大一番を前に復活したレアル・マドリー 唯一の目標、CL3連覇に向け一歩近づく
試合前はPSGの勝ち上がりが予想されていたが……
大方の予想を覆し、レアル・マドリーはPSGに3−1の逆転勝利を収めた 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】
昨夏に巨額の投資を行いネイマールクラスの戦力を補強したPSGは、失態を繰り返すレアル・マドリーとは裏腹に国内リーグ、CL共に素晴らしいパフォーマンスを見せ、圧倒的な結果を残してきた。しかもセカンドレグがパリで行われる利点もあり、戦前はPSGの勝ち上がりを予想する声が大半を占めていた。
しかし、レアル・マドリーはお気に入りのコンペティションであるCLにて、またしても追い詰められた状況でこそ、底力を発揮するチームであることを証明した。先制点を奪われる苦しい展開から同点に追いついただけでなく、引き分けが濃厚と思われたゲーム終盤で示した不屈の精神力は、実際には数日前の試合から見て取ることができた。
後半戦を丸々残した段階から優勝の望みを失い、CL出場権を確保する以外に目的がなくなったレアル・マドリーにとって、もはや今季のラ・リーガは大きな意味を持たなくなっていた。それでもPSGとの決戦が迫るにつれ、彼らはチームとしての機能性を回復し、ユベントスを撃破した昨季のCL決勝で見せた強さを取り戻しはじめるのだから不思議なものだ。
両監督が見せた対照的なベンチワーク
勝負どころでジダンが見せたベンチワークはエメリとは対照的なものだった 【写真:ロイター/アフロ】
レアル・マドリーの復調の要因は何か。それはもちろん、唯一にして最大の目標に近づくための決戦が間近に迫っていたからだろう。かくしてPSG戦のレアル・マドリーは、パーフェクトな試合とまではいかなかったものの、CLを連覇した過去2シーズンに見られた高い集中力と中盤の攻守バランス、そして前線の決定力を駆使して3−1の逆転勝利を手にすることになった。
とはいえ、昨季バルセロナが6−1の歴史的大勝を実現した時と同じく、PSGの覇気に欠ける不正確なプレー、そしてウナイ・エメリ監督の理解しがたいベンチワークが後押しとなったことにも触れておくべきだろう。
エメリは最近好調だっただけでなく、古巣との対戦に際して特別なモチベーションを燃やしていたはずのアンヘル・ディ・マリアを最後まで起用しなかった。しかも後半半ばには、得点源のエディンソン・カバーニを下げ、トーマス・ムニエを投入している。その後2点を追う立場に追い込まれた際、右サイドバックのムニエが決定的な役割を果たせなかったことは言うまでもない。
たとえ3ゴールを奪われても、あと1ゴール決めていればホームでの逆転は十分に可能だと考えることができた。しかしレアル・マドリー相手に2点差をつけられては、置かれた状況は相当に厳しいと言わざるを得ない。
一方、レアル・マドリーのジネディーヌ・ジダン監督は少なくともベンチワークにおいてエメリとは対照的な印象を残した。ベニート・ビジャマリン(ベティスのホームスタジアム)でベティスに5−3で打ち勝った試合もそうだ。勝ちにいくべき勝負どころに差し掛かると、彼はそれが正解であれ間違いであれ、攻撃的な交代に賭けることで、重要なメッセージ――選手たちに絶対の信頼を置いていること――を発信してきた。それは1月の移籍市場で一切の補強を行わないと決断し、クラブには現有戦力の誰1人として放出せぬよう要請したことにも表れている。