あっさりと敗れた前回のファイナリスト 天皇杯漫遊記2017 川崎対柏
スタメンが好対照となった川崎と柏
現時点で3冠の可能性を残す川崎。リーグ戦から8人の選手を入れ替えて準決勝進出を目指す 【宇都宮徹壱】
そんな中、今回は等々力陸上競技場で開催される、川崎フロンターレ対柏レイソルのカードをチョイス。ホームの川崎は今年の元日、優勝した鹿島アントラーズとともに吹田スタジアムで決勝の舞台に立っている。前回大会の両ファイナリストは今大会も手堅くベスト8に駒を進め、J1リーグでも首位鹿島を2位川崎が2ポイント差で追う展開となった。しかし鹿島は、ルヴァンカップの準々決勝で敗退。現時点で3冠の可能性があるのが、主要タイトルとは縁がない川崎とセレッソ大阪という、実に興味深い展開となっている(もっとも残り4試合で、C大阪が首位との10ポイント差を覆すのは容易ではないだろう)。
昨シーズン、「無冠とオサラバ」というクラブの目標が、結果として壮大なフラグとなってしまった川崎。あれから1年が経ち、彼らの目前には2つのタイトルがぶら下がっている。10日後にはC大阪との初タイトルを懸けたルヴァンカップのファイナルがあり、リーグ戦では鹿島とのデッドヒートもいよいよ佳境。そんな中、川崎はこの準々決勝をどう戦うのだろうか。貪欲にすべてのタイトルを目指すのか。それともタイトル獲得の確率を高める戦い方を選ぶのか。ちなみにこのカードも4日後、ホーム&アウェーを逆にして再び顔を合わせるため、両者がどういうスタメンで臨むのかが注目された。
キックオフ45分前、等々力の記者席に到着。さっそくメンバー表を確認する。アウェーの柏は、リーグ戦前節(第30節・大宮アルディージャ戦)のスタメンから8人が残った。対する川崎は、前節(サンフレッチェ広島戦)から大幅にメンバーを入れ替え、スタメンで残ったのは奈良竜樹、車屋紳太郎、森谷賢太郎、エドゥアルドの4人だけ。小林悠、中村憲剛、谷口彰悟といったレギュラークラスは、今日はベンチスタートとなっている。冷たい小雨が降り続ける中、19時30分にキックオフのホイッスルが鳴った。
ポゼッションとプレッシングでゲームを支配した柏
クリスティアーノのゴールで先制した柏。その後も川崎に付け入るスキを与えず、ベスト4進出を決めた 【写真は共同】
一方の川崎も、ワントップには清水エスパルスとの4回戦でハットトリックを決めた森本貴幸が、そしてトップ下には推進力がある家長昭博がいる。小林や中村をベンチに置いても、それなりに迫力が感じられる陣容だ。前半36分には、自陣からドリブルで持ち上がった家長が相手DFをかわしてバイタルエリアまで進出、左足から惜しいシュートを放った。柏も40分、右サイドバックの小池龍太の折り返しにクリスティアーノが反応。しかしこれは、チョン・ソンリョンに代わってゴールマウスを守る新井章太のファインセーブに阻まれる。前半は0−0で終了した。
ハーフタイム、川崎は森本を下げて中村を投入。中村はトップ下に入り、トップ下の家長が右MFに回り、右MFの知念慶はワントップに置かれた。鬼木達監督の言葉を借りると「憲剛はボールを受けることができるし、知念を前(のポジション)で見たかった」。実際、中村投入後は攻撃のバリエーションが増えたが、依然として試合の主導権を握っていたのは柏だった。そして後半16分、ついに均衡が破られる。左CKのチャンスに、キッカーのクリスティアーノはショートコーナーを選択。キム・ボギョンとのパス交換から右足で意表を突くシュートを放つと、ゴール右隅を貫いてこれが先制点となる。
思わぬ形で先制された川崎。とはいえ時間は十分にあるし、頼りになる戦力も温存してある。後半19分にはハイネルOUTで登里享平IN、さらに25分には知念OUTで小林IN。システムも家長と小林の2トップに変更して、反撃の体勢を整えてゆく。ところが、より攻撃的な陣容になったにもかかわらず、後半の川崎のシュートは登里の1本のみであった。それ以外のチャンスは、中谷進之介と中山雄太による柏のセンターバックコンビが着実にブロック。守備陣だけでなく、チーム全体が賢くゲームをコントロールし、相手に付け入るスキを与えない。結局、1−0のスコアのままタイムアップ。勝利した柏は、2年ぶりとなるベスト4進出を果たした。