「プロセスを1つずつ追っていくだけ」 MGCファイナリスト大迫傑インタビュー

日本陸上競技連盟

1つ1つの小さな決断が今の自分を作っている

「強くありたい」という気持ちが、大迫を常に挑戦する場へと導いてきた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

――東京出身ながら高校は長野の佐久長聖高へ、社会人になってからは渡米してナイキ・オレゴン・プロジェクトへというように、大迫選手は、いつも自分で道を選択して進んでいた印象があります。陸上競技は中学の頃から始めたということですが、中学、高校の頃、どういう選手になりたいとか、どういうところに目標を置いて取り組んでいたのですか?

 常に「強くありたい」、そういう気持ちは前々からありましたね。高校進学の選択も、少し自分が背伸びしないと頑張れないチームでしたし、オレゴン・プロジェクトについても背伸びして届くか届かないかのチームに挑戦していくことで僕自身は強くなると思っていたので。

――「将来的にこうなりたい」というのを、例えば高校に行く段階とかでイメージできていたのですか?

 正直、当時の記憶がはっきり残っているわけじゃないので、その時どうだったかを答えるのは難しいです。でも、今の状況で答えるとしたら、(目指す)誰かというような像があるわけではありません。自分自身がどこまで行けるのか、常にチャレンジしていくというのはすごい楽しみですし、自分がその目標に向かっていく時に、どういうプロセスで行けるんだろうということもすごく楽しみなので、先にゴールを見てしまうのではなく、自分のやっていることを1つ1つ確認しながら、そこに価値を見出しながらやっていくということを今はしています。

――では、中学や高校の頃に、陸上を続けていこうと気持ちが向いていくきっかけになった出来事だったり思いだったりは?

「これ」っていうものはないですね。本当に自然の中で決まっていったものなので。よく「これまでの人生の中でターニングポイントがあったのではないか」と聞かれるのですが、僕は1つ1つの小さな決断が今の自分を作っていると思っているんです。なので、「これ」というのは言い難いですね。

「特別なことをやりたいと思うほど、地道なことをやるしかない」

「1つ1つ」目の前をクリアすることで、今の成長につながっている 【写真:アフロ】

――ナイキ・オレゴン・プロジェクトに参加したのは、どんな思いからだったのでしょうか?

 ただ、「世界で戦える選手になりたかった」ということですね。

――慣れるまでは大変だったことも多かったのではないかと思うのですが。

 トータルで振り返ると、今までやってきたこと、やらなきゃいけなかったことというのはすごく膨大な量だったと思うのですが、その時々で1つ1つ消化していったので、特にむちゃくちゃ大変だったという思いはないですね。また、ナイキの方とかが非常に力を貸してくれたので。ストレスがなかったといえば嘘になりますが、少ない状態で臨めました。

――目の前にあることを淡々とやっていく、クリアしていくという感じだったのでしょうか?

 実際にやってみるとそれしかなくて……。外から見たら、あるいは結果だけ見たら、「これだけのことをやってきた」ということになってしまうのでしょうが、僕の中では「1つ1つ」ということだけですね。

――オレゴンに行って、受けたコーチングや一緒にトレーニングする仲間に、驚いたり刺激を受けたりしたことはありますか?

 刺激は常に受けています。ほかの選手からも刺激は受けますし、また、コーチとより身近な位置にいるということは、非常に僕にとってもプラスになっています。ただ、「何か急激に変わった」「何かに驚いた」というようなことはありません。何かこう「特別なもの」を求めがちですが、特別なことをやりたいと思えば思うほど地道なことをしっかりやっていくしかなくて、そこを実感できたのが良かったなと思います。

地元でもある東京マラソンは1回走ってみたい

――20年東京五輪に向けて、「MGC」という制度が導入されて、実際に始まったわけですが、MGCについて最初に聞いたとき、どういう感想を持ちましたか?

 より明確になったので良かったなと思いました。今まではすごく漠然としていて、どの大会を走ったら選ばれるのか分からなかったじゃないですか。運に左右される要素もあって。MGCに関しては、まだはっきりしない部分もあるとは思いますが、ただ、今までよりは割と明確になったなというのはイメージとしてあります。

――東京五輪に対しての具体的なイメージは?

 そこまで今は深く考えていなくて、というのも、自分がこれから次の大会を決めて、それをクリアしていって、もう1回また次の大会を決めて、またクリアしていってというこの延長上にあるものだと思っているので。その結果、メダルが取れればもちろんいいとは思っていますが、でも、そういう結果や順位は他人の結果に影響されるもので、そこは僕がコントロールできるものでもない。だとしたら、自分がやるべきところは、そのプロセスを1つずつ追っていくということだけですね。

――では、五輪とは関係なく、マラソンランナーとして、一度走ってみたいとか、面白そうだなと思うレースはありますか?

 自分が必要な大会だけを追っていこうと思っているので、特にどこを走りたいという意識はありません。でも、東京マラソンは1回走ってみたいなと思っています。自分の地元ですし、モチベーションはすごく高いですね。

――次のレースの予定は、まだ決まっていないということですが……。

 決まっていないです。コーチとは、帰ってから1回話したいと思っています。

――来シーズンの計画や目標など、具体的なところを話すのは難しいですか?

 まだ決まっていない部分なので……。自分が「もっとこうしたい」ということをコーチやスタッフに伝えたところで、「じゃあ、こんな可能性がある」「こんなオプションがあるんじゃないか」という話をして、来月(2018年1月)くらいに、次の目標や大会を決めていくことになると思います。

――それを設定した上で、どういう風にやっていくかが決まっていくわけですね。

 はい。1つメインの大会を置いて、そのためにここから練習をスタートして、この時期に合宿をおいて、じゃあ、ここで大会を走って……ということになると思います。

――ありがとうございました。さらなる活躍を楽しみにしています。

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