振り付けに表れるスケーターの思い 【対談】宮本賢二×安藤美姫 後編

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安藤美姫さん(左)と宮本賢二さんが印象に残っているプログラムや、振り付けへの思いを語ってくれた 【赤坂直人/スポーツナビ】

 フィギュアスケーターの振付師には、人それぞれのカラーがあるという。振付師の宮本賢二さんと、選手時代に2度の世界選手権優勝(2007年と11年)と五輪出場(06年と10年)を果たした経験を持つ安藤美姫さんは、演技を見れば誰が振り付けをしたかがおおよそ判別がつくそうだ。安藤さんいわく、宮本さんの振り付けは「ストレートラインステップ(編注:リンクの端から端まで直線的に進んでいくステップ)を見れば分かる」という。

 フィギュアスケートの歴史において、これまで数々の名プログラムが生まれてきた。それには振付師の力も大きく寄与している。印象に残っているプログラムや平昌五輪の注目ポイントも合わせて、宮本さんと安藤さんが振り付けへの思いを語ってくれた。

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振付師によって異なるカラー

振付師によってカラーはそれぞれ異なる。宮本さんがこだわっていることとは!? 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

――振り付けをするときに、こだわっていることはありますか?

宮本 絶対に曲をBGMにしないということ、試合だったら点数が出るということ、それとコーチの意見です。あとスピンが15秒あるという選手がいれば、失敗すると時間がかかるので17秒取るとか。とにかくコーチと選手の意向を聞くということにはこだわっています。

安藤 スピンなどを長く取ってくれるのはありがたいですね。やはり少しバランスを崩したときでも1秒くらい遅れたりするので、選手も時間に余裕があると丁寧にスピンをコントロールしていける。焦る気持ちがなくなるので、ミスが少なくなって点数にもそのまま反映されます。でも、振り付けを見るのは面白いですよね。賢二先生みたいにもっとアイデアと才能があれば、私も振り付けするのをもう少し楽しめるのかなと思っているんですけど。

宮本 才能なんてないし、アイデアだって必死で考えてるよ。

安藤 なかったらここまでやれていないですよ。

宮本 マジで必死に考えているだけ。

安藤 でも「先生の振り付けだ」と分かります。

宮本 本当に?

安藤 ストレートラインステップを見れば分かります。

宮本 今はそんなことはないけど、少し前まではステップ中に必ず止まるとか、だいたい盛り上がる曲で始まるとか、バック・イン・ループ(編注:ターンの1つ)は1回転で止めるとか、そういうのは多かったと思う。

安藤さんは演技を見れば誰が振り付けしたかはだいたい分かるという 【赤坂直人/スポーツナビ】

安藤 演技を見たら誰が振り付けしたかは分かりますよね。

宮本 うん、その人のカラーが出る。デヴィッド(・ウィルソン)もそうだし、(ニコライ・)モロゾフもちょっと出るね。

安藤 ローリー(・ニコル)先生も色が出ますね。ローリー先生とデヴィット先生は、音の間の取り方で分かる。シェイ(=リーン・ボーン)先生は女子に振り付けしていたら分かるんですけど、男子に振り付けていると分からない。

宮本 デヴィットはカーブでチェンジするときのフォア・イン・カウンター(編注:ターンの1つ)と手の動きで「あっ、デヴィットだ」と分かるね。

安藤 デヴィット先生はけっこう音をわざと外して、ためて間をとることが多い。あと同じステップをリピートさせたりする。

宮本 俺は振り付けられたことがないから詳しくは分からないけど、雰囲気や空気感で「これはデヴィットっぽいな」というのが分かる。漠然と呼吸をしている感じとかね。

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