「宮原選手の演技には幸せが出ていた」 安藤美姫が全日本フィギュア女子を解説

スポーツナビ
 フィギュアスケートの全日本選手権が23日、東京・武蔵野の森総合スポーツプラザで行われ、女子フリースケーティングでは、宮原知子(関西大)が147.16点をマークし、合計220.39点で大会4連覇を飾った。ショートプログラム2位から逆転し、平昌五輪代表に内定した。ショート1位の17歳・坂本花織(シスメックス)が213.51点で2位。3位には15歳の紀平梨花(関西大KFSC)が208.03点で入り、グランプリファイナルに出場した樋口新葉(日本橋女学館)は206.96点で4位だった。

 この女子フリーの結果を受けて、2007年と11年の世界選手権を制し、06年トリノ大会、10年バンクーバー大会と二度の五輪に出場した安藤美姫さんに各選手の演技を解説してもらった。

宮原選手は五輪に出場するにふさわしい

宮原の演技には、ケガからこの舞台に戻ってこられた“幸せ”がにじみ出ていた 【坂本清】

 まず今回の女子フリーを見ていて感じたのは、1人1人にそれぞれの目標や強い思いがあったということ。五輪の選考会でしたが、選手の中には五輪を目標とできない選手もいます。ただ、そうした中でもフィギュアスケートを通して伝えたいメッセージや、1人1人の思いがこの大舞台に込められているんだなと感動しました。緊張した選手、しなかった選手ともにいると思いますが、ほとんどの選手がミスをしないで演技する日本の層の厚さを再認識しましたし、感極まって涙したり悔しそうな表情を見て、思うことも多くありました。

 そんな大会を制したのが宮原選手です。彼女としては恐らくまだまだ最高の演技ではなかったと思いますが、五輪選考会でショートとフリーを大きなミスなくまとめました。ジャンプでは3回転ルッツ+3回転トウループで回転不足を取られましたが、スピンやステップのスケーティングスキルで魅せられる選手は世界的に見ても少ないですし、頭ひとつ抜けているなと感じました。それに加えて、今回はケガからこの舞台に戻ってこられた“幸せ”が演技に出ていたように思います。ただ、動きとしては本来もう少し力強いはずです。最高の状態のときの宮原選手の演技は強さしか見えない。それでも経験を生かし、きちんと自分の気持ちと向き合って、ここまでの演技ができたというのは、五輪に出場するにふさわしい選手だと思います。

 2位に入ったのが坂本選手です。すごく力強い演技をするので、見ていて「おー」となりました(笑)。一方で、ショートはスケーティングや表現面ですごく洗練されてきたと思ったのですが、フリーになるとスケーティングやちょっとしたところで、まだ荒削りな部分が見られました。若い選手ですのでそれは良いところでもありますし、ジャンプもダイナミックです。最終滑走でプレッシャーがかかる中、ノーミスで滑り切ったのも素晴らしかったのですが、そうした部分が点数に影響したのではないでしょうか。最初の3回転フリップ+3回転トウループで回転不足を取られていますが、自分の強みであるジャンプでそれを取られてしまうとやはり厳しくなります。もっとも、あれだけ飛距離のあるジャンプを跳べる選手はなかなかいませんので、彼女に必要なのは洗練された滑りや丁寧にスピンなどで、もっと加点をもらえるようにしていくだけだと思います。

樋口選手に伝えてあげたいこと

樋口には「自分が思っているように輝いているから、自信を持ってほしい」と伝えたいという 【坂本清】

 一方、4位に終わった樋口選手はミスが出てしまいました。総合的に見て、スケーティングや音楽の表現はさすがでしたし、世界に通用する滑りを持っているんだなとあらためて感じました。ただ、フリーの3回転サルコウが2回転になってしまったり、ショートでアクセルがシングルになってしまったりというところを見ると、まだまだ自分の気持ちとうまく付き合えていないのかなと思います。自分にプレッシャーを与え過ぎているように見受けられます。樋口選手は、世界で見たときに評価されるスケーティングを持っていますし、ジャンプもきちんと降りてくる選手。そういうところは強みですし、最終グループの6人で見ても、スケーティングの美しさに長けています。プログラムにも盛り上がる部分が至るところにあります。だからこそ言ってあげたいのは、「自分が思っているように輝いているから、自信を持ってほしい」ということです。樋口選手の演技や表情は人の心に残る。そういう演技をするのは優勝することよりも難しい。「輝いているんだよ」と、自分にもっと言ってあげてほしいです。

 ショートで7位だった三原舞依選手(シスメックス)は、5位に順位を上げました。緊張が少し垣間見られましたが、すごくきれいな演技でしたし、川が流れるような清らかな印象を受けました。ショートでの点差が響きましたけれど、あのショートからフリーできちんと自分らしく演技をするというのはなかなかできないことです。三原選手は世界的に見ても実力がある選手なので、これを機にもっと努力するでしょうし、次はさらに強くなって戻ってくると思います。

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