ラマスHC「フィジカル面の改善が必要」 Bアナリストが聞く、代表強化ビジョン

スポーツナビ

男子日本代表のラマスHC(左)と、Bリーグ公認アナリストである佐々木クリス氏の初対談が実現した 【スポーツナビ】

 来る11月24日、2019年のワールドカップ(W杯)に向けた男子日本代表のアジア1次予選がスタートする。今大会からは予選がホーム&アウェー方式となり、またリーグ戦の「合間」で断続的に開催される長丁場となった。

 バスケットボールは他競技と違い、五輪の「開催国枠」が自動的に与えられない。日本は20年の出場権を得るため、W杯予選と本大会でFIBA(国際バスケットボール連盟)に実力を示し、それを自力でつかむ必要がある。

 もちろんアジアオセアニア地区の7枠を勝ち取ることは容易でない。日本は自国開催の06年を除くと、1998年の大会を最後に予選敗退を続けている。1次予選で同組となったフィリピン、オーストラリア、台湾の3カ国を見ると、フィリピンとオーストラリアはFIBAのランキングが日本より上。台湾は6月の東アジア選手権で日本が敗れているチームだ。

 そんな難関に挑む男子日本代表のヘッドコーチ(HC)が、17年7月に就任したフリオ・ラマス氏。アルゼンチン代表の指揮官を務めた国際的指導者だ。04年のアテネ五輪で金メダル、08年の北京五輪は銅メダルを獲得した強国の一線に立っていた「名将」でもある。日本バスケットボール協会の東野智弥・強化委員長が三顧の礼をもって口説き落とし、彼の就任に漕ぎつけた。

 今回はBリーグ公認アナリストである佐々木クリス氏が聞き手となり、ラマスHCに日本バスケの現在と未来について語ってもらった。

ラマス「日本代表に合ったスタイルを作っていく」

「今の日本代表が必要とし、今後の日本代表に必要となっていくものを植え付けている」とラマスHC 【Getty Images】

――本日はお会いできて光栄です。僕もアルゼンチンとドリームチーム(米国)の対戦は見ていました。(アルゼンチン代表やNBAで活躍した)マヌ・ジノビリやルイス・スコラも大好きな選手の1人です。まずそんなラマスさんの日本代表におけるコーチングスタイルをお聞かせください。

 私には代表を指導した経験が何度もありますが、新しいプロジェクトごとに新しいスタイルを確立していくという考えでいます。日本代表を指揮することになったわけですから、日本代表に合ったスタイルを作っていこうと考えています。私のスタイル、私のフィロソフィーだけではなくて、今の日本代表が必要としているもの、今後の日本代表に必要となっていくものを植え付けているところです。

――日本のジノビリやスコラを作るのでなく、日本人の中で日本のゴートゥーガイ(編注:頼りになる大黒柱)が台頭できるように指導するということですね?

 その通りです。私はそういった選手とも関わりましたが、そういうモデルをそのまま日本に持ち込もうということではありません。それは無理ですし、選手たちにうそをつくことになってしまいます。過去に指導した選手については「過去」だと思っています。まず「今」を考えて、日本をできるだけ良くする。そして、その「未来」も考えています。

 比江島慎(シーホース三河)、田中大貴(アルバルク東京)、渡邊雄太(ジョージ・ワシントン大)、八村塁(ゴンザガ大)……。彼らに自身のベストを出してほしいと思っています。比較は不必要ですし、彼らにも一切求めていません。

――日本の選手たちを指導するにあたって、どのようなアプローチをとっているのですか?

 練習一つ一つに全力を出してもらうというのが、私の方針です。インテンシティーを常に保って、競争力の高いメンタリティーを植え付ける。そしてそれをチームで共有するという考えに基づいて、選手にメッセージを伝えています。各メニューでは「出し切る」ことを常に求めています。試合も練習も、コートの中に魂を置くくらいの気持ちで臨むようにという話をいつも伝えています。

――「コーチアブル」という言葉もありますが、この数カ月で日本選手は吸収力、学ぶことに対してどれだけのレスポンスを見せていると感じていますか?

 選手たちのレスポンス、新しい知識を吸収するレスポンスは良いです。練習に取り組む姿勢、やる気は見事です。インテリジェンスな選手ばかりです。これから学ぶことも多いですが、彼らがすでに知っているものを発見して、少し驚いています。タクティクス(戦術)面の知識は、すでに一定のレベルに達していると思います。

 姿勢や戦術面以外で求めているものはフィジカル面の改善です。身長の向上は必要としている部分です。あとは競争力を高めること。われわれはFIBAの世界ランキングを見ると50位(2017年10月11日発表時点)ですけれど、上に位置する強豪国と対戦して、そういう競争から成長を遂げると信じています。

――やはりサイズ不足は気になる部分ですか?

 正直に言いますが、サイズアップは今後の日本バスケ界が成長するために変化を必要としている部分です。Bリーグも代表チームも、平均身長を上げなければいけません。そのためにはU−14、U−15から始まるアンダーカテゴリーでの取り組みが重要です。

 自分の基準で考えると、Bリーグの中でも身長の高いチームはせいぜい3チームくらいだと思っています。その他のチームはペリメーター(編注:3ポイントライン付近の外角)型の選手でも、190センチを超えていないようなクラブが結構ありますね。その位置なら190センチ以上はないといけないというのが私の考えで、現状では高さが不十分です。

 日本バスケをもう一つ上に導くために優先的に考えていることは、平均身長をまず上げること、競争力を高めることです。

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