宇野昌磨が見据えるのは五輪ではない? 「もっと攻めたプログラム」でその先を

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「勘違い」もあり、得点を伸ばせず

ファイナル制覇まであと一歩だった宇野。チェンとの差はわずかに0.5点だった 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 わずか0.5点差で、宇野昌磨(トヨタ自動車)はグランプリファイナル初優勝を逃した。それでもその表情には満足感が浮かび上がっていた。

「11月のフランス杯が(体調不良による調整不足もあり)すごく辛かったので、今回はとても楽しく試合をすることができました。たぶん期待には応えられなかったと思うので、すごく申し訳ない気持ちはあります。ただ、僕は自分のできることをやったし、結果も今の実力かなと思っています」

 ファイナル初制覇へ、千載一遇のチャンスではあった。宇野の前に演技をしたショートプログラム(SP)首位のネイサン・チェン(米国)と、同3位のミハイル・コリヤダ(ロシア)はジャンプにミスが出て、フリーとの合計得点がそれほど伸びなかった。宇野がミスを最小限に抑えれば、自ずと勝利は転がりこんでくる。

 しかし、宇野は冒頭の4回転ループで転倒。確率がそれほど高くない4回転サルコウと4回転フリップは成功させたものの、「練習では9割くらい決めている」という4回転トウループを2本続けてミスしてしまった。さらに2本目の4回転トウループが回転不足だったため、最後に予定していた3回転サルコウのコンビネーションに、3回転トウループを入れると規定違反(同じジャンプは2つまで)になると「勘違い」し、単独ジャンプにする。だが実際、宇野はそこまで3回転トウループを跳んでおらず、3回転サルコウにつけても問題はなかった。

 演技後の取材対応中にそのことに気づいた宇野は、「冷静に考えてみると跳んでもよかったんですね」と、苦笑いを浮かべた。合計286.01点の2位。0.5点差ということを考えれば、もったいないミスだった。

「試合前の調整が甘かった」

失敗の原因について、宇野と樋口コーチは同じような見解を示す 【提供:坂本清】

 宇野はこうした失敗の原因を、演技前の調整に求めた。前の滑走者であるコリヤダの演技が終了し、点数の発表を待つ間に宇野がリンクに登場。そのとき、トリプルアクセルは跳んだものの、4回転トウループの感触は確かめなかった。調子が良いこともあったし、練習でほとんど失敗しないこともあって、あまり心配していなかったという。

「今回それだけは後悔しています。4回転トウループは、ジャンプの感覚が分からない失敗でした。直前に1、2本跳んでいたらそのときはたとえ転んだとしても、本番であのような失敗はしなかった。普段の練習でも同じ失敗を最初に1、2本することがあるので、試合前の調整が甘かったなと思います」

 宇野を指導する樋口美穂子コーチも、同じような指摘をする。

「今大会は4回転サルコウをフリーのプログラムに組み込んだことによって、6分間練習がすごく忙しかったんですね。やることがいっぱいあって、トウループはあまり良いジャンプがないまま終わってしまいました。同様の失敗を本番でもやったので、いろいろなことの持っていき方が課題だと思います」

 こうしたミスは、ジャンプ構成の難度を上げたからこそ起きたとも言える。今回は成功したものの、あまり確率の高くない4回転サルコウを外し、無理のない構成にすれば、6分間練習でももう少し余裕を持って、他のジャンプをチェックできる。だが、樋口コーチは「今後も同じ構成でやっていく」と明言する。なぜならば、宇野がそれを望んでいるからだ。

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