19年以降の日本ラグビーはどうなる? TLネクスト・瓜生氏に聞く未来

スポーツナビ
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提供:(公財)日本ラグビーフットボール協会

トップリーグの未来に向けてさまざまなアイデアを披露する瓜生氏 【スポーツナビ】

 公益財団法人港区スポーツふれあい文化健康財団と、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会が主催する「みなとスポーツフォーラム 2019年ラグビーワールドカップ(W杯)に向けて」の第75回が8月2日、港区のみなとパーク芝浦・男女平等参画センターリーブラホールで開催された。

 今回は「2019年に向けたジャパンラグビー トップリーグの方向性」と題し、講師に瓜生靖治氏(公益財団法人日本ラグビーフットボール協会)を招き、司会はラグビージャーナリスト・村上晃一さんが務めた。

 瓜生氏は小倉高(福岡)、慶應大を経て、トップリーグ4チームでプレー。引退後はキヤノンのスカウトを務め、トップリーグ版トライアウト「トップリーガー発掘プロジェクト」を企画・実施した経験を持つ。

 今年4月からラグビー協会に勤め、現在は「トップリーグネクスト」と呼ばれるプロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任。2019年以降のトップリーグの形をつくり上げようと奔走している。

「興行ゲーム」に観客増の光明?

 講演に際し、瓜生氏は「ラグビーが発展していく土壌を耕す」「日本代表までの一貫した育成環境を整えていく」「世界と戦う力を養う」という3つの項目を挙げ、スライドを展開しながら話を進めていった。

 まずは「ラグビーが発展していく土壌を耕す」について。

 スポーツ庁が世の中に対してスポーツを広めていこうとするビジョンの中で、「スポーツへ再投資する自律的好循環」というキーワードがある。各競技が自分たちでお金を稼げるサイクルをつくっていく意味だが、瓜生氏は「世の中のグローバル化に伴い、これから時代はどんどん変わっていくと思う。各競技ごとにスポーツをやってお金を稼ぐ姿をつくり上げる事が必要。その先にスポーツの発展性というものがあります」と言及。自ら収益をあげ、それを普及に使いながら回していく先に、競技の発展が見込めるということだ。
 
 また、「ラグビーは心の教育に関しても非常に有効な競技なので、こういったところもスポーツ庁を通じて一緒に実行していければ」というスタンスも示した。

 次に、瓜生氏はトップリーグが行われる会場について紹介。基本的にホームスタジアムを持たないトップリーグのチームは、各地を転戦しながらシーズンを過ごす。チームや企業になじみのない会場で試合をする際は、1000人〜2000人程度の入りになることもしばしばだ。

 決して観衆の入りに恵まれているわけではない現状。その中で、一つの光明になる可能性を持つのが「興行ゲーム」だ。試合の権利を地方のラグビー協会が購入し、チケット売上やスポンサー料が基本的にその地方協会の収益になるというシステムだ。昨年度は大分県ラグビー協会が大分銀行ドームで実施(キヤノンvs.神戸製鋼)。1万人以上の観衆が集まり、同協会はかなりの収益を出したという。

「トップリーグネクストとしては、いずれチームが興行を持つことも視野に入れている」と瓜生氏は今後の展開を示唆。仮にチームによる「興行ゲーム」が実現すれば、各チームによってオリジナリティーが生まれ、観客を呼ぶ大きな要因になるかもしれない。

子どもたちの受け皿をTLがつくる

ラグビースクールで楕円球に触れる子どもたち。ユース世代を経て、大人になってもプレーを続けられる環境整備が必要だ 【写真は共同】

 2つ目は「日本代表までの一貫した育成環境を整えていく」について。

 日本は人口の割にスポーツの競技登録者が非常に少ない国である。野球やサッカーでも総人口の1%以下しか、競技者としてカウントされていない。わが国におけるラグビーの競技登録者は、およそ11万人。総人口がおよそ1億2600万人のため、総人口比率は0.09%。現在のトップ10を争う国で1%を切ることはなく、特にニュージーランドやイングランドは3%台というから、極端に少ないことが分かる。

 この状況を見て、瓜生氏は「少子高齢化という国の現状もある中で、ラグビーは真剣に対策をとっていかないといけない」と危機感を募らせる。個人競技である卓球や陸上の人気が高まる一方、団体競技は競技人口の確保が急務だ。

 では、ラグビー協会は具体的にどのようなアクションを起こすのか。瓜生氏はトップリーグがジュニア世代やユース世代のチームを創設する必要性を語る。

「今、日本国内で競技者の育成に対して発展性を持たせる組織はトップリーグしかない。日本国内のラグビー人気を支えるのは日本代表です。子どもたちも日本代表にあこがれてラグビーをやり始めますが、その受け皿をどこにつくるかといえば、トップリーグしかないと思っています。」

 小学校でラグビーを始めた子どもたちが、ジュニアユース、ユースと段階を踏み、トップリーグへ。そして日本を代表するラガーマンへ。この一貫した流れを整えていくのは、協会や瓜生氏にとって重要なミッションになるだろう。

瓜生氏の「壮大な夢」

講演はスライドを用いながら進められた 【スポーツナビ】

 3つ目は「世界と戦う力を養う」について。

 現在のトップリーグ各チームの所在地を見ると、特定の都道府県や地方に偏っている。身近にトップリーグがなく空白地帯が多いことが、日本ラグビー界のデメリットになるという。それを踏まえ、瓜生氏はセカンドホームやサードホームの設置を提案。企業が大きな工場を持っていたり関わりを深く持つ地域をセカンドホームにし、年に数試合行う、ユースチームを設置するといった活動を継続させる。活動の幅を広げることで、現状のデメリットをなくしたい考えだ。

 ユースチームに関しては、引退したトップリーガー達がコーチになってもらうなど、ラグビーに携わる選択肢としてチームに設置して欲しいという考えもある。

「現在約700名ほどのトップリーガーがいますが、その中には引退後全くラグビーに関わらなくなる選手も多い。OBも含め、ラグビーに携わりたい人はかなりいるはずですし、そういった場を用意する事でラグビーの受け皿が増えていく。リーグとしても責任を持って進めて行きたい部分です」

 また、瓜生氏が今後世界と戦う意味で「壮大な夢」と語ったのが、「サッカーのトヨタカップ(現クラブワールドカップ)のような形で、トップリーグの優勝チームと世界のリーグチャンピオンを戦わせる」こと。世界のスーパースターがトップリーグに参戦しているが、グラウンドや施設などの環境面や引退後は会社の仕事に移行できるといった将来の安定度の部分で皆驚いているという。今後は競技力を高め、実力面で日本ラグビー界が世界に認められる必要がある。

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