2018年の角界は“下克上”に期待 勤続疲労の3横綱へ挑む若手4力士
激動の2017年、横綱陣にほころび
11月場所千秋楽で騒動を謝罪する八角理事長(左)と白鵬 【写真は共同】
昨今はブームに沸いていた角界だったが、1年納めの場所で激震が走った。相撲人気に大きく水を差してしまったが、こと土俵だけに注目してみても、2017年は激動の1年であった。大関稀勢の里の悲願の初優勝で幕を開けると場所後、横綱に昇進。4横綱時代は華々しく幕を開けたが、日馬富士の電撃引退によってわずか5場所で終焉(しゅうえん)。4横綱による皆勤そろい踏みの場所はついに1度も実現することはなかった。
残された3横綱も安閑(あんかん)としていられない状況だ。新横綱優勝を果たした稀勢の里は翌場所から4場所連続休場。鶴竜も昨年は優勝がないばかりか、皆勤がわずか1場所。年間3度、賜盃を抱き、優勝回数を40回の大台に乗せた白鵬は通算勝ち星でも歴代1位となったが、休場も2場所ある。
横綱陣は皆、30代で土俵経験も長く、勤続疲労は否めない。先の9月場所は3横綱2大関が休場するという異常事態にも見舞われた。
17年後半から目立つ若手力士の台頭
17年は上位を維持しながら全6場所で勝ち越した御嶽海 【写真は共同】
年明け3日の出羽一門連合稽古では計21番、大関豪栄道とは13番を取って気を吐いた関脇御嶽海は「まずはこの地位を守ること。守りながら上を見据えてやっていく。今年は優勝争いができればいいと思います」とキッパリ言い切る。しっかり踏み込んで前傾姿勢が崩れない忠実な押し相撲は一段とパワーアップ。どちらかといえば、稽古場より本場所で力を発揮するタイプだが、豪栄道との充実した稽古内容からはコメントも決して大仰には聞こえない。
北勝富士(右)を突き出す阿武咲。スマホで対戦相手を研究する 【写真は共同】
研究熱心さでは北勝富士も引けを取らない。相手の左差しを右からのおっつけで徹底的に封じて勝利した先場所の稀勢の里戦が顕著な例だ。長身のわりには終始、低い体勢を保ち、額は相手の胸に密着させたまま、押しに徹する取り口はいかにも相手が嫌がる相撲だ。過去2戦2勝の白鵬がいずれもすかすような内容だったのが、それを物語っているのではないだろうか。
新三役に昇進した貴景勝は「勝ちたいではなく余計なことを考えず、いかに自分の力を出し切るか。精神の持っていき方が前よりもできるようになった」と自然体を強調する。
若手の相乗効果で新時代幕開けを
白鵬の張り差しが特に増えたのは、体力面で全盛期の力強さが見られなくなってからだ 【写真は共同】
「張り手、かち上げが15日間のうちの10日以上ある。こういう取り口は横綱相撲とは言えない。美しくないし、見たくない」と横綱審議委員会の北村正任委員長は白鵬の相撲ぶりを批判したが、彼らはこうした荒々しい攻めにも全く怯むことがないばかりか、すでに織り込み済みでもあるようだ。昨年7月場所、貴景勝は白鵬のかち上げに対し、もろ手突きで対抗するとその後は善戦に持ち込んだ。
そうは言っても、最強横綱の実力は他の力士より頭1つどころか、2つも3つも抜けているのも確かだ。先の稽古総見でも盤石ぶりは際立っていた。しかし、揺るぎがないと思える白鵬の牙城だが横審からは取り口を非難され、一連の問題では八角理事長から「大相撲の信用の失墜を招いた」と“断罪”された。ファンの相撲を見る目も今後は一層、厳しくなるだろう。
こうしたことは下された処分以上に後々、ボディーブローのように効いてくるのではないか。加えて生きのいい若手と連日、顔が合えば、さすがに角界第一人者と言えどもほころびが生じてくるに違いない。張り手やかち上げが最近、特に増えたのも全盛期に比べ、体力が衰えてきた裏返しでもあるのだ。
若手の中で誰かが抜きん出れば「俺だって」という相乗効果も期待できる。朝乃山や豊山、さらには貴源治といった未完の大器もこれに続くかもしれない。それが猛威となれば、18年の土俵上では“下剋上”が展開されることだろう。“若武者”がいったん勢いに乗れば、手がつけられなくなるものだ。時代が大きく変わろうとしている。
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