付属高、花園組、無名選手で強くなる 「慶応ラグビーは意欲がすべて」
「金沢HCは学校に関係なく練習態度も見てくれます」
鋭いタックルを決めるFL中村。金沢HCは「性格がプレーに出ている」と高く評価 【斉藤健仁】
中村は中学まではソフトテニス部で、高校でも続けようと思っていたが、担任の先生がラグビー部の顧問で部員が15人ギリギリだったため、半ば強引に勧誘されて高校から楕円球の門を叩いた。高校は部活をしていたため、大学受験の教科数の少ない私学に絞り、当初は指定校推薦で早稲田大を狙ったが、評点平均が4.3まで0.02足らず、慶応大の文学部の自己推薦入試を経て、なんとか現役で合格した。
当初は大学でラグビーをやるか悩んだが、「他にやることなかったですし、高校時代、花園予選はベスト4で負けて悔しかった。大学で続けたら先生が喜ぶかな……」と思い、ラグビーを続ける決心をした。現在の体重は85kgだが大学入学時の体重は68kgで、1年生は当然Fグレードからのスタートだった。「金沢HCは学校に関係なく練習態度も見てくれますし、『お前のプレーは教科書みたい』と言われるのですが、Fで基本スキルを積み上げることができ、そこでの経験が今は生きています」と振り返った。
努力の虫だった中村は2年生でCDチームに上がり、3年生でBに、副将に指名された4年生になって始めてAチームに上がり、今シーズンの開幕戦となった筑波大戦で関東対抗戦初出場。豊富な運動量で攻守に渡って存在感を示すと、トライも挙げて勝利に貢献し、全試合に先発出場を続けている。
チームメイトの間で「外部出身者だから頑張ろう!」というような話にはなることはないというが、春からはラグビー部を持つ会社に一般就職する中村は「僕が頑張ることで、高校の後輩も大学でラグビーを続けようと思ってくれるかもしれないし、無名校の子も『慶応で頑張る』と思ってくれるかもしれない」と気概を持って、残りの試合を全力で駆け抜ける。
金沢HC「中村のような子を増やすしかない」
「慶応に入って来てくれた子を、責任を持って育てていかないと勝てない」と語る金沢HC。 【斉藤健仁】
また金沢HCも、現在、試合に出るメンバーに内部進学者が多かったことについては「それが慶応のリクルートの現状です」と指摘し、「落ちるかもしれない推薦入試にチャレンジして、慶応に入って来てくれた子を、責任を持って育てていかないと勝てない。中村のような子を増やすしかない」と今後も下のグレードの選手を鍛えることでチーム力の底上げを狙う。
国立の筑波大ですら毎年、スポーツ推薦で5人の選手を獲得していること、そして入試のレベルを考えると、慶応大が他の強豪校と肩を並べていることは特筆に値するだろう。ただ、いずれにせよ、慶応高などの内部進学者と外部から狭き門をくぐってラグビー部に入部してくる選手が競争し切磋琢磨して、レベルを上げていることは間違いない。
慶応大の目標は、毎年、ぶれることはなく大学日本一である。今年もチームのポテンシャルを感じさせており、トップに立つ可能性も秘める。もっと「慶応でラグビーをやりたい!」という高校生を増やすためも、チーム一丸となって戦い、大学選手権での躍進はあるだろうか。