宇野昌磨が見据えるのは五輪ではない? 「もっと攻めたプログラム」でその先を

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今季1年はあくまで通過点

宇野は「飛べる4回転はどんどん組み込んでいく」と語った 【提供:坂本清】

 宇野がここ数シーズン、一貫して掲げているテーマは「攻める」というもの。勝つために無難な構成にするのは、そのテーマから外れることを意味する。五輪をはじめとする重要な大会では勝負に徹するべきという意見もあるが、宇野はそれより先を見据えている。

「今季に特別何かを懸けている思いはないですし、あくまで自分が成長する通過点だと考えています。五輪が大きい試合だということは自覚していますけど、そこに照準を合わせるのではなく、もし五輪に出られるのであれば、その経験を生かして今後の成長の糧にしたいと思っています」

 今大会も0.5点という僅差で敗れたにもかかわらず、宇野は悔しがるどころか、むしろすがすがしい表情をしていた。それは4回転サルコウに挑戦して、自分が今できること全てを出し切り、「攻めた」結果でもあるからだろう。宇野は、今後も4回転ジャンプを多く取り入れていくつもりなのかという問いに対して、こう答えている。

「跳べる4回転ジャンプはどんどんプログラムに組み込んでいこうと思っています。安定性に欠けるところはありますが、今季完成させた自分を見せたいとは思っていません。むしろ成長していく自分を皆さんに見せたい。だからもっと攻めたプログラムにしたいと思っています」

順位や得点より大事な宇野の信念

 ちょうど2年前の全日本選手権で、SP2位につけていた宇野は、フリーの最終ジャンプで予定とは違う4回転トウループに挑んだ。しかしそれは2回転となり、3位の無良崇人(洋菓子のヒロタ)に差を詰められた。当時2つしかなかった世界選手権の枠を考えれば、あえてリスクを冒す必要はなかったのだ。ただ、そのときも今大会と同じように笑顔を見せていた。

「攻める気持ちで、逃げずに終われたことに満足しています」

 逆に昨シーズンの国別対抗戦のSPでは103.51点という高得点をマークしながら、悔しさをあらわにした。そのときの言葉は「最後まで攻め切ることができなかった」。宇野にとっては、順位や得点よりも自分の信んじる道を進んでいくことが大事なのだ。そうやって、世界のトップを争うスケーターに成長してきた。

 五輪はもちろん出たいと思っているが、それが最終目標ではない。そもそも昔から具体的な目標は定めてこなかった。

「僕はあまり先のことを計画立てて実行していくタイプではない。今の気持ちとしては、まだできなかったこと、もっとできることがいろいろありますけど、とりあえずこの試合に関しては満足しています。それはたぶん(攻めるという)自分の演技ができたから。後悔しているのは直前の調整だけなので、それは次に生かしていきたいと思います」

 2週間後、平昌五輪の代表選考会となる全日本選手権が行われる。プレッシャーの懸かる大一番だが、宇野はきっとその舞台でも攻めていくのだろう。

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)

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