誰もが慕う、中村俊輔のリーダーシップ 日本代表にこの選手を呼べ!<磐田編>

望月文夫

昨シーズン磐田の躍進を支えた最大の功労者

磐田からは誰もが慕うリーダーシップを持ち合わせる中村俊輔を推したい 【(C)J.LEAGUE】

 日本人選手でエースナンバーの背番号10がもっとも似合う選手は?

 そんな問いかけに、最も多くの賛同を得られそうなのが、ジュビロ磐田のMF中村俊輔だ。横浜F・マリノス・ジュニアユース時代から背番号10をつけ、全国高校サッカー選手権で準優勝した桐光学園(神奈川)、そしてJ1横浜FMでも加入3年目で背負うことになった。

 その評価は国内だけにとどまらない。自身初の海外移籍となったイタリア・セリエAのレッジーナやスコットランドの名門セルティックにまで及び、もちろん日本代表でも長く、その座を明け渡さなかった。そして欧州から古巣・横浜FMに戻っても再び10番として輝きを見せると、2013年には自身2度目のJリーグMVPを獲得した。そして38歳にして国内初移籍となった磐田でも10番を背負い、シーズンが始まる前から驚異的なユニホーム販売枚数を記録し、「俊輔健在」を強烈に印象付けた。

 実は磐田に移籍が決まった当初は、大きな期待を受けながらも周囲からは「本当にやってくれるのか」という疑問の声もあった。ところが、そんな不安はシーズン前のキャンプで簡単に一掃した。連日宿舎やグラウンドでの雑談などで展開されたいわゆる「中村教室」で、多くの選手に取り組み姿勢などを伝授。チームにしばらく不在だった“真のリーダー”の誕生に、クラブ関係者は一気に期待を高めていく。

 第3節の大宮アルディージャ戦で得意の直接FKで移籍後初ゴールを決め、チームをシーズン初勝利に導くと、その後は多くの得点が中村を起点に生まれた。結局シーズン5得点を記録したが、その数字以上の活躍でチームの大躍進に貢献。名波浩監督が「28試合くらい出場してくれれば」としていたリーグ戦は、結局その期待を超える30試合を数え、16年シーズンは最終節にようやく残留を決めたチームを6位まで押し上げた最大の功労者となった。

 今季、シーズンを始動させた1月の中旬に行ったクラブの必勝祈願では、「けがをしないように!」と書いた絵馬を奉納。「去年は腰を痛めるなど、けがで数試合出られなかった試合もあったから」と、40歳を迎える今季は全試合出場(?)も視野に入れている。

W杯メンバーには“精神的支柱”が必要

W杯のメンバーを考えると、精神的支柱となる年長の選手が必要ではないか 【(C)J.LEAGUE】

 そんな中村を日本代表に推薦したい最大の理由は、周囲の誰もが慕うリーダーシップを持ち合わせていることだ。過去のワールドカップ(W杯)に出場した日本代表にも、精神的支柱となる選手が必ず存在した。中でも際立つのが、日本代表が過去最高となるベスト16の成績を残した2大会だ。02年の日韓大会ではFW中山雅史、そして10年の南アフリカ大会のGK川口能活である。

 当時の2人はともにチーム最年長の34歳で、中山の本大会出場はわずかに18分、川口にいたってはけがなどもあり出場機会すらなかったものの、一緒に戦った当時の選手たちからは「チームのまとめ役として欠かせない存在」「存在が大きかった」など概ね高い評価を得た。ある解説者も「1998年フランス大会でのGK小島伸幸(当時32歳で最年長)も含め、年長で癒し効果のある存在の選手が1人いると、チームが和むし、1つにまとまる」と、誰もが認める精神的支柱の必要性を強調した。

 そして今大会の日本代表の候補選手を見てみると、中山や川口に値する選手が存在するかと言えば「?」である。欧州などで活躍するレベルの選手は確かに当時よりも増えたが、「それぞれが主張し合ってしまうと、チームが1つにまとまれなかった06年ドイツ大会のような厳しい結果になる可能性もある」(前述の解説者)と、懸案材料も残る。

W杯の舞台では不完全燃焼のまま

不完全燃焼のまま終えたW杯の舞台で、精神的な支えとして一肌脱いで欲しい 【写真:築田純/アフロスポーツ】

 当の中村はと言えば、06年のドイツ大会に出場し、初戦となったオーストラリア戦では先制弾を決めたが逆転負け。結局1勝もできないまま予選敗退となった。そして10年の南アフリカ大会では中心選手としてメンバー入りを果たしたものの、本大会では出番が少なく、主役を後輩の本田圭佑に譲る形となって終えん。大会後には日本代表から引退を宣言し、不完全燃焼のまま、W杯の舞台から降りてしまった。

 その後は「もうオレはいいよ」としてきた中村だが、精神的な支えとして一肌脱いで欲しいのが本音だ。くしくもW杯ロシア大会のグループステージ期間中(6月24日)に40歳を迎える中村。その誕生日の話題がチームのムードを盛り上げることで、予選突破、そして上位進出を呼び込むことになるかもしれない。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

1958年生まれ。ランニング、サッカー等の専門誌で編集記者。その後フリーとなり、陸上、サッカー、バレーボールを中心に専門誌等に執筆。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント