熾烈極まるフィギュア五輪代表争い GPシリーズで見えた候補者たちの現状

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羽生負傷も代表の座は揺らがず

羽生はたとえ全日本選手権を欠場したとしても、平昌五輪代表に選出される可能性は高い 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 11月11日にNHK杯の男女シングルが終わり、平昌五輪の出場権を争う有力選手がグランプリ(GP)シリーズで1試合ないし2試合を消化した。その結果により、GPファイナルに進出する可能性がある者、全日本選手権に照準を合わせる者とに分けられた。ここまでのGPシリーズの状況を振り返ると、日本勢にとってはあまり芳しくない成績となっている。

 まず五輪の出場枠が3つある男子は、エースの羽生結弦(ANA)がNHK杯の公式練習で負傷し、大会を急きょ欠場。前人未到の5連覇が懸かっていたGPファイナル出場の望みが断たれた。本人は「治療に専念し、全日本に向けて頑張ります」というコメントを残しているが、まだ全治は明らかになっていない。平昌五輪の選考基準には「世界選手権3位以内の実績がある選手が、けが等で全日本に参加できなかった場合、選考することがある」とあり、たとえ全日本選手権に出場できなくても、実績十分の羽生が選ばれる可能性は高い。

 しかしその場合、五輪が復帰戦となるため、試合勘に不安は残る。ましてや4回転ルッツをはじめ、4種類の4回転を5本入れる構成のフリースケーティング(FS)は、難度だけではなく体力面でも限界を超えるチャレンジ。試合を重ねることでプログラムの完成度を高めるつもりだった羽生にとって、この負傷は想定外のアクシデントだっただろう。

 対照的に、羽生とともに平昌五輪のメダル候補である宇野昌磨(トヨタ自動車)は、すごぶる順調だ。スケートカナダでは2位に40点差をつける合計301.10点で優勝。これで今年3月のプランタン杯から5戦連続の300点突破と抜群の安定感を見せている。17日から行われるフランス杯の結果次第だが、GPファイナルに進出する可能性は高い。

男子3枠目争いに友野が浮上

男子の3枠目争いに名乗りをあげた友野 【写真:坂本清】

 男子は羽生、宇野の五輪出場が有力視される中、焦点となるのは3枠目の争いだ。昨シーズン、世界選手権の代表に選ばれた田中刑事(倉敷芸術科学大)は、ケガのため初戦のロシア杯を回避。3戦目の中国杯では、ショートプログラム(SP)で自己ベストを更新(87.19点)する演技を見せたが、FSでは「練習不足がそのまま出た」とミスが相次ぎ、7位に終わった。

 世界選手権とGPファイナルに出場した経験を持ち、実績では羽生、宇野に次ぐ無良崇人(洋菓子のヒロタ)はスケートカナダで最下位に沈んだ。次戦に残すスケートアメリカでどこまで立て直せるか。10月の東日本選手権を制し、NHK杯にも出場予定だった村上大介(陽進堂)は、急性肺炎のため大会欠場を余儀なくされている。

 候補選手がそれぞれ決め手を欠く中、NHK杯では村上の代わりに出場した友野一希(同志社大)が躍動した。4回転こそクリーンに決められなかったものの、SPと合計得点で自己ベストを更新。「五輪に行きたいという気持ちがこの大会に出場して、さらに大きくなりました。少しずつ近づいてきているとは思いますし、しっかりその目標に向かって、今回見つかった課題や勉強したことを全日本選手権で出したい」と意気込む。今季シニアデビューのまだ19歳と若いだけに、GPシリーズという大舞台で得た自信が急速な成長を促す可能性もある。

 男子は宇野以外、GPファイナル進出の芽が断たれているため、3枠目の争いは全日本選手権の結果次第。羽生、宇野を除いた最高位の選手が平昌への切符をつかむことになるはずだ。

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