予想外しか起こらないダカールラリー 取材メモで振り返る9000キロの記憶

杉山友輝

ボリビア編 高地での折り返しから勝負の後半戦へ

標高4000メートル地点で雪で立ち往生。健康管理アプリで高山病と密接な関係を持つと言われる血中酸素濃度を計る大野カメラマン 【写真:杉山友輝】

1月12日 休息日(ラ・パス)

 ダカールラリーは約2週間に渡って開催される長丁場。そのため折り返し地点で「休息日」を設ける。17年大会に引き続き、ボリビアの首都ラ・パスでの休日だ。

 前回、同行の大野カメラマンは、重度の高山病でラ・パスの病院に入院。その後、取材に復帰したのは、ラリーがほぼ終了したころ。退院時、「もう復帰しないで先にゴール地へ行ってはどうか?」と電話で提案すると、「それじゃあ、僕のダカールが終わっちゃうんですよ!」と大野に怒鳴られた。

 あれから1年。大野は昨年のダカールラリーの借りを、今年のダカールラリーで返した。事前に低酸素トレーニングを行ったり、徹底的な体調管理等が功を奏して、万全の健康状態で撮影は進んだ。選手でなくとも、リタイアはリタイア。悔しさはよくわかる。

 順調と言えば、ホンダもいい流れで休息日に入った。優勝候補の一人であるホアン・バレダが上位で前半戦を終え、他の選手も好位置につけていた。

 本田太一は「前半戦の結果には満足しています。1年間の準備の成果が出ていると思います。後半戦も引き続き、気を緩めることなくしっかりやって行きたい」と話した。本田は口数の少ない男だ。しかし、心に秘める情熱は熱い。

 前半戦が良くて、後半戦落ちていくというダカールラリーを何度も経験してきている。気は緩んでいなかったが、予想外のことが起き始める。

1月13日 ステージ7(ラ・パス〜ウユニ/マラソンステージ1日目)

 ダカールラリーにはマラソンステージと呼ばれる競技区間がある。その区間では、選手はチーム関係者とは別のキャンプ地に泊まって隔離され、車両の整備などを受けることができない。つまり、壊れたら自分で直さなくてはならないため、最も平穏に終わりたい区間だ。

 だが、平穏には終わらない。マラソンステージ1日目、425キロの競技区間の300キロ地点でバレダはクラッシュ。膝を激しく痛めたが、残り100キロを歯を食いしばって走り抜き、この日1位でゴールした。

1月14日 ステージ8(ウユニ〜トゥピサ/マラソンステージ2日目)

 マラソンステージの2日目、ホンダのマイケル・メッジにトラブル発生。主催者から支給されるGPSの機械が故障。その機械は競技にはとても重要なもので、通過すべき場所を通ると得点が運営本部に送られるというもの。滅多に壊れることのない機械が故障し、メッジは迷走。バイクを岩に激しくヒットし、リタイア。

 さらにここからダカールラリーの「予想外」は勢力を強めていく。

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著者プロフィール

J SPORTS プロデューサー。明治大卒業後、雑誌社勤務を経て、テレビマンユニオン「世界ウルルン滞在記」のディレクターを務め、2005年からJ SPORTSへ。新規番組立ち上げや国際大会などの映像制作を担当し、現在の担当競技は卓球・ゴルフ・モータースポーツなど。

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