ベフェレンで「サッカーを楽しむ」森岡 噂が飛び交うベルギー、移籍の可能性は?

中田徹

“成功の代償”となった監督の引き抜き

チームを率いていたクレマン監督(中央)がシーズン途中でヘンクに移籍した 【Getty Images】

 まもなく冬の移籍市場が開こうとしている。

「アンデルレヒトはベルギー人選手をターゲットにするため、この冬、森岡にはオファーを出さず、STVVのデ・サールを狙う模様」、「“プレーオフ1”進出を狙うSTVVは、森岡を獲得するかもしれない。STVVの筆頭株主である『DMM.com』は日本企業で、移籍金の捻出(ねんしゅつ)は問題ない」

「夏に300万ユーロ(約4億円)で森岡を獲得しようとしたクラブ・ブルージュだが、今はルート・フォルマー、ヨースト・ファンアーケン、マーべラス・ナカンバに加え、ヨルディ・クラーシも活躍し始めて中盤が豊富。この冬のオファーはないかもしれない」などといううわさが各地で飛び交っている。

 だが、森岡より先に、フィリップ・クレマン監督がKRCヘンクへ移籍していった。小クラブのベフェレンにとって“成功の代償”と言いたくなる監督の引き抜き劇だった。

「ミーティングで監督が『そういう(引き抜きの)話が出ているのは、君たちは知っているだろう』と話し始めたので、『知っているけれど、わざわざ話しているのはなぜだろう?』と思っていたら(移籍の話をされた)。『まじかよ!?』と。

 日本だったら、ありえないことじゃないですか。解任されて、どこかのチームに行くなら分かるけれど、引き抜かれるなんて日本ではあまり考えられない。こういうのもヨーロッパならでは。監督もステップアップしていくんだと思いました」(森岡)

移籍に関する不安はつきまとうが……

 こうして監督が移籍していくと、すかさずベルギーでは「クレマン監督がべフェレンの日本人MFをヘンクに連れていってもおかしくはない」と次のうわさが立つのである。

 森岡自身もベルギーの移籍市場のダイナミズムを間近で見てきた。今季が開幕してからわずか3節、ストライカーのジーニョ・ガノがオーステンデ戦で2ゴールを決めると、そのオーステンデがすかさずガノにオファーを出し、べフェレンを出て行った。ストライカー不在となって弱ったべフェレンはアンデルレヒトでくすぶっていたイサーク・キーセ・テリンを獲得。テリンは途中出場ながらサンシーロでイタリア代表に引き分け、ワールドカップ出場を決めたスウェーデン代表の一員である。

「テリンはスウェーデン代表でプレーしていてクオリティーが高い。ベルギーはそういう選手がレンタルで小さなクラブに来るのですごいですね。これがヨーロッパの感じというか」(森岡)

 こういう環境に置かれたことで、森岡も移籍に対する意識が大分変わったという。それでも不安はつきまとう。

「けっこうシャイなので、新しいチームにいくのは怖いんです。最初の1週間は転校生の気分ですね。『誰か仲良くしてくれるかな』と。1カ月あれば問題ないんですけれど、そこまでがちょっと……。ポーランドの時は言葉がしゃべれなかったので、(慣れるのに)1カ月以上かかりました。ベルギーは(選手も)若くてノリがいいというか、英語もしゃべれるので」

 ちょうど、このタイミングでアウェーのロッカールームからガノが出てきた。森岡を見つけると「グッド・ラック、マイ・フレンド!」と声をかけていった。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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