カタルーニャ独立問題とラ・リーガの異変 レアルはロナウドが不発、バルサは快進撃

バルセロナの快進撃はいつまで続くか

2年連続でFIFA年間最優秀選手賞を受賞したロナウド(左)だが、ラ・リーガではゴールから見放されている 【写真:ロイター/アフロ】

 10月27日、カタルーニャ州で議会による一方的な独立宣言が可決された直後、レアル・マドリーがカタルーニャを本拠地とするジローナのホームで行なわれた一戦で喫した敗戦は、ジネディーヌ・ジダンと選手たちへの警告となった。今季も多くのチャンスを作り出す攻撃力は健在で、各ポジションに豊富な戦力を擁している。だがゴール前でのミスがあまりにも多く、ジローナ戦では2失点の他にもゴールポストに救われた2つの決定機や、わずかに枠を外れた相手のチャンスがいくつもあった。

 2年連続でFIFA(国際サッカー連盟)の年間最優秀選手賞(ザ・ベスト)を受賞したばかりのクリスティアーノ・ロナウドが、ここまで不発続きであることも普通ではない。けが続きのギャレス・ベイルの名が先発から消え、カリム・ベンゼマも過去数シーズンとは程遠いレベルにある現状、ジダンはBBC(ベンゼマ、ベイル、ロナウド)へのこだわりを捨て、成長著しいイスコを4人目のMFとして起用することを優先するようになっている。

 不透明なのは選手たちのパフォーマンスだけではない。バルセロナはすでに合意を得ていると公表しているものの、2018年で契約満了を迎えるメッシはいまだにクラブとの契約延長にサインしておらず、バルセロナファンの不安は日々高まっている。

 メッシ以外の外国籍選手にも見られるこうした不透明な状況は、カタルーニャが独立した場合にバルセロナがラ・リーガに残れるかどうかの問題と関係していると考える者もいる。それだけではない。10月22日の時点で、カタルーニャに本社を置いていた約1200社の企業や大手銀行が本社の法人登記を州外に移転したという。その結果、カタルーニャにおける向こう数年の生産高は30パーセントも減少する見込みとなっている。

 失った経済力を取り戻すまでには何年もかかるだろう。そんな中、はたしてバルセロナは今後もトップレベルの戦力と経済力を維持できるだろうか。バルセロナでは今、一時代を築いたクラブ生え抜きのスター選手たちがベテランの域に達した傍らで、彼らにとって替わるべき人材はカンテラ(下部組織)から出てきていない。戦力を維持するためには、他クラブからの補強に頼らざるを得ないわけだが、そのために必要な資金は増える一方だ。

 こうした不透明な状況下、バルセロナの選手たちは周囲の騒音を気にすることなく、プレー内容の良し悪しはありながらも、結果を出し続けている。この流れがいつまで続くかは分からない。ただ激動のシーズンにおいて唯一の明るいニュースとなっている彼らの快進撃は、まるで砂漠のオアシスが花を育んでいる光景を想像させる。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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