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霜田正浩、ベルギーで学びを得る日々
「指導者もリスク覚悟でチャレンジを」
ハリルホジッチ監督の招へいにも大きく関わった霜田。現在はSTVVのセカンドチームでコーチを務めている
ハリルホジッチ監督の招へいにも大きく関わった霜田。現在はSTVVのセカンドチームでコーチを務めている【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 アルベルト・ザッケローニ、ハビエル・アギーレ、ヴァイッド・ハリルホジッチと直近3人の日本代表監督の招へいに関わったのが、日本サッカー協会(JFA)のナショナルチームダイレクターを務めていた霜田正浩だ。2009年から8年間在籍したJFAを昨年いっぱいで退いた同氏は、17年8月からベルギー1部・シントトロイデン(STVV)のセカンドチームのコーチに就任。単身で新天地へと赴いた。


「3人の代表監督の下でやってきたことが本当に世界のスタンダードなのか。それを本場、欧州へ行って自らの目で確かめたい」という強い思いから、この仕事に就いたという。


 異国に飛び込んで約3カ月が経過した。技術的にはそう高くないものの、フィジカル的な激しさ、インテンシティー(プレー強度)の高さ、「得点」というサッカーの本質にこだわるベルギーから、日本が学ぶべきことは多い――。そう実感する日々だという。そんな霜田氏のもとを10月末に訪れ、ロングインタビューを実施した。(取材日:10月31日)

「選手を育てて海外に売る」のがベルギーの基本

JFAを辞めた後は強化部門ではなく、現場指導を希望し働ける環境を探していたと言う
JFAを辞めた後は強化部門ではなく、現場指導を希望し働ける環境を探していたと言う【六川則夫】

――まずはSTVV入りの経緯を教えてください。


 JFAを辞めた後、強化部門ではなく現場指導を希望し、国内外を問わず働ける環境を探していました。1〜3月にはタイ代表監督就任の話もありましたが、正式決定には至りませんでした。その後、「ベルギー1部クラブの指導者の話がある」というオファーをもらいました。


 カテゴリーはセカンドチームでしたが、トップの選手が下りてきたり、若い選手がいたりという、トップと育成をつなぐチームでした。3人の代表監督の下で得たものを欧州の選手に教えて、どのようなリターンが返ってくるかには興味が湧いたので、思い切ってチャレンジすることを決めました。


――STVVというクラブの概要を教えてください。


 シントトロイデンという人口約4万の小さな町に本拠地を置くクラブです。オーナーは地元の一大実業家で、現在は日本の「DMM.com」が株式を20パーセントほど取得しています。運営規模は10億円弱。そんな小さなクラブが1万8000人収容の複合的施設を併せ持つホームスタジアムを持ち、恒常的に8000〜9000人を動員する。これは小クラブの成功例と言えると思います。人工芝スタジアムなので、そこでトレーニングできるのもメリットでしょう。


 ベルギーの場合、アンデルレヒト、スタンダール・リエージュ、クラブ・ブルージュ、ゲンク、ゲントが5大クラブと言われています。今季、チャンピオンズリーグ(CL)に参戦しているアンデルレヒトの営業収益は、約60億円と浦和レッズとほぼ同じ(浦和は約66億円/16年度)。彼らはロメル・ルカク(マンチェスター・ユナイテッド)を売って得たお金で、育成面に投資しているというわけです。


「選手を育てて国外へ売る」というのはベルギーの基本です。1部リーグも外国人枠がない分、アカデミー育ちの選手7〜8人を「育成枠」としてベンチ入りさせなければならないというルールが設けられている。選手育成には本当に力を入れています。僕が見ているセカンドチームでも、16歳が先発で出場している。そこで際立ったプレーをすれば、すぐにトップに引き上げられます。常日頃から年上の選手とバチバチぶつかり合って削り合うという意味では、日本の16〜20歳とは選手を取り巻く環境が全然違うと実感しますね。


 セカンドチームは年間30試合のリーグ戦に参戦しているのも、若手の成長につながっていると思います。僕がJFAにいた時は何とか18〜22歳の試合環境を作ろうと、U−22選抜をJ3で2年間活動させ、それを解消した後はFC東京、ガンバ大阪、セレッソ大阪のU−23チームがJ3に加わってくれました。ベルギーで成長途上の選手を見ながら、真剣勝負のできる年間リーグの必要性をあらためて痛感しています。

元川悦子
元川悦子
1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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