となるJ1プレーオフ進出という結果を出した。

 そのJ1プレーオフではアビスパ福岡に敗れJ1昇格は達成できなかったものの、2シーズン前の18位という順位から大きく飛躍。プレー内容でもソリッドな守備をベースにボール保持局面では相手のシステムや配置に応じて柔軟に攻め方を変える戦術の多彩さを見せ、ラ・リーガで長年培った確かな手腕を見せつけた。

 昨年5月の取材時点で「日本に来て大正解だった」と言い切っていた指揮官は日本での2年目を迎えた今、どのようなチーム作りに挑み、何を考えるのか。来年クラブ創設50周年を迎える東京Vのキーマンの一人、ロティーナ監督に話を聞いた。(取材日:2018年3月9日)

私が持ってきたのは明確なフィロソフィー

昨季は5位で初のプレーオフ進出を果たしたが、福岡に敗れJ1昇格とはならなかった 【(C)J.LEAGUE】

――昨季は5位、J1昇格を逃したとはいえクラブ史上初のJ1昇格プレーオフ進出を果たしました。どう総括していますか?

 全体としては満足している。私が来る前のチームはどういう状況だったのかを考えると、2年前の18位という順位以上にチームの状態が良くなかった。毎試合の先発が大きく替わり、主力にけが人も多く、継続性という点では課題を抱えたチーム状態だった。私がまず着手したのは、できる限りスタメンやチーム作りに継続性を持たせることだった。

――昨季は前年比で失点数を12減らしました。守備については具体的にどのような点を改善したのでしょうか?

 まずはオーガナイズ。サッカーにおいては原理原則があるので、まず守備のオーガナイズを設定するのがファーストアプローチになる。続いて個人のミスの改善に着手した。ただし、意外に聞こえるかもしれないがそうした守備の指導、練習は全体の2割にすぎない。

 私は全体の8割を攻撃の練習に費やしている。攻撃の改善というのはなかなか目に見える現象として出にくく、守備の方が出やすいため注目される。攻撃を改善するためにはフィロソフィーと同時に、タレント性が必要だ。守備においては、確固たるオーガナイズがあればどのチームもある程度のレベルまでは到達できるものだ。

――監督が海外で指揮を執る時には監督側がその国に合わせる必要があると思いますが、具体的に何をスペインから導入して、逆に日本から何を学びましたか?

 私や私のコーチングスタッフが持ってきたものは、サッカーの明確なフィロソフィーだ。練習のための練習ではなく、フィロソフィーに基づいた練習を構築すること。少なくない国やチームで、練習していることと実際に試合でプレーすることにギャップがあるが、われわれは練習したプレーを試合で実践できるような指導をしている。

 日本で学んだことは選手の成長する能力だ。日本人選手の成長に対する意欲と適性の高さには正直驚かされたし、選手というのは成長を望むことでレベルアップすることをあらためて教えてくれた。そこは日本の大きな利点だと思う。

――これだけ意欲的な選手ぞろいの国、チームでの指揮は初めてですか?

 初めてだ。時として、選手が居残り練習に励むことを止める必要があるほどだ。それに関連して、選手にとって休養はとても重要なものだ。週末の試合で最大限のパフォーマンスを発揮できるよう日々の練習で負荷を調整し、しっかりと休む必要がある。休養は練習と同じくらいに重要なことだが、日本ではまだその理解が不足しているように思う。練習不足と練習超過は同じレベルでダメなのだ。

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著者プロフィール

1977年、京都府生まれ。サッカージャーナリスト。早稲田大学教育学部卒業後、社会人経験を経て渡西。2010年までバレンシアで5年間活動。2024年6月からは家族で再びスペインに移住。日本とスペインで育成年代の指導経験あり。現在は、U-NEXTの専属解説者としてLALIGAの解説や関連番組の出演などもこなす。著書19冊(訳構成書含む)、新刊に「スペインで『上手い選手』が育つワケ」(ぱる出版)、「サッカー戦術の教科書」(マイナビ出版)。二児の父・パパコーチ。YouTube「Periodista」チャンネル。(株)アレナトーレ所属。

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