宇野昌磨、抜群の安定感を支える反復練習 転倒もSP100点超え、更なる成長への渇望

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「珍しい」転倒に演技時間のオーバー

演技直後、珍しいミスに思わず舌をペロリ。ミスはあったものの宇野昌磨はSP2位と好スタートを切った 【坂本清】

 宇野昌磨(トヨタ自動車)は最後のポーズを決めると、ペロリと舌を出した。

「珍しい失敗でした。練習でもああいう転び方はしないので、試合ならではのミスだったなと思います」

 宇野がそう振り返ったのは、7日に開幕したグランプリファイナル男子ショートプログラム(SP)で2つの4回転ジャンプを成功させたあとの、最後のトリプルアクセルだ。

「最初に踏み切ったときに『ちゃんと踏み切れていない』という印象を受けて、いつもより体を締めたんですけど、そうしたら回り過ぎたのか、着地の地点が違って氷がなかったんです(笑)」

 その言葉通り、着氷した瞬間に右足が滑り、仰向けに転がるという「珍しい」転倒の仕方だった。

 さらには11月のフランス杯以降、「ステップが間に合わなかった」という理由で曲を延ばしたことにより、演技時間が規定(2分40秒プラスマイナス10秒)をオーバー。転倒と合わせてマイナス2の減点となった。宇野も「点数が高いことより、マイナス2点に驚きました」と苦笑いを浮かべるしかなかった。

 それでもSPの得点は101.51点。演技構成点の5コンポーネンツは全て9点台をマークするなど、日本男子としては唯一の出場となったGPファイナルで、さすがの存在感を見せつけた。

得意ではないからこそ練習を繰り返す

大崩しないのが宇野の持ち味。得意ではなかったジャンプは反復練習で強化してきた 【坂本清】

 ここ最近の宇野の安定感は群を抜いている。自身にとって今季のGPシリーズ初戦となったスケートカナダでは、昨季から数えて5戦連続となる合計300点超えで優勝。300点の大台突破は宇野を含めて5人しかいない中、コンスタントにその得点を超えてくる波のなさは、特筆に値する。続くフランス杯でも、インフルエンザによる練習不足がありながら、2位に食い込んだ。

 大崩れしない安定感は、そのまま地力の高さにつながる。今大会のSPでも転倒とタイムオーバーという2つのミスがあったにもかかわらず、得点は100点を超えた。スピンやステップはすべてレベル4を獲得。出来栄えを表すGOEは冒頭の4回転フリップに1.57点、後半の4回転トウループ+3回転トウループのコンビネーションにも2.00点がついた。前述したように5コンポーネンツは全て9点台と、演技構成点は6選手中トップだ。

 もっとも、こうした宇野の安定感は練習によって培われたもの。表現力には元から定評のある宇野だが、ジャンプはそれほど得意ではなかった。トリプルアクセルと4回転トウループを初めて成功させたのも、わずか3年前だ。立て続けに2つのジャンプを習得できた要因を、当時の宇野は「とにかくたくさん練習したので、その成果だと思う」と答えていた。得意ではなかったからこそ、反復練習を続ける。その積み重ねが今の宇野を形成している。

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