「プロセスを1つずつ追っていくだけ」 MGCファイナリスト大迫傑インタビュー

日本陸上競技連盟

2017年の福岡国際マラソンで3位に入り、MGC出場権を獲得した大迫傑へのインタビュー 【写真は共同】

 2017年12月3日に行われた福岡国際マラソンで、日本歴代5位となる2時間7分19秒の好記録をマークして、日本人トップの3位となった大迫傑(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)。19年9月以降に予定されている2020年東京五輪代表選考会となるマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)の出場権も獲得した。

 その大迫へのインタビュー。レースを終えて2週間ほど経ち、数日後には拠点としている米国オレゴンへ戻るというタイミングで、改めて福岡でのレースを振り返ってもらうとともに、自身の競技観やマラソンへの向き合い方などを聞いた。

取材・構成=児玉育美(JAAFメディアチーム)

「トップ争いする」ために福岡へ

2回目のマラソンに福岡を選んだ理由はトップ争いに加わることができるからだった 【写真は共同】

――福岡国際マラソンを終えられてから2週間ほどたちました。今は、どういう状況でしょうか?

 ようやく少しずつ練習を開始しました。まだ次の大会は決まっていないのですが、身体も回復して、少しずつ走り始めたところです。

――レース後、米国に戻ってから、また日本へ?

 いいえ、日本にいました。こちらでやることもあったので。

――2回目のマラソンに福岡国際を選んだのは?

 前回の大会(ボストンマラソン)が4月の末だったので、半年以上空いて時期的にもいいかなと思ったのと、あとは例年の結果から自分が勝負に加われるレースだと感じていたので、そこが理由ですね。前回も勝負はできたのですが、今回もしっかりとトップ争いするということが目的でした。

――レースに向けては、どこに課題を置いてトレーニングに取り組んできたのですか?

「どこに」というよりは「全体的に」という感じです。スピードだけでも、スタミナだけでも、フィジカル面の強さだけでもなくて、全部の強さを均等に上げていったという感じですかね。

――練習をしている過程で、ボストンマラソンの前との違いは?

 特にないです。その日の気候などによって、練習の結果は多少は左右しましたが、基本的には同じ流れできていました。

――練習していて、ボストンで走った時よりも「能力が高まってきたな」とか「強くなってきているな」とかいう手応えはあったのですか?

 どうですかね……。実際にどうだったかは分からないのですが、強くなっていることを信じて、ずっと練習していました。

今ある現状で、自分の力は100%出した

――実際に走ってみていかがでしたか?

 結果として3位で、「いいレースができたな、特に30キロ以降、いいレースができたな」と思います。欲を言えば、もうちょっと先頭についていたかったなという部分はありますが、ただ、「自分の力は100%出した」という思いがあるので、次につながるいいレースができたんじゃないかなと思っています。

――100点満点?

 100点満点かどうかはちょっと分からないんですけど、ただ、今ある現状で、100%を出した……点数ではなくて、自分のあるものを全部出したっていう意味合いですかね。

――レースを拝見していて、特に序盤は静かに走っているという印象を受けました。目立つ動きがあるわけではなく。「この辺りまではこういう風にしよう」というようなプランはあったのですか?

 全体を通して、すべて自分の力と対話をしながら動くようにしていました。どの選手がスパートしたとしても、すぐに対応するのではなくて、ひと呼吸置いてから行こうという感じで。それはボストンの時と変わらなかったです。周りの人がどう仕掛けたからという問題じゃなくて、僕は常に自分との対話だと思っているので。福岡でも、それはできたのではないかと思っています。

――スタートラインに立った段階で、自信を持って臨めていた?

 そうですね。マラソン競技はスタートラインに立つまでの準備期間が長いし、その過程で必要なことはすごく多い。むしろ自信のない状況でスタートラインに立つことはあり得ないと僕は思っています。自分だけではなく、そういう状況で頑張ってきてスタートラインに立った選手たちと一緒に走れることに対して、すごく喜びを感じていました。

意識は他者でなく「自分との戦い」に向かう

日本歴代5位となる2時間7分19秒を記録したが、「ただの数字」でしかないと話す 【写真は共同】

――レースの後、タイムはあまり気にしていなかったとも話していましたが、2時間7分19秒という記録をどう思っていますか?

 ただの数字というか、そのままでしか捉えていないです。それ以上でもそれ以下でもないという風にしか思っていないです。

――30キロを過ぎたところで、ご自身もペースは上げたものの、トップとは離れてしまいました。「あそこで、もう少しこうできたら……」と思うようなことはありませんか?

 特にないです。というのも、あそこでの判断は正しかったと思っていますし、逆に無理についてしまっていたら、おそらく35キロ過ぎで大きく崩れてしまったと思うので。落ち着いて対応できていたのかなと。

――レースの展開と、自分の状態と、残りの距離を踏まえての判断ができたということですね。

 そうですね。

――そうすると、トップ争いという意味で、競り合うとか駆け引きするとか急なペース変動に対応するというのは、今後のレースで挑戦していく?

 それは見え方ですよね。周りからはそう見えるのかもしれませんが、実際はもう少しこう「自分との戦い」というか、そういうものだと思うんです。

――では、走っている時は、他者ではなく、自分の内面に向かっていくような感じ?

 そうですね。

――どういうことをイメージしたり、考えたりするのですか?

 自分の残りのエネルギーをどう分散して走るかとか、そういうことでしょうか。比較的、何も考えていないっていうのが正しいですかね。まあ、後半に関しては、自分を励ましたりするのはありますけど。

――今回で言うならどの辺り?

 30キロ、35キロくらいのところでしょうか。同じような練習はしていたので、その時のことなど考えながら走っていました。

――あの練習で、こういう感じだったというのを思い出しつつ?

 そうですね。練習の時と同じくらいだから、行けるんじゃないかとか。そういう意識ですね。

――「行ける」という感じのほうが大きかった?

 そうじゃないと、42キロは走れないです。

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