覚醒した栃ノ心に自信あり! 大関昇進「ラストチャンス」と覚悟十分
2013年に右膝前十字靭帯断裂と右膝内側側副靭帯断裂の大ケガを負い、14年の一月場所まで3場所連続の休場を余儀なくされた。番付は幕下まで下がり、関取の座から陥落するが、栃ノ心はどん底から這い上がっていく。復帰後は取り口を変えて成績が安定し、西前頭三枚目で臨んだ18年の一月場所で賜杯を手にする。
平幕力士では6年ぶり、ジョージア出身力士では初めての優勝である。大関昇進の期待も高まるなかで、三月場所を控えた栃ノ心が胸中を明かした。(取材日:2018年2月22日)
初優勝後の慌しい日々
大ケガを乗り越え賜杯を手にした栃ノ心には大関昇進の期待も高まる 【撮影:大崎聡】
初めて経験することばかりで、稽古以外にもやることが増えました。いまはちょっと、疲れていますけどね。自分の時間が取れなくて、なかなか休めないので。僕は昼寝が大好きで、稽古が終わったあとに(いつもは)3、4時間ぐらいは横になっていたんだけど、その時間が取れないのはキツいかなあ。体重もちょっと落ちているんです。三月場所前に大阪へ行ったら、お肉をたくさん食べます。そうすればまた、体重も戻っていくでしょう(笑)。
──周囲の期待も増すばかりです。
期待されているというのはすごく感じます。素直にうれしいですね。でも、そんなに期待されると、ドキドキしちゃいますよ(笑)。相撲は変わらないけどね。自分の相撲をしっかり取れば、大丈夫だと思います。
──自分の気持ちは変わっていない?
変わっていないというか、あまり深く考えないようにしているのかな。周りの人たちが自分に期待してくれているとか、応援してくれる人が増えたとか、そういうことを考えるよりもまず、自分の相撲を取ろうと。
声援が聞こえないほどの集中力
取組の前には、「負けたらどうしよう」と考えることもあります。でも、そういうことを考えると、気持ちも身体も固くなってしまうもの。相撲に集中して、集中して、一番ずつ取りたいですね。
──土俵に上がればもう、取り組みに集中できていますか? 周りの声も気にならないぐらいに?
応援してくれる声は聞こえるけど、気になりません。聞こえないぐらい集中している、という感じですかね。
──初優勝した一月場所は、まさにそんな心境で相撲を取り続けた?
中日から声援がすごくなりましたね。でも、ホントに気にならなかった。自信はあったんです。去年の十一月場所の前も、本場所中も、しっかり稽古をやって、そのあとの巡業でも稽古を重ねていって、ホントに調子が良かったので。
初優勝の要因は無心と稽古
稽古で作り上げた身体と自信が栃ノ心を支えている 【撮影:大崎聡】
「一月場所も10番ぐらい勝てるかな」とは思っていたんです。ただ、優勝できるとまでは考えていなかったです。
──それまでは12番が最多でした。初場所では14番勝ちました。勝星としては2勝の違いですが、そこに大きな意味があるのでは?
そう、それが大きいんですよ。ひとつ、ふたつの違いが、15番取り終わったときの成績になるわけですから。ひとつでも多く勝つために、毎日土俵に上がっているわけですしね。
──そのひとつ、ふたつを上積みできた要因は?
まずは、考えないことですね。白星が先行して終盤になっても、「優勝するためには今日は勝たないといけない」とか「明日の相手はどうだろう、やりにくいかな」とかいうことは考えなかった。今日は今日、明日は明日と、いい意味で気持ちを切り替えていった。あとはやっぱり、稽古が大事なんですよね。稽古をしないと身体を作れない。身体が作れないと、自信を持って土俵に上がれないですから。
──初優勝であらためて見えた課題はありますか?
もうひとつ上に上がりたい。その気持ちが強くなりました。
──大関昇進を狙う?
今年で31歳になりますからね。最後のチャンスかもしれないから、三月場所はこれまでよりもっと頑張りたい。ここで頑張らないと、そういう話にもならないですからね。