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3人のVリーグ選手が振り返る春高バレー
忘れ得ぬ、センターコートの記憶――

 高校生バレーボール選手たちにとって、憧れの舞台、春の高校バレー 全日本高等学校選手権大会(以下、春高)。勝っても負けても、すべてのバレーボール選手にとって特別な「春高」。高校を卒業後、V・プレミアリーグの門をたたき、現在はそれぞれ異なるチームでプレーする3人の元高校生バレーボール選手たちが語る、忘れ得ぬ、センターコートの記憶――。

星城で6冠を達成 川口太一の場合

星城の一員として高校6冠を達成した川口太一(12番)が春高バレーを振り返る(写真は2014年)
星城の一員として高校6冠を達成した川口太一(12番)が春高バレーを振り返る(写真は2014年)【写真:坂本清】

 2014年1月。前年に春高、インターハイ、国体を制し2年生ながら3冠を達成。第66回大会は2年連続の3冠、合計して、前人未到の6冠を狙う愛知県代表の星城高校が大会の主役だった。


 エースの石川祐希を筆頭に、ウイングスパイカーの武智洸史、山崎貴矢、ミドルブロッカーの神谷雄飛、佐藤吉之佑といった多彩な攻撃陣を操るセッターの中根聡太。そして、抜群のディグ力、レシーブ力で、攻撃陣以上の存在感を発揮したのがリベロの川口太一。


 優勝候補筆頭で、ましてや6冠が懸かった最後の春高。さぞ大きなプレッシャーを抱えていたのだろうと思いきや、「自分たちのバレーはいつでも『1球1球、毎試合毎試合を大切にする』というのが大事なことだったので、結果に対するプレッシャーは、たぶんみんな感じていませんでした」と川口は言う。

準決勝の東福岡戦は、大接戦の末に星城が競り勝った
準決勝の東福岡戦は、大接戦の末に星城が競り勝った【写真:坂本清】

 その言葉通りにトーナメントを勝ち上がり、迎えた準決勝。大会前から「きっとこの試合が大一番になる」と重要視していたのがセンターコートで戦う初戦となる準決勝、福岡代表の東福岡との一戦だった。


 10月の国体では先に2セットを取り、星城を崖っぷちまで追い込んだ東福岡。逆転勝利を収め、国体を制したのは星城だったが、「今度こそスッキリ勝ちたい。リベンジしてやるぞ、ぐらいの気持ちで臨んだ」と川口が振り返るように、星城に負けず劣らぬ多彩な攻撃陣で攻め立ててくる東福岡に対し、星城は選手同士でも話し合いを重ねた。


 おそらくキーになるであろう相手エースのバックアタックをノーマークで打たせ、ディグで拾ってプレッシャーをかける。ブロックに跳ばない攻撃陣はその分、速く次の攻撃準備に入るという大胆な策に出た。アタッカーからすれば、ノーマークで打てる状況は圧倒的に自分が有利であるはずなのだが、ことごとくレシーブでつながれる。東福岡にとって、ブロックとはまた違う「壁」になったのが、リベロの川口だった。


「あの作戦が合っていたのかどうかは、正直、分からないです。結果的にいい方につながったけれど、もしかしたら逆になることだってあったかもしれない。でも、みんなで話し合って決めたことだったから迷いはなかったし、苦しい時、つらい時ほどチームが1つになって戦うんだ、という力がすごく出た試合でした」

最後は石川祐希(右)のバックアタックが決まり、星城が前人未到の6冠を達成した
最後は石川祐希(右)のバックアタックが決まり、星城が前人未到の6冠を達成した【写真:坂本清】

 第1セットに続いて第2セットも連取した星城が、第3セットはデュースの末に34−32という大接戦の末に勝利を収め、決勝に進出。決勝は独自の高速コンビバレーを武器とする鹿児島商と対戦した。


 準決勝に続いて接戦を制した星城が2セットを連取。24−20で迎えたマッチポイント。最後はどこにトスが上がるか。その行方をコートに立つ全員が迷うことなく、同じ思いで、エースに託した。川口がレシーブしたボールを、中根はバックセンターにトスを上げ、高い打点から放たれた石川のバックアタックが決まり、星城が連覇、そして前人未到の6冠を達成した。


 あの1点のことは絶対に忘れない。川口もそう振り返る。


「竹内(裕幸)先生も、中根も『このチームを引っ張ってくれたのは石川だから、最後は石川に上げよう』って。言葉にすることはなくても、全員が同じ思いだったし、最後は祐希が決めてくれる、と思っていました」


 卒業後に自身は豊田合成トレフェルサへ入団し、リベロ、レシーバーとして出場機会も年々増えた。「まだ課題ばかり」と苦笑いを浮かべながらも、来春には大学を卒業したかつての同級生たちがVリーグへとやってくる。


「負けられないですよね。今まで自分がやってきた4年間と、みんながやってきた4年間の違い、経験が出てくると思うので。みんながどういうプレーをして、自分がどういうプレーができるか。すごく楽しみです」

田中夕子
神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など、女子アスリートの著書や、前橋育英高校野球部・荒井直樹監督の『当たり前の積み重ねが本物になる』では構成を担当

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