実力拮抗で青学・原監督「往路は混戦」 監督トークバトル、上位校の注目点は?

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毎年恒例の「箱根駅伝 監督トークバトル」が行われ、早くも本戦に向けての探り合いが始まった 【スポーツナビ】

 2018年1月2、3日に開催される第94回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)の全エントリー選手が10日に発表。東京・恵比寿ガーデンブレイス「ザ・ガーデンホール」での記者発表会後には、箱根駅伝ファンを集めて毎年恒例となった前年度の上位校監督による「箱根駅伝 監督トークバトル」が行われた。

 進行のコーディネーターを山梨学院大の上田誠仁監督が務め、出演者として青山学院大の原晋監督、東洋大の酒井俊幸監督、早稲田大の相楽豊監督、順天堂大の長門俊介監督、神奈川大の大後栄治監督の5人が、約3週間後に迫る本戦に向け、早くも“探りあい”を繰り広げることになった。

目標は「トップ3」狙いも、本音は「打倒・青学」

青山学院大は“ハーモニー大作戦”で4連覇を目指す 【スポーツナビ】

 まず最初のあいさつでは、第81回大会(05年)以来のシードを獲得し、パネラー席に座ることになった大後監督が、「初めてのことで、大変ドキドキしています」とかわいい声で発すると、会場は大爆笑。和やかな雰囲気の中で、スタートを切った。

 最初の質問は「ズバリ! 今大会の目標順位は?」。各監督は手元にあるホワイトボードに回答を書き綴った。

 3連覇中の青山学院大・原監督はもちろん「“ハーモニー大作戦”で優勝」の文字が躍る。今季は10月の出雲駅伝で2位、11月の全日本大学駅伝で3位と、前年度三冠王者として臨みながらも優勝に届かず。その理由を「デコボコ駅伝で、バランスの悪い戦いになりました。最終的には私の責任です。力はありますが、なかなか調和が取れていない」と話す。それでも「(今シーズン)最後の箱根駅伝で、小澤征爾さんじゃないですけど、年末の『第九』を聴きながら演奏をしていきたい。そして最後はパーンと締めて、『あの鐘を鳴らすのはあなた』ですと」と年末恒例の音楽をなぞりながら、「ちゃんと“調和(ハーモニー)”が取れれば、必ず勝てます」と優勝への自信を示した。

 前年度2位の東洋大・酒井監督は「3位以内 10年連続」と掲げる。「目標は優勝争いに絡みながら最低限の3位以内。この9年間で1位が4回、準優勝4回、3位が1回の成績。10年目の節目となる今回は、最低限でも3位に絡みたい。そして、『あの勝ちを止めるのは東洋』だと」と原監督の言葉を倣って「打倒・青学」を宣言した。

 名門・早稲田大を預かる相楽監督は力強く「優勝」の二文字を掲げる。「今年で私は3年目ですが、3年目で一番スムーズに『優勝』という文字が書けました。チームの年間の目標が箱根駅伝優勝。出雲と全日本を経てビルドアップし、箱根で勝負しようという目標でやってきました。出雲(9位)、全日本(7位)は思うような成績ではなかったですが、順位は右肩上がりできているので、ここから急上昇で1位にいきたいなと思います」と箱根制覇への固い意志を見せた。「出雲、全日本と箱根は別物。全日本が終わった時点で一度リセットして、今は準備段階として、すごく良い準備ができています」と本戦に向けて上り調子であると話した。

 続いた順天堂大の長門監督は「前回以上(=3位以内)」、神奈川大の大後監督も「往路優勝 総合3位以内」と「トップ3」狙い。長門監督は「出雲の方が厳しいと思ったが滑り出しが良く(4位)、そのまま全日本、箱根といくつもりでした。ただ、全日本での失敗(12位)もあり、それが逆に『これじゃダメだ』という引き締めになり、今は少しずつ状態は良くなっています」と軌道修正が上手くいっていると話す。

 一方、全日本では20年ぶり3度目の優勝を飾った神奈川大の大後監督は、「(往路優勝は)今年1月に約束した公約。『往路優勝は私に任せろと。あとはお前たちの力だ』と。(総合優勝を目標にと)そう考えるとソワソワしてしまいます。選手は先頭を走ったことが初めての経験で、全日本の優勝も初めての経験。ソワソワしてしまっているので、私がそんなことではいけないと思い、3位以内で勘弁して下さい」と選手へのプレッシャーも気にしながらの目標設定となった。

 ただ、コーディネーターの山梨学院大・上田監督は「行間を読むことが大事。3位というのは選手にプレッシャーを与えないため。全日本を勝っているチームが箱根優勝を狙わないなんてことはないです。皆さん、『打倒・青山』に照準を合わせてきているなと感じます」と、やはり全員が“箱根優勝”こそ本音であるとした。

看板エースvs.選手層の厚さ 箱根で有利になるのは?

お互い絶大なエースを持つ神奈川大の大後監督(右)と順天堂大の長門監督 【スポーツナビ】

 続けて、この日に発表されたエントリー選手を見ながら、コーディネーターの上田監督が各大学の注目選手を解説していく。

 神奈川大については、エースの鈴木健吾(4年)と山藤篤司(3年)という前回大会の1区、2区を走り、トップを取った2人に注目する。「往路優勝をするためには盤石の布陣かなと思います。『流れの本流をつかむ』ではなく、『流れの本流を自分たちで作る』という、一歩先をいく編成。全日本でも健吾くんがいるという、エースの風格がありますから、『彼が走るとオレたちだっていける』という、駅伝の相乗効果が出て、たすきリレーの強みが出ました」と、全日本王者の優位点を指摘する。大後監督自身も「これはいきますよ! はっきり言って、1区2区で行きます」と早くも区間エントリーを明言。「1区2区というのが、この12年間、苦労していた部分。とにかくハイペースに持ち込みたい」と他大学へプレッシャーをかけた。

 続く順天堂大の解説では、16年リオデジャネイロ五輪の日本代表(3000メートル障害)にもなった塩尻和也(3年)と、前回4区区間賞の栃木渡(4年)を挙げ、「往路でこの2人がいるというのはすべてのチームにとって脅威」と話す。特に塩尻は11月下旬の八王子ロングディスタンスで1万メートル日本学生歴代4位となる27分47秒87を記録し絶好調。「この記録はものすごく価値が高い」と上田監督も絶賛。それに加え長門監督は“山上りのスペシャリスト”山田攻(3年)を注目選手に挙げる。「名前の通り、山を攻める選手。前回は『山しか走れない山田』だったのですが、最近は平地も走れるので、その分のプラスアルファが出せればいいかなと思います」と自信を見せた。

 早稲田大に関しては、安井雄一(4年)、永山博基(3年)、新迫志希(2年)の3人が注目選手。相楽監督は「全チームの中で一番部員数が少なく、30人しかいないので、半分以上がメンバーになりました。しかし、今日この時点で考えられるベストメンバーがエントリーできました。また、今年の4年生6人が全員エントリーしました。そういう意味でチームの核となる選手の働きも大事ですが、4年生がコツコツ積み上げてきた努力の結晶も力として出せればいいかなと考えています」と最上級生の地力が発揮されることを期待している。

 東洋大に関して上田監督は「1年生に素晴らしい選手がいる」と、ルーキーの西山和弥を挙げる。西山は9月の日本学生対校選手権1万メートルで順天堂大の塩尻に先着し、周囲を驚かせている。下級生中心のエントリーに関し酒井監督は「例年の東洋大と違い、下級生12人と若いチームとなっています。ここ数年、となりの原さん(青山学院大)に負けているのですが、選手層が年々、底上げがなかなかできていないところがありました。もう一度、黄金期を作るためにはチームを再構築して、今までの練習とフィジカルを変えました。それで1、2年生が例年になく練習できたので、思い切ってフレッシュなメンバー構成にしました」と理由を説明。そして6人の1年生のうち「半分以上、使いたい」と本戦でも下級生中心に戦っていくと話した。

 最後に残った青山学院大に関しては、「大きな丸を全部に付けたい」と上田監督が言うほど、選手層の厚さが際立つ。特に下田裕太、田村和希(ともに4年)の“2枚看板”を中心に、1万メートルのベストタイム上位10人の平均が28分52秒と「贅沢の極み」と言わしめる。
 ただ原監督は「いわゆる大太鼓、またはタンバリンといったようなバーンと行く選手が、残念ながらいません。しかし、16人全体の“ハーモニー”を整えれば、必ず勝てると。あとは私が小澤征爾さんのように指揮が執れるかどうか、というところに来ているかと思います」と、やはり“ハーモニー”が整えば優勝できると強調する。
「勝っている時には、『このチームに勝てるか』という驕りの発言も出てしまいましたが、苦しんだ時こそ、真価が問われると思います。また苦しんだ時こそ、勝った時に、学生とともに良い意味で涙が流せると思います。そんなゴールの鐘を鳴らしたいですね」と、勝利の鐘を鳴らすのは自分だと話した。なお、原監督がこのワードにこだわる理由は、「和田アキ子さんの50周年記念コンサートに行ってきたんです。良かったですねー」と、ここで明かされた。

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