ダカールラリーに挑むサムライたち ホンダ、トヨタ車体、日野自動車の情熱
今も耳に残る男たちの言葉
17年大会の出発式で手を振る三浦昂 【写真:ロイター/アフロ】
トヨタ車体のあるドライバー「今回は準優勝ではなく、優勝します」。
日野自動車のあるドライバー「人間力が向上する瞬間を感じて欲しい」。
世界一過酷と呼ばれるダカールラリー(以下ダカール)が、2018年1月6日(現地時間)、ペルーのリマをスタートする。
挑戦する男たちの言葉から、今大会へ参戦するサムライたちを紹介したい。
モンスター・エナジー・ホンダ・チーム(2輪部門)
17年大会、スタート前のモンスターエナジーホンダチーム。ライダー5人の大所帯だ 【(c)本田技研工業】
ダカールにおいて、ホンダのチーム関係者は修行僧や求道者のようにひたむきでストイックだ。
13年に24年ぶりに復帰したホンダは、17年大会まで優勝がない。
最高位は15年、パウロ・ゴンサルヴェスの2位。世界一過酷と言われるラリーに復帰し、3年で準優勝まで行けたのだから、一般的にはとてもいい流れだと評価できる。しかしホンダには「優勝以外は何の価値もない」のだ。
勝てるだけの「速さ」と「ポテンシャル」があったにも関わらず、16年は成績が振るわず、17年においては燃料給油での規則解釈の違いから1時間のペナルティーを与えられ、常勝軍団と言われているKTMに勝つことはできなかった。
16年大会の後、ホンダのあるエンジニアが私に語ってくれた言葉が忘れられない。
「15年は死ぬほど努力しました。でも、16年は少し足りなかったかもしれない」
そして17年、前述の通り規則の解釈という、どうすることもできない理由で勝利の女神は微笑まなかった。
ダカールはチーム戦で、個人の力だけでは勝てない。エンジニアの言葉は彼だけではなく、もしかしたらチームそのものの課題だったのかもしれない。
ホンダのチーム代表でラージプロジェクトリーダーの本田太一は基本に立ち返った。
「ライダー、チーム運営、バイクそのもののポテンシャル、このトライアングルのバランスを最善にすべく、17年大会が終了してすぐに動きました。国から国へと移動するダカールラリーでは、選手もチームもマシンも、小さなストレスの積み重ねが致命的なミスとなります。ストレスが積み重なっていくことを前提として、それでも乗り越えられるようにトレーニングしました。またチームの指揮系統をシンプルにして、情報伝達をしやすく、そしてマシンは走るステージから逆算して、不安要素を徹底的につぶしました」
加えて17年のような規則の解釈の違いというトラブルを防ぐために、主催者及びFIMの規則書を熟読。
初心に立ち返って、基本的なことから徹底的に準備を重ねた一年だったという。
チーム全体で行った17年の「死ぬほどの努力」を最大の武器として、ホンダは18年のダカールに挑む。