覚醒した栃ノ心に自信あり! 大関昇進「ラストチャンス」と覚悟十分

戸塚啓

引退を思い止まらせた親方の言葉

若い衆に胸を貸す栃ノ心。右膝に巻かれた厚いテーピングが古傷の大きさを物語る 【撮影:大崎聡】

──大変なケガを克服してここまでたどり着いたのですから、頑張るという気持ちがブレることはないでしょう。

 それはありますね。幕下まで落ちて、そこからまた番付を戻してきたんですから、気持ちは強くなったでしょうね。「相撲をやめるしかないのか」と思ったことは何度もありましたけど……。

──気持ちは切れなかった?

 いや、病院に2カ月もいたら、気持ちも切れますよ(苦笑)。あれは13年の九月場所だったなあ。病室のテレビで相撲中継を見ていて、「もうあそこには戻れないのかなあ」と思ったし。

──そのときの支えになったのは?

 家族、親方、女将さん、応援してくれる人たち……周りにいる人たちみんなですね。やめたいとは口に出さなかったけど、僕の顔にそういう気持ちが出ていたのか、親方に「やめたいのか」と聞かれたことがあります。何も答えられずにいたら、「これからまだ10年ぐらいは相撲を取らないとダメだぞ」と言われて。その言葉は力になりました。うれしかった。「自分はまだできるんじゃないか」と思ったね。

 それからは、復帰することだけを考えて、気持ちを入れて稽古をしていきました。中途半端な気持ちでは戻ってこられなかっただろうし、やっぱり気持ちですね。

──稽古は嘘をつかない。やったぶんだけ自分の力になるのでしょうね。

 お相撲さんが稽古をできない、相撲が取れない、というのは苦しいですよ。四股を踏めない、鉄砲ができない、というのはね。僕の場合は、稽古をやると気持ちが変わってくるんです。リハビリもそうだったけど、汗をかくと身体が内側から燃えてきて、「よしまた頑張ろう」と思える。もちろん、応援してくれている人たちのためにも頑張らないといけない、と思っていたし。ホントにやめなくてよかったですよ。

前十字靭帯も内側靭帯もない右膝

──復帰後は右膝とうまく付き合えていますか?

 うまく付き合わないとね。ちょっと相撲も変えました。雑な相撲にならないようにしていますし、前へ、前へ出ていく気持ちで取っている。正直ね、いまも怖いときはあります。

 水がたまることがあって、たまった水を抜くと膝の周りの筋肉がなくなる。右膝に力が入らなくなるんですよ。去年の一月場所の5日目に、手術した前十字靭帯が切れてしまっていまはない。内側靭帯もない。四股とトレーニングで鍛えるしかないんです。

──筋肉で膝を守るしかない?

 そうなんです。「今日はこれぐらいにしたほうがいいな」というところでやめないといけないんだけど、気持ちが入ってくると痛みを忘れてしまう。親方からも「痛いときは無理をしなくていい」と言われているんですけど、「やり過ぎたなあ」ということがあります。

──そこは難しいですね。

 バランスよくやらないといけないんですが、やりたい気持ちを抑えるのは難しいですね。稽古だけだと筋肉は落ちるので、本場所での真剣勝負もやはり大切なんです。

──稽古をして、リハビリをして、それ以外にもトレーニングをして、本場所に全力で挑み、初めて結果が出る。

 まだまだ頑張りますよ。膝を大事にして、ケガをしないように。まだまだ相撲を続けたいですから。

勝負の三月場所に自信あり

31歳、目標の大関昇進へ「最後のチャンスかもしれない」と場所に懸ける意気込みは強い 【撮影:大崎聡】

──理想の力士像はありますか?

 いやあ、そういうのはもうないですよ。10代の若手ならそういうことも考えますけど、もう30歳を超えていますから。これからこうなりたいと思ってもなれないでしょう。自分が力をつけて、自分の相撲を取るだけでしょうね。

──年齢について言えば、30歳を過ぎても元気な姿を見せている関取はいます。

 安美錦関、豪風関、嘉風関、みんなすごいですよね。見ているだけで僕も力が入ります。

──昨年11月にお子さんが生まれました。気持ちが奮い立ちますね。

 家族のために頑張らなければ、という気持ちはもちろんあります。まだ娘には会っていないからね。僕は東京にいないことが多いので、妻と娘だけになるのは心配なんですよ。こっちから会いに行くしかない。行けるとしたら、五月場所のあとぐらいですかね。早く会って、娘を抱っこしたいね。

──来る三月場所も、満員のお客さんから声援を受けるでしょう。それもまた、栃ノ心関のモチベーションになっているのでは?

 気持ちも身体も戦わないと。前へ出ていく自分の相撲で、負けないように頑張りたいですね。

──ズバリ、自信は?

 ありますよ。大事な場所ですしね。

──3月11日(日)は三月場所が初日を迎え、五月場所のチケットの先行受付初日でもあります。三月場所、五月場所で好成績を残し、大関昇進を決めて娘さんに会いに行く、となったら最高ですね。

 頑張ります(笑)。これまで支えてくれた皆さんのために、しっかり稽古をして自分の相撲を取れるようにします。
 
◆◆◆大相撲五月場所(5月13日(日)〜27日(日)東京・両国国技館)チケット情報(PR)◆◆◆
チケット大相撲催促先行受付(抽選)
申込期間:2018/3/11(日)11:00〜2018/3/29(木)11:00

【4人マスA〜C席】
http://w.pia.jp/a/sumo05-01/
【特別2人マスC席】
http://w.pia.jp/a/sumo05-02/
【ファミリー/シニア桝】
http://w.pia.jp/a/sumo05-03/
【6人マスB〜C席】
http://w.pia.jp/a/sumo05-04/
【4人マスB〜C席 15日間通し券】
http://w.pia.jp/a/sumo05-05/
【イス席A〜C席】
http://w.pia.jp/a/sumo05-06/
【イスB席 15日間通し券】
http://w.pia.jp/a/sumo05-07/

※大相撲三月場所(大阪・エディオンアリーナ大阪)の前売チケットは完売いたしました。当日販売の自由席はチケット大相撲三月場所ページ(http://sumo.pia.jp/sumo03.jsp)をご確認ください。

2/2ページ

著者プロフィール

1968年、神奈川県出身。法政大学第二高等学校、法政大学を経て、1991年より『週刊サッカーダイジェスト』編集者に。98年にフリーランスとなる。ワールドカッ1998年より5大会連続で取材中。『Number』(文芸春秋)、『Jリーグサッカーキング』(フロムワン)などとともに、大宮アルディージャのオフィシャルライター、J SPORTS『ドイツブンデスリーガ』などの解説としても活躍。近著に『低予算でもなぜ強い〜湘南ベルマーレと日本サッカーの現在地』(光文社新書)や『金子達仁&戸塚啓 欧州サッカー解説書2015』(ぴあ)がある

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント