「大会を制すカギはSPの坂本選手」 安藤美姫が全日本フィギュア女子を解説

スポーツナビ
 フィギュアスケートの全日本選手権が21日、東京・武蔵野の森総合スポーツプラザで開幕し、女子ショートプログラム(SP)は17歳の坂本花織(シスメックス)が73.59点で首位に立った。大会3連覇中の宮原知子(関西大)は73.23点で2位につけ、本郷理華(邦和スポーツランド)が70.48点の3位に入った。グランプリ(GP)ファイナルに出場した樋口新葉(日本橋女学館)は68.93点で4位。本田真凜(関西大中・高スケート部)は6位、昨季の世界選手権に出場した三原舞依(シスメックス)は7位と出遅れた。

 この女子SPの結果を受けて、2007年と11年の世界選手権を制し、06年トリノ大会、10年バンクーバー大会と五輪2大会に出場した安藤美姫さんに各選手の演技を解説してもらいつつ、フリーに向けてのポイントを伺った。大会を制するカギとは何なのか。

やるべきことに集中していた坂本選手

SP首位の坂本は、自分のやるべきことに集中していた 【坂本清】

 今大会は全体的にレベルがすごく上がっているなと感じました。滑りの質もそうですし、3回転+3回転も入れている選手が多かった。自分が現役だったころに比べて、レベルは確実に上がっています。

 そんな中でSPの首位に立ったのが坂本選手です。6分間練習では、体の動きがすごく良かったですし、程よく力が抜けていました。平常心だったという話ですが、たぶんこの全日本が楽しみだったんじゃないでしょうか。自分のやるべきことだけに集中する姿勢が見えました。外から見ていると五輪が懸かった全日本というのは特別なものがあります。自分が知らないうちに緊張したり、プレッシャーがかかってしまうものなのですが、6分間練習の坂本選手は、「これは良い演技をするだろう」という体の動きをしていました。五輪の選考会では、いかにその試合を楽しめるかが何よりも大事です。その気持ちを持つことができた選手が勝てるものです。

 2位の宮原選手は、いつもより演技が小さく見えました。宮原選手はすごく動きもきれいですし、エッジワークやスピン一つひとつを取っても、本当に技術が高い。ただ、SPでは演技全体の流れもそうですし、特にジャンプで緊張しているように見受けられました。その中でも大きなミスをせずに、演技をまとめられたのはこれまでの経験が生きていたんじゃないかと思います。大きなケガをしたあとに、この演技ができたのは本当に素晴らしい。SPを経て、フリーでは彼女らしさを存分に出せるのではないかと思います。

樋口選手と三原選手を分けたもの

三原のSPは“呼吸”が合っていないと指摘。今季苦戦しているのはその影響か!? 【坂本清】

 一方、4位の樋口選手と7位の三原選手は、同じダブルアクセルでミスをしてしまいました。6分間練習でも硬かったように感じます。

 三原選手は流れのあるジャンプができる選手ですけど、今日はややその流れがありませんでした。冒頭の3回転+3回転は成功しましたが、ダブルアクセルでのミスは彼女自身もすごくびっくりしたと思います。そのあとの演技もミスを引きずってしまったように見えました。樋口選手は冒頭のダブルアクセルが抜けてしまいましたが、それが逆に良い方に出ました。やるしかないと気持ちを切り換えて、次の3回転+3回転は質の高いジャンプでした。

 最初のジャンプで失敗してやるしかないと切り換えられる選手、引きずる選手と両方います。今回、樋口選手は五輪に出たいという強い気持ちが良い方向に働いたと思います。ミスしたあとの演技は良い具合に力が抜けていたので、GPファイナルのときより滑れていた印象があります。

 三原選手は今季、SPでやや苦戦していますが、もう少し彼女と“呼吸”の合っている曲があるんじゃないかと思いました。彼女は滑らかなスケートをする選手で、ああいう強い感じの曲を滑るタイプではないですし、意識していないところで呼吸が合っていないのかもしれません。私自身も選手時代に呼吸の合う曲と、合わない曲というのがありました。苦戦しているという意味では、そういう影響があるように感じます。ただ新しい三原選手の魅力が見られるプログラムなので、良い挑戦をしているとも思います。あとは時期です。こうした挑戦を五輪シーズンにやるかどうかというのは賭けでもあるので、選手の気持ちをコーチや振付師は考慮していると思います。そういう強い気持ちでSPに臨めているのであれば、良いチョイスだと思います。

 SPではミスが出てしまいましたけど、本田選手もシーズン序盤に曲を変えていて、それは正解だったと思います。GPシリーズのときよりも演技の流れが美しくなっていました。

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