【全日本プロレス】 デビュー25年、秋山準のプロレス人生 「この先、馬場さんみたいになるのが理想」
超世代軍の時代が一番良い時代だった
社長業はまだ4年目。「馬場さんのような」社長が理想だと話す 【写真:Yanomori tomoaki】
僕が全日本に入った時は、社長20年目の馬場さんを見ていた。僕はまだ4年目。だから、この先何年やるか分からないけど、20年ぐらいたった時に、馬場さんみたいになっているのが理想かな。僕が入った時は全日本もすごく良くなってて、選手も社員もその家族も、全然生活を心配することがなかった。あの頃とは時代も背景も全然違うけど、それは本当に理想だね。
――ということは、まだまだ社長業は続けていくということですね。
そうですね。とりあえずは50年を目指して頑張りたい。
――今の全日本マットは、昨年の11.27両国大会の大成功をきっかけに、観客動員数も観客の熱気も支持率も、グングン上がっていると思います。秋山選手としても、上昇気流は感じていますか?
まあ、そうですね。若い選手も頑張ってきて、お客さんも全然入っていない頃に比べたら入っていると感じているけど、楽観視はしていない。いつでも、何か1つあったらダメになると思ってて。馬場さんが二十何年社長業をやっていて、僕が入った頃が、社長になって一番良かった頃だと話していたことがあった。ちょうど、超世代軍が出てきた頃。馬場さんが社長になって20年も経って、ようやく良かったって言ってるんだから、僕が3年、4年で良いと思えることはない。最終的に何年か経って、ああ良かったと思えればいい。良くはなってきているけど、いつでもビクビクしていますよ。もちろん、皆の前では出さないですけどね(笑)。
――私はまさに超世代軍の時代からプロレスファンになったので、年に数回の日本武道館大会を毎回超満員にして、地方興行も大入り続きだった当時をよく知ってはいるのですが、「プロレスの黄金期」といえば、ジャンボ鶴田選手、天龍源一郎選手たちがバリバリに活躍していた1980年代というイメージがあるので、意外ですね。
馬場さんも超世代軍の頃が一番って言っていたし、新日本とかの興行のプロモーターもやっていた永源(遙)さんも、タイガーマスクよりも超世代軍の頃の方がもうかったと話していました。超世代軍の頃は、女性とか小さい子供がよく入っていたし、それに伴って男性も来ていた。やはり、女性とか子供のパワーというのは大きいのではないですかね。
「大人になった」から成り立つ大森とのタッグ
大森(右)とのタッグは合わない部分もあるが、それでも世界タッグを狙う 【写真:前島康人】
もちろん、プ女子や若い世代に観てもらいたいけど、ウチは渕(正信)さんをはじめ、ありとあらゆる年代がいるので、いろいろな年代の方に見てもらいたい。幅広い年代層の女性の皆さんに来てもらって、盛り上がってもらいたいね。
――これから「プロレスを観ようかな」と思っている女性ファンにオススメする若手選手は?
野村(直矢)、青柳(優馬)には頑張ってもらいたいけど、色気がないんだよね(苦笑)。入場は盛り上がるけどね。でも、色気は「出せーっ!」って言って出せるもんでもないし(笑)。
――お2人は若きアジアタッグ王者ということで、かつての秋山&大森組と重なる部分はありますか?
ちょうど自分たちと同じぐらいのキャリアで獲ったので、比較される部分もあるけど、彼らは真面目すぎるんで、もっとはっちゃけてほしい。自分が若い頃はもっとウワーってやってたんで。
――大森選手とは横浜大会で関本&岡林組の持つ世界タッグ王座に挑戦します。相手チームにはどんな印象を持っていますか?
プロレス界の中でも、プロレス大賞(※最優秀タッグ賞を11年、16年に獲得)を獲ったりと、周囲から認められている素晴らしいチームなんで、そういうすごいチームと記念試合ができてうれしい。でも、うれしいだけではなく、世界タッグはウチのベルトなんで、返してもらわないとね。でも、48歳になっても、負けてるとか、体力で劣っているとか、引いてるとかは思っていない。対等に試合ができると思ってる。あとは大森さんが頑張ってくれれば(笑)。関本&岡林だけではなく、ほかの選手についても、負けるつもりはない。
――大森選手といえば、高山善廣選手との「ノーフィアー」や、中西学選手との「ワイルド・チャイルド」、征矢学選手との「GET WILD」と、強烈な印象の名物タッグを生み出しています。秋山選手にとって、大森選手はタッグパートナーとしてはどんな存在ですか?
リズムが違う。普通はやりづらいんだけど、その違いを感じないね。リズムの違いを理解できて、その中に入り込めたり、良い方向に作用しているので、昔と比べて、改めて面白いチームだなと思うよ。
――そのリズムの違いは、アジアタッグ王者時代から感じていましたか?
そうですね。当時はイライラ感もあったけど、今は大森はこうだから、自分がどう合わせたら良いのかを考えられる。僕が大人になったってことですかね(笑)。そのリズムの違いが逆に良い時もありますね。横浜でベルトを獲って、そのまま最強タッグも優勝してやろうと思っています。
今でもリングに上がると『ガーッ』っといく
言動は大人しくなったものの、リング上ではこれからも「ガーッ」といくと話す 【写真:前島康人】
やっぱり、大きい大会があると選手もそこに向けてテンションが上がる。去年の両国でよく分かった。大きくなくても、中規模な大会を用意すると、そこに焦点を当てていける。『こうやりたい』と思っていても選手のケガでプランが狂うこともあるけど、いいカードが用意できるように、もう今から来年のことも考えていきたいね。
――また、秋山選手はGAORA TV王者としても定期的に防衛戦を行っています。今年3月に王座を戴冠した時には、「ハチャメチャなベルトにしたい」と構想を語っていた通り、かつてノアで白GHC(グローバル・ハードコア・クラウン)を創設した時のように、割と自由なベルトにしていくつもりですか?
だいたい毎シリーズ防衛戦をやっていて、相手によって、いろいろルールを変えたりもしているけど、ハチャメチャにすると言っても、三冠とか世界タッグとか、いろいろなベルトがあるからね。あんまりやり過ぎると、ほかのベルトを汚しちゃう。白GHCの頃は自分がバリバリ、トップ戦線でやっていながら、地方を活性化させるというテーマがあった。白GHCは自分が創ったベルトだけど、これはGAORAさんのベルトなんで、気を遣わないと。大人なんでね。
――秋山選手も48歳ということで、同世代の選手を意識する部分はありますか? かつて、12年9月9日の新日本・千葉・東金大会で「アンチエイジングトリオ」を結成(vs.中邑真輔、オカダ・カズチカ、高橋裕二郎)したDRAGON GATEの望月成晃選手が、9月に47歳8カ月でオープン・ザ・ドリームゲート王座を戴冠。一方、新日本の永田選手は最後の「G1クライマックス」で1勝8敗の最下位に終わり、明暗がクッキリと分かれました。
永田選手の成績が悪かったからって自分もそうだと思わないし、望月選手も頑張ってるなって思うけど、自分も『じゃあ』ってガーッていくというのもない。でも、リングに上がると違うね。今は心も凪(なぎ)状態で平常心だけど、リングに上がると『ガーッ』っていく自分もいる。昔はコメントから『ウワーッ』っていって、リング上でも『ガーッ』。今はコメントは大人しくても、リング上では『ガーッ』っていく。同世代の選手に対してどうこうというのはないけれど、やっぱり、リングに上がると、まだまだ負けないというのがある。レスラーとしての血というより、本来の性分、スイッチが入るか入らないかだね。
――最後に、5月に試合中のアクシデントで頸髄完全損傷の重傷を負い、現在リハビリ中の高山選手について聞かせてください。
そうですね。これまでの疲労やダメージが蓄積していて、なかなか休みが取れずに、ちょっとの狂いでケガをしてしまったんだと思います。完全損傷でもう動けないと報道されているけど、過去にも脳梗塞から復活されたんで、リングに上がれるかは分からないけど、息子さんもまだ小学生ぐらいだと思うんで、息子さんとゆっくり街を歩けるぐらいまででも回復してもらいたいです。なかなか長い戦いになると思うけど、頑張ってもらいたいと思います。『TAKAYAMANIA』の募金活動も協力するし、逆に何かやってほしいことがあれば、言ってもらえれば協力したいです。