【KNOCK OUT】金原正徳がキックに挑戦した理由 不可思戦は「格闘技人生の集大成」

長谷川亮

食って掛かってきた不可思は「嫌いじゃない」

ケンカを売られたのは初めてだと話す金原(左)。そういう選手は「嫌いじゃない」と若手の突き上げは歓迎だった 【写真:SHUHEI YOKOTA】

――それが1回で終わらず、今度はRISE王者である不可思選手との試合につながったと。

 試合をして終わりと言ってもアマチュアではないので、自分の中でも盛り上げなきゃいけない気持ちもあるし、どうせ次があるんだったら現チャンピオンとやってみたい気持ちがあって、名前を挙げさせてもらいました。それで今回いいなと思ったのは、俺が名前を出したのはもちろんあるんですけど、「なんだテメぇ、フザけるなよ」みたいな感じでケンカを売られたのって初めてなんです。逆にMMAで田中ノリピー(路教)とか水垣(偉弥)くんとか俺みたいにUFCをリリースされた組を、もっと若手が名前を出して「オレとやれ」って言っていけばいいと思うんですけど、あんまりMMAではなくて……。RIZINやUFCに出たい人たちからすれば、俺たちなんて一番いいエサだと思うんです。なのでそういう意味で不可思選手は食って掛かってくるじゃないけど、ああいう感じは嫌いじゃないです。こっちもやってやろう、フザけるなっていう気になるし、こういうバチバチの感じは久しぶりです。

――MMAでも若い選手が台頭してきていますが、まだ金原選手や名前の挙がった選手たちの域まで達していない印象です。

 MMAはどうしても30代・40代のおじさんたちが引っ張っちゃっているので、10代・20代の人たちがどんどん頑張ってもらいたいですよね。この間「KNOCK OUT」の会見に行った時もみんな20代前半で若いんですよ。だからすごく代謝がされているなって思います。K−1を見てもそうだし。ああいう20代の選手がどんどん出てこないと格闘技界は回っていかないと思うし、数字的なことはよく分からないですけど、盛り上がりや熱に関しては全然キックの方が感じています。

――MMAと立ち技、両方の世界を体験した金原選手ならではの実感ですね。いろいろな選手がいる中で不可思選手の名前を出したのはどうしてだったのでしょうか?

 俺、あまり格闘技を見ないので選手の名前もそんなに知らなくて、「KNOCK OUT」に出るかもしれないってなった時に一度見に行って、不可思選手は若くてすごくいい選手がいるなって思って、体重も同じぐらいだったから、一緒に見ていたトレーナーにやってみたいな、なんて話をしていたんです。選手としても男としても魅力があったんでしょうね。それでこういう流れになって、運命じゃないですけど巡り合わせだと思います。自分で言うのはなんですけど、普通のMMAの選手がキックに挑戦するのじゃなくて、日本のトップを取って、トップの選手として挑戦するのがいいなと思うし、こういう盛り上げ方は自分にしかできないことだと思います。MMAファンにも俺の試合を気にしてくれている人たちが結構いるので、普段キックを見ないMMAファンの人も“あいつどれぐらいやるんだ?”って興味を持ってくれたらいいし、逆にキックファンの人がMMAを見てくれればいいとも思います。そういう垣根じゃないですけど、それをつなぐ橋の1つになれればいいなと思ってます。

王者・不可思より「格闘技歴は俺の方が全然長い」

不可思戦は「格闘技人生の集大成」と話す金原。キックボクシングに挑戦した生き様を見せる 【スポーツナビ】

――早5カ月前となりますが、キックボクシング第1戦となった中尾満戦を振り返っていかがでしょうか?

 すごくいい経験になりました。ただ前回は誰かに習ったり、キックボクシングの選手とスパーリングをすることもなく、これじゃダメだっていうのを身をもって体験したので、今回は(同じ両国大会に出場する重森陽太が所属している)伊原道場稲城支部へ練習に行かせてもらってチャンピオンたちとトレーニングさせてもらったり、いろいろアドバイスを受けたりしています。ほかにも出稽古、スパーリングに行かせてもらったり。俺がキックボクサーになっても勝てる訳がないので、自分のいいところは消さずに残して、前回の試合で感じたよくない部分を修正しながら取り組んでいます。

――前回の試合で感じたMMAの打撃と異なる部分を教えてください。

 MMAはグローブが小さいので、そんなに強く殴らなくてもタイミングと角度がよければ倒れるんです。でも、キックボクシングでそれをやったら全然倒れなくて。感触があって倒れるパンチも何度か当たったんですけど、中尾選手は全然倒れませんでした。そこは自分でもすごく勉強になって、しっかり握って強く打つ、しっかり踏み込まなきゃいけないなっていうのは感じました。今は強く打つことでバランスを崩したり疲れも早くなってしまうので、いろいろ考えながらやっています。

――では10日の不可思戦では7月とはまた違った金原選手の動きが見られそうですね。

 自分の中では結構手応えを感じているので、信用するかしないかは分からないですけど楽しみな部分はあります。「どれぐらい強いのかな?」ってそんな気持ちの方が大きいです。チャンピオンがどれぐらい強いのか。自分も負けていない強さがあると思うので自信もありますし、向こうも「舐めるなよ」っていう気持ちがあると思いますけど、ワクワクする感じがあります。

――それではそんな不可思戦へ向けての意気込みをあらためて最後にお願いします。

 今回は金原正徳が今までやってきた格闘技人生の集大成です。MMAの中で培ってきたもの、経験が生きると思うので、キックボクシングだから競技が違うっていう気持ちは自分の中ではありません。キックボクシングは向こうの方が先輩かもしれないけど格闘技歴は俺の方が全然長いので、そういう意味で「まだまだ小僧には負けられねぇよ」っていう気持ちが強いです。本当に今回で終わってもいいし、次は何月に試合しよう、どうしようっていうのは一切ないです。この試合が全部で、それぐらい懸けています。12月10日に生きなきゃいけないので毎日一生懸命頑張れていて楽しいです。彼のおかげだし、キックボクシングのおかげなので感謝しています。そういう意味で全部を見てほしいです。

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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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