リーグ戦の明暗が反映された関西対決 天皇杯漫遊記2017 神戸対C大阪

宇都宮徹壱

「順当な結果」に終わった準決勝

天皇杯準決勝は今季のリーグ戦の明暗が、そのまま反映されたような試合だった 【写真:アフロスポーツ】

「今日は主力を何人か欠いたこともあり、また決定力で劣る場面もあって思い通りの試合にはならなかった。後半の最後の時間帯で失点したが、諦めずにすぐに同点にできたことが今日の結果につながった。決勝進出したからには、しっかりタイトルを手にできるよう最後まで頑張りたい」(ユン監督)

「悔しいシーズンだった。自分にとってもチームにとっても、ラスト4分で勝ちを逃したのは大きな壁ですね。これを乗り越えるためにも、ヴィッセル神戸は変わっていかないといけない」(吉田監督)

 関西勢同士の対戦となった準決勝。2017年最後の会見は、それぞれの今シーズンを象徴するような言葉で締めくくられた。今季、2シーズンぶりにJ1に復帰したC大阪は、プレーオフ昇格チームで初めて残留を果たした。のみならず、シーズンをACL(AFCチャンピオンズリーグ)プレーオフ出場の3位で終え、なおかつルヴァンカップを制して現クラブ名となって初のタイトルを獲得している。対する神戸は、今季は開幕4連勝で一時は首位に立ったものの、その後は失速。ネルシーニョ監督は解任され、ポドルスキ効果も限定的なものに終わった。ある意味、今季のリーグ戦の明暗が、そのまま反映されたような試合だったと言えよう。

 主力を何人も欠いていたとはいえ、やはり戦力的にはC大阪のほうが上回っており、その意味では「順当な結果」ではあった。とはいえ、もし神戸があのまま失点せずに90分を終えていたなら、オールドファンには感慨深い決勝になっていたとも思う。吉田監督は18年前、今はなき横浜フリューゲルスのFWとして「最後の天皇杯」を戦い、99年元日の決勝では優勝を決定づける(そしてフリューゲルスの公式戦最後の)ゴールを記録した。フリューゲルスOBとして初めて、今度は指揮官として決勝の舞台に立つ。そんな快挙を、吉田監督にはひそかに期待していたのである。

 さて、決勝戦でのC大阪の対戦相手は、横浜F・マリノスに決まった。等々力競技場で行われた柏レイソルとの準決勝は、こちらも1−1のスコアから延長戦にもつれ、ウーゴ・ヴィエイラの決勝ゴールで横浜FMが競り勝った。C大阪と横浜FMというカードは、Jリーグ開幕以降では、これが決勝での初の顔合わせとなる。だが、それぞれの前身であるヤンマーディーゼルと日産自動車は1983年大会で対戦している(この時は日産が初優勝を果たした)。来年元日、埼玉スタジアムでのファイナルで実現する、34年ぶりの顔合わせ。準決勝から10日ほど間が空くので、両チームともコンディションが整った状態での好ゲームが期待できそうだ。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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