3人のVリーグ選手が振り返る春高バレー 忘れ得ぬ、センターコートの記憶――
星城で6冠を達成 川口太一の場合
星城の一員として高校6冠を達成した川口太一(12番)が春高バレーを振り返る(写真は2014年) 【写真:坂本清】
エースの石川祐希を筆頭に、ウイングスパイカーの武智洸史、山崎貴矢、ミドルブロッカーの神谷雄飛、佐藤吉之佑といった多彩な攻撃陣を操るセッターの中根聡太。そして、抜群のディグ力、レシーブ力で、攻撃陣以上の存在感を発揮したのがリベロの川口太一。
優勝候補筆頭で、ましてや6冠が懸かった最後の春高。さぞ大きなプレッシャーを抱えていたのだろうと思いきや、「自分たちのバレーはいつでも『1球1球、毎試合毎試合を大切にする』というのが大事なことだったので、結果に対するプレッシャーは、たぶんみんな感じていませんでした」と川口は言う。
準決勝の東福岡戦は、大接戦の末に星城が競り勝った 【写真:坂本清】
10月の国体では先に2セットを取り、星城を崖っぷちまで追い込んだ東福岡。逆転勝利を収め、国体を制したのは星城だったが、「今度こそスッキリ勝ちたい。リベンジしてやるぞ、ぐらいの気持ちで臨んだ」と川口が振り返るように、星城に負けず劣らぬ多彩な攻撃陣で攻め立ててくる東福岡に対し、星城は選手同士でも話し合いを重ねた。
おそらくキーになるであろう相手エースのバックアタックをノーマークで打たせ、ディグで拾ってプレッシャーをかける。ブロックに跳ばない攻撃陣はその分、速く次の攻撃準備に入るという大胆な策に出た。アタッカーからすれば、ノーマークで打てる状況は圧倒的に自分が有利であるはずなのだが、ことごとくレシーブでつながれる。東福岡にとって、ブロックとはまた違う「壁」になったのが、リベロの川口だった。
「あの作戦が合っていたのかどうかは、正直、分からないです。結果的にいい方につながったけれど、もしかしたら逆になることだってあったかもしれない。でも、みんなで話し合って決めたことだったから迷いはなかったし、苦しい時、つらい時ほどチームが1つになって戦うんだ、という力がすごく出た試合でした」
最後は石川祐希(右)のバックアタックが決まり、星城が前人未到の6冠を達成した 【写真:坂本清】
準決勝に続いて接戦を制した星城が2セットを連取。24−20で迎えたマッチポイント。最後はどこにトスが上がるか。その行方をコートに立つ全員が迷うことなく、同じ思いで、エースに託した。川口がレシーブしたボールを、中根はバックセンターにトスを上げ、高い打点から放たれた石川のバックアタックが決まり、星城が連覇、そして前人未到の6冠を達成した。
あの1点のことは絶対に忘れない。川口もそう振り返る。
「竹内(裕幸)先生も、中根も『このチームを引っ張ってくれたのは石川だから、最後は石川に上げよう』って。言葉にすることはなくても、全員が同じ思いだったし、最後は祐希が決めてくれる、と思っていました」
卒業後に自身は豊田合成トレフェルサへ入団し、リベロ、レシーバーとして出場機会も年々増えた。「まだ課題ばかり」と苦笑いを浮かべながらも、来春には大学を卒業したかつての同級生たちがVリーグへとやってくる。
「負けられないですよね。今まで自分がやってきた4年間と、みんながやってきた4年間の違い、経験が出てくると思うので。みんながどういうプレーをして、自分がどういうプレーができるか。すごく楽しみです」