ラマスHC「フィジカル面の改善が必要」 Bアナリストが聞く、代表強化ビジョン

スポーツナビ

ラマス「Bリーグが成長すれば代表も強くなる」

競争力を強化のキーワードに挙げたラマスHCは、「Bリーグが成長すれば代表も強くなる」と断言 【スポーツナビ】

――「競争力」が強化のキーワードになっていますが、それを上げるためには何が必要だとお考えですか?

 フィジカル面でのレベルアップは求められるところで、リング上(高い位置)でプレーすることが第一です。ゲームの知識は持たないといけないというのはもちろんですね。

 加えてそれを厳しい局面で、常にそのレベルを保つという粘り強さを持たないといけません。だからこそ強豪国との対戦を増やさないといけません。強豪国とは常に五輪やW杯に出場しているチームのことです。そういった相手との対戦を繰り返すことは、私たちの成長のキーになるところです。

――数字的な話になりますけれど、Bリーグの昨シーズンと今シーズンを比べるとピック&ロール、もしくはピック&ロールからのパスアウトで終えたプレーの頻度が24%から29%に上がっています。これはあくまでもひとつの指標にすぎませんが、昨年のアルゼンチンリーグと同じくらいの数値です。

 あくまでも私は代表の指揮官として招いてもらっています。代表にそれを浸透させるつもりはありますけれど、Bリーグについては各HCの仕事です。関わりはしますけれど、そこは自分が手を出したらいけないところだと思っています。

 Bリーグは今いい成長を遂げており、良い道を歩んでいると思います。5年後には世界の中でも今より上の位置にいると予想しています。エンターテインメントやプレゼンテーションの部分は、すでにいいところにあります。各クラブのマスコットキャラクターも私はかわいいなと思っていました。NBA以外では一番いいかもしれませんね。

 成長が必要なのはコート内です。1年ではできません。5年はかかります。Bリーグがこのまま成長していったら、それに伴って代表も強くなります。国内での競争力が高まるということは、代表強化とイコールです。アルゼンチンで指揮を執ったときも、スペインで指揮を執ったときも、同じ結果を目の前で見ているので断言してもいいです。

 もちろんこれから日本人のNBA選手を増やすことも大切で、そうすれば夢が広がります。その夢が代表にエネルギーとして注入されて、もっと強くなると思います。

クリス「代表が強くならないと市民権を得られない」

「代表が強くならないと市民権を得られない」とラマスHCに切り込むクリス氏 【スポーツナビ】

――それは代表からリーグに浸透していくものなのか、リーグが押し上げて代表が強くなるのでしょうか。代表が強くならないとスポーツが正当な市民権を得ることは難しいと思いますし、だからこそみんな代表に注目しているし、「後押ししたい」というファンの思いも強まっています。

 代表が結果を残すことで、国内での注目度が高まりファンが増えるというのは言うまでもないことですね。もちろんそれが容易でないことも事実です。競争力を高めるという堅い決心をもってやらないといけません。仮にフィリピン戦がうまくいかなかった、オーストラリア戦がうまくいかなかったからといって終わりではない。次の日には立ち上がって、同じ目標に向かって走り続けなければいけません。

 ただ、スタッツのパーセンテージとか、タクティクスで何かができるという考えはやめた方が良いと思います。先ほどピック&ロールのパーセンテージの話もありました。例えばそれがNBAのチームと同じスタッツだったとします。ただそういうスタッツがあるからといって、NBAに勝てるわけではないですから。

 バスケはオポジッション(編注:相手に対抗する)ゲームです。われわれは相手にやってほしくないことを防ぎ、相手はわれわれがやってほしくないことをやる。そういう駆け引きがゲームの肝です。対戦相手が自分たちよりレベルが高い場合は、単純にピック&ロールをしてもレベルの差で上回られてしまいます。何が必要かと言うと、国際レベルで「つば競り合い」をやらないといけない。

 先ほど言った国際レベルの試合を、せめて1年に10試合はやらないといけないと思います。それは最低限です。また、招集した選手は全員呼べないといけません。リング上でのプレーを常にやらないといけませんし、そのためには(米国の大学に留学してなかなか代表の活動に参加できない)渡邊や八村といった選手がもっとチームに参加できる環境を整えていかなければならない、というのが私の考えです。

――「年間10試合」とおっしゃいましたが、それを実現する方法についてはいかがですか?

 そのためにもJBA(日本バスケットボール協会)が頑張って動いているところです。もちろん相手の事情もありますし、日程面の調整が必要です。相手の国内リーグがストップした状態で、やっと試合ができるという話なので、それがうまくいくように調整してもらっています。20年には東京五輪がありますけれど、その前には少なくとも20〜30試合は国際試合を経験しているというノルマを立てています。

――JBAの仕事でもあると思いますが、ラマスさんが「ノルマ」と言う理由は何ですか?

 ノルマという言い方は違うのかもしれませんが、成長につながるためのキーになってくるところだと考えています。それを実現するために、JBAの皆さんと一緒に頑張っています。世界のバスケットボール界を見れば、やはりヨーロッパや南北アメリカが先をいっています。彼らと対抗する、同じレベルで競争するつもりがあるなら、彼らとの試合数を増やさないといけません。

<後編に続く>

(リード・構成:大島和人)

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