活躍と初戦敗退…大坂なおみの伸びしろ
杉山愛コラム「愛’s EYE」
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全米3回戦進出も……初戦敗退が続いた後半戦

全米は3回戦進出、香港オープンではビーナスに勝利しベスト8入りした大坂なおみ。さらに“伸びる”ためのポイントは?
全米は3回戦進出、香港オープンではビーナスに勝利しベスト8入りした大坂なおみ。さらに“伸びる”ためのポイントは?【写真:アフロ】

 全米で3回戦に進出し、アジアシリーズでも活躍が期待された大坂なおみ選手(日清食品)。香港ではビーナス・ウィリアムズ(米国)を破り、ベスト8に入りましたが、それまでは、日本で行われた2大会を含む4大会連続で1回戦負けと、期待に応えることができませんでした。


 彼女がもともと持っている魅力はパワー、サーブ力やフォアハンドの破壊力、バックハンドのダウンザラインの決定力です。2016年はメジャーデビューの年でしたから、上位の選手にあまり知られていなかったこともあって、パワーで相手をびっくりさせ、圧倒し、四大大会で3度の3回戦進出という成績を残しました。ただ、今のいいときのテニスと比べると、去年はまだまだ単調でした。相手の変化に対応できなかったり、自分自身のテニスにも変化や幅がなかったように思います。ほとんど打ち勝つことだけでポイントを取っていたのが去年の大坂選手でした。

好調時に見せる“嫌なテニス”

 今年のいい時は、例えば全米でのアンゲリク・ケルバー(ドイツ)戦を見ても、戦術的に幅がでてきて、効果的なプレーを加えることができています。例えば、ただ速いサーブを打つだけではなくて、少しスピードは落ちても回転をかけてコントロールしたり、ラリーでも少しループを交えて時間を作ったり、コントロールショットをしてから中に入って早めに攻撃したりと、相手にとって“嫌なテニス”になりつつあると感じます。


 この“嫌なテニス”とはテニスの奥深さの表現で、どの選手も意識することですが、習得は簡単ではありません。彼女はジュニア年代からパワーで押しきることができて、その勢いのままトップ100に入りました。テニスをシンプルに考えてプレーすることでここまで来たのですが、少しシンプルに考え過ぎるところもあったので、昨年からコーチについたデビッド・テーラーはじめ、彼女のチームは引き出しを増やすことを課題にしてきました。理解するまで少し時間がかかったと聞きましたが、ケルバーを破るなど、いい結果がいいタイミングで出てきて良かったと思います。

課題は引き出しの数、そして安定感

全米初戦では、前回女王のケルバーに勝利。記者会見では、はにかんだような表情を見せた
全米初戦では、前回女王のケルバーに勝利。記者会見では、はにかんだような表情を見せた【写真:Shutterstock/アフロ】

 引き出しの数は絶対的に必要なので、増やすことができないと、この先は厳しくなります。今は戦術の理解度を高め、対応力を増やしている段階だと思います。ですから、それが“はまる日”は思い通りプレーできて、ケルバーに勝ったりビーナスに勝ったりと、トップ10選手を破っていますが、まだそこまでの安定感がないというのが現状でしょう。

 相手にそれを出させないように工夫されてしまうと、そこでの対応力がまだもの足りません。もちろんそこは彼女の伸びしろだと思うので、そういう意味では、無限の可能性を秘めていると思います。


 大会や対戦相手によって集中力にムラがあるとも言われていますが、大舞台や強豪に強いというのは、選手だった私の意見としては、うらやましいことです。

 どんな試合でもモチベーションを保つことは大切で、また、すべての試合が選手にとって意味のあるものですが、「ここで自分のテニスを出しきりたい」という場面でこそ力を出せる強さはトップ選手に必要な要素で、そこは彼女の魅力です。もちろん、モチベーションが上がらないところでどれだけ自分を鼓舞できるかというのも、トップにいくには絶対に必要な要素です。

選択肢と判断力 時には「しょうがない」も大事

 プレーの幅という話に戻りますが、戦術への理解を深めていくと、各場面でのチョイスが増え、迷いが生じることがあります。「どうしたらいいの?」という迷いは、例えば全米3回戦のカイア・カネピ(エストニア)戦でも見られました。そうなってしまったことで、あの試合では自分自身と戦っていた部分があったと思います。そこがなかなか簡単ではないところなのです。

 今まではそんなに深く考えず、“つなげるのか打つのか”くらいだったと思うのですが、“どう攻めるか、どう守るか”とチョイスが増えれば増えるほど判断力が求められます。選手としてのマチュアさ(成熟度)とともに、練習でどれだけ理解を深めて自分のものにできるかが、彼女のこれからのテニス人生を左右することになると見ています。


 あとは気持ちの持ち方ですね。マジメで、完璧を求めるところがある選手だと思います。これは練習では絶対に必要な要素であり、技術や戦術を突き詰め、目指すテニスを追い求める姿勢は彼女が現役を退くまで続くと思います。

 ただ、それは練習で求めることであり、試合では逆に「あ、今日はこういう状態だからこれでいいんだ」というような開き直りだったり、いい意味での妥協点があったりすると、もう少し楽に戦えるように思います。彼女の試合を見ていると、時々、完璧を求め過ぎて苦しくなっているのが分かるので、そこで「しょうがない」とか「そうか、これでいいのか」と柔軟にプレーできるようになると、本人も楽になるでしょうし、勝ち星もついてくるような気がします。

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