監督交代後、攻撃の中心を担う香川真司 オバメヤンとのラインはチームの生命線
自らの価値を発揮するために苦しんだ2年間
トゥヘル体制の2年間、香川は個のスピードを重視するチームの攻撃陣の中で自らの立ち位置に悩んでいた 【Getty Images】
そこには監督交代による戦術的な影響もある。ボス前監督は前線からのプレスを採用したため、ウイングの選手は相手のサイドバックに対応する形で常に高い位置を取っていた。前線に2人のウインガ―が残るため、攻撃面では特にカウンター時において大きな強みになっていたが、守備面で不安定になる大きな原因でもあった。
シュテーガー監督はチーム立て直しのためにリスク回避を重視し、ウイングの選手に高いポジションは取らせない。その結果、守備の安定感は増したが、一方でウインガーがカウンターで大きな脅威を発揮することもなくなった。サイドからのルートに活路が見いだせない今、香川→オバメヤンの中央からのルートが、現在のドルトムントの攻撃における生命線であるのは間違いない。
ただ、ドルトムントはプリシッチ、そしてロイスのまもなくの復帰を見込んでいる。そうなればチームの攻撃ルートにも変化があるだろう。そこで香川の真価が問われることになる。トーマス・トゥヘル体制の2年間、オバメヤンにロイス、ヘンリク・ムヒタリアン、そしてデンベレと個のスピードを重視するチームの攻撃陣において、自らの価値を発揮するためにもがいてきた。チームが速い攻撃を志向する以上、スピードではない香川の特徴は重視されず、一昨季は「チームのストロングポイントがスピードにあることを意識しすぎた」と、チームにおける自身の立ち位置に悩んだ。
自身2度目のシーズン2桁ゴール&アシストへ
ボルフスブルク戦ではチーム最長の走行距離を記録するなど、コンディション面でも順調だ 【写真:アフロ】
サイドの攻撃ルートが増えることは、香川にとっても喜ばしいことだ。サイドと中央の2つのルートに負担が分散されるだけでなく、タイミングのいいゴール前への飛び込みという香川の強みも発揮されることになる。香川がゴール前に入る回数は以前から増えていたが、このところは必ずと言っていいほど、チャンスの場面でゴール前に詰めている。質の高いボールがなかなか入ってこないため、今のところ結果にはつながっていないが、そんな状況も変わってくるだろう。
ボルフスブルク戦ではチーム最長11.95キロの走行距離を記録しており、すでに量の面でコンディションに問題はない。「もう1個上げていかないと」と本人が語るように、質の面を高めていけば、自身2度目となるシーズン2桁ゴール&アシストも見えてくるはずだ。