教育現場に「ラグビー」浸透中 協会理事が語るこれからの普及育成プラン

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提供:(公財)日本ラグビーフットボール協会

『スクール・ウォーズ』の放送がなかった県は競技人口が少ない

2015年の経験を踏まえて、次の波を逃さないよう協会は地道な活動を続けている 【スポーツナビ】

 山本氏の講演に続いて、来場者と山本氏の質疑応答が行われた。以下はその要旨。

――2015年W杯の日本代表の活躍でラグビー界が盛り上がったが、当時はラグビースクールなどの受け皿が不十分で、チャンスを逃したのではないか。

山本 当時慌ててやりまして、最近は「日本全国どんなラグビースクールがあるか」などの情報を遅ればせながら出しています。地道な活動かもしれないですが、入るところがない、また入ってみたら酷い集団だった、といった状況をなくすことがまずやらないといけないと思います。

――他国のラグビー協会、もしくは国内の他スポーツ団体などと連携や情報共有などは行っているのか?

山本 日本ラグビーフットボール協会では今年、普及だけを専属にする職員を3名採用しました。彼らがアジアや世界の指導者たちと連携しています。国内では他競技団体の取り組みを参考にしています。

――サッカー、バスケットボールなど他のプロスポーツがあるなかで、ラグビーはどうアピールしていくのか?

山本 日本代表、サンウルブズ、トップリーグをどう色分けするのか、皆さんが歯がゆく、一番のご関心のところだと思います。今そこに動き出しがあり、いろいろな方向を一つにはっきり整理して、2019年に向けて強化していこうとなっています。

山本 例えばトップリーグ。Jリーグが地域密着、Bリーグがエンターテインメントならトップリーグは何かと。ここを今『トップリーグNEXT』という形で変えていくことになっていて、今まさに議論を進めている最中です。

――ラグビーは日本国内で人気のある地域とそうでない地域の差がある。

山本 京都が一番で、1000人中3人がラグビーをやっています。少ないのは山形県や長野県、福井県。人口比で見ても少なくて、1万人に4人とかそれくらいですね。

村上 山形県でラグビーが普及しなかった理由として言われている面白い話があります。『スクール・ウォーズ』の放送がなかったという。これは本当なんです。山形県の人は『スクール・ウォーズ』が一番流行っている時に見ていなかった、それで高校ラグビーも全然増えなかったと。

――普及にかかる年間の費用は?

山本 残念ながら全体予算の10パーセントはいっていないですね。

――普及のためにラグビーの本当の面白さを言葉で伝えられる人を戦略的に増やして欲しい。

山本 そうですね、代表選手の皆さんにも活躍してもらいたいと思っています。先ほどの戦略計画「BIG TRY」という言葉を考えているときは協力していただきました。また代表選手の方々の言葉というのもどんどん発信させていただけたらいいなと思いました。

小学生年代での勝利至上主義をどう防ぐか

女子特有の怪我を防ぐため、サクラセブンズの予防プログラムを全国へ導入する試みが始まっている 【写真:ロイター/アフロ】

――女子ラグビーについては何か特別な方策はあるか?

山本 女子ラグビー普及の課題には2つの山があると言われています。小学生でコンタクトラグビーが入り始めるころと、中学校に上がるタイミング。最初の課題は、まずコンタクトが好きかどうかというところですね。中学校での課題は男女をどうするのかというところで、全国大会は今年から男女別にして、女子がやりやすい環境を作りました。

 もうひとつ、女子特有の怪我というものがあります。止まるときなどに前十字靭帯の怪我につながることが多いですね。予防策として、サクラセブンズ(女子7人制日本代表)が使っていたプログラムを今年から全国の学校に落とし込みました。

――タグラグビー、タッチラグビーの普及活動を中心に行っていると、フルコンタクトのラグビーに対する拒絶感が生まれないか?

山本 性格もあるでしょうし、100パーセントそのままフルコンタクトのラグビー選手になるのかというと、それはないと思っています。でもその人達は観客やレフェリーになっていてくれればいいかなと思っています。

 入り口としてタグラグビーを用いているのは、まず子ども達は安全が一番大事で、怪我をしないようにというところですよね。いきなり「当たる」と入ってしまうと(競技にのめり込む前に)ストップしてしまう。最初の関門を突破していくというのが大事だと思います。

――近年、小学校のラグビーが勝利至上主義になっていると感じている。

山本 誰が「勝利至上主義」にさせているかがポイントだと思うんです。子どもが勝利至上主義になるのは周りの大人の責任ではないでしょうか。コーチとして参画していると勝たせたいという気持ちが必然的にあると思います。でも、誰のための勝負なのかと。

 例えば、試合中に指導者の声掛け禁止というルールを決めてやっている大会もあって、大変素晴らしいと思います。勝ち負けを決めるのは子どもたちなのだから、指導者が外から声を出すなと。こうした仕組みを作ることによって、勝利至上主義と言えなくなってくるのではないかなと思います。

――これまで支えてきた従来のファンと新しいファンをどう組み合わせていく?

山本 サンウルブズは試合前にコンサートをやりましたよね。あれはこれまでのラグビー界では考えられないこと。でもプロフェッショナルな集団であるからできるわけです。そのように選択肢が増えているので、それぞれの方がそれぞれの方法で見つけていくのが大事ではないでしょうか。

あなたにとってラグビーとは?

山本氏にとってラグビーとは「常に課題を出してくれているもの」 【スポーツナビ】

 いつも目の前にあって、広がりがあって、常に課題を出してくれているものです。そして自身の内面を充実させてくれるものであり、羅針盤であるかもしれません。

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