レスターを支えるスポーツサイエンス プレミア制覇の秘訣は選手の「負荷管理」

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一番大事なのは“人”

レスターのチームスタッフとその勤続年数。優勝時には「全員が同じ方向を向いていた」という 【提供:Catapult Sports】

 さまざまなデータの取得が可能になったが、バルサム氏は「一番大事なのは“人”。そこにプロセスが加わってパフォーマンスが上がる」と強調していた。「テクノロジーは判断まではしてくれない。結局は人間が判断することを忘れてはいけない。テクノロジーやシステムにもお金を掛けるが、活用できる人材を育てることが最も重要である」というのが、講演の「キーメッセージ」だった。

 レスターでは12人のチームスタッフがスポーツサイエンスに関わっており、比較的、勤続年数の長いスタッフが多い。多くのスタッフが選手や監督と密にコミュニケーションをとり、プレーヤートラッキングやテクノロジーの重要性を伝えて、チーム内に「データ活用の文化」を作り上げていったのだ。バルサム氏は優勝時にはスタッフ、選手、コーチがひとつにまとまり、同じ方向を向いていたことを、最大の勝因に挙げた。

日本もテクノロジーに投資できる時代へ

カタパルトのソリューションを導入したクラブのコーチたち(左から湘南、山形、横浜FC) 【スポーツナビ】

 ワークショップにはJクラブからモンテディオ山形、横浜FC、湘南ベルマーレのコーチも登壇し、国内での活用状況を紹介した。それぞれ工夫を凝らしてテクノロジーを活用していたが、レスターの事例と比べると、どうしてもスポーツサイエンスに関わる人が少ない。各クラブのフィジカルコーチらが1人か2人でデータを見ているの状況だ。まだまだデータ活用の土壌が整っているとは言い難い。

「スポーツサイエンスが良い投資かと聞かれたら、私はイエスだと答える。テクノロジーと人の力を合わせていくと新たな力が生まれる。なので、テクノロジーの導入はコストではなく、“投資”と言えるのではないだろうか」(バルサム氏)

 まだJリーグ各クラブの投資状況には、それほど大きな差はない。しかし、これからはもしかするとクラブスタッフやテクノロジーへの投資の差が、クラブ力の差となって表れるかもしれない。

(取材・文:豊田真大/スポーツナビ)

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