【全日本プロレス】諏訪魔が宮原を下し史上最多三冠王者に 横浜文体でドーリングとの初防衛戦へ

高木裕美

諏訪魔(左)が史上最多となる6度目の三冠王座戴冠。21日の横浜文体大会ではドーリングと激突する 【写真:Yanomori tomoaki】

 9日の全日本プロレス「2017 旗揚げ記念シリーズ」東京・後楽園ホール大会では、満員となる1301人を動員。秋のビッグマッチとなる21日の神奈川・横浜文化体育館大会に向け、選手たちの気迫とファンの熱気が早くも爆発寸前となった。

 メインイベントの三冠ヘビー級選手権試合では、30分を超える死闘の末に、諏訪魔が宮原健斗を破り、約1年9カ月ぶりに王座返り咲き。これまで故・三沢光晴さん、川田利明と並んでいた5度の記録を更新し、史上最多となる6度目の戴冠を果たした。横浜での初防衛戦では、かつての盟友ジョー・ドーリングを迎え撃つことが決定し、早くもリング上でにらみ合った。

宮原に対し1年ぶりのリベンジに成功

渾身のラストライドで終止符。1年ぶりに宮原へのリベンジを果たした 【写真:Yanomori tomoaki】

 諏訪魔は昨年1.2後楽園で秋山準を破り三冠王者となるも、直後にアキレス腱断裂で王座を返上。同年7月に復帰し、秋の「王道トーナメント」を制覇すると、11.27両国国技館で宮原の三冠王座に挑戦するも、26分21秒、シャットダウン式ジャーマンスープレックスに敗れていた。あれから約1年。再び今年の「王道トーナメント」を制し、連覇を達成した諏訪魔は、優勝カップを手に入場。三冠王座を巻いた宮原と向かい合った。

 宮原は序盤から鉄柵めがけてのフェースクラッシャー、鉄柵を使ったフェースロックを仕掛けるなど、ラフファイトを展開。すると、諏訪魔も立った状態の宮原の右足をつかんで、強引にドラゴンスクリューを敢行。そこから5分以上に渡る怒とうの右ヒザ攻めが続き、肩に担いでの足折り弾では、客席から悲鳴が起きた。拷問式の逆片エビ固めをしのいだ宮原は、低空ドロップキック、ブラックアウトで一気に反撃開始。なおも諏訪魔はダブルチョップから変形の両足アンクルホールドで締め上げると、さらにラリアット。バックドロップ。だが、宮原も1発目のラストライドをDDT、2発目をウラカンラナで切り返すと、ジャーマンの投げ合いからシャットダウン式を狙いに行くが、諏訪魔が振り切ってカウンターのドロップキックを浴びせる。

 25分過ぎ、宮原は3発目のラストライドも丸め込んで切り返し、後頭部へのブラックアウト。なおも頭突き、ブラックアウト2連発とたたみかけるが、シャットダウン式に行こうとしたところを、諏訪魔が左腕ラリアットで阻止。諏訪魔は万力スープレックス、ラリアット、バックドロップと一気に攻め立てると、豪快なラストライドでフィニッシュを決めた。

ドーリングが石川に借りを返し挑戦権獲得

ドーリングは石川を下し、三冠王座への挑戦権を獲得 【写真:Yanomori tomoaki】

 和田京平レフェリーにつかまり、ようやく立ち上がった諏訪魔の前に現れたのは、かつてのパートナーであり、いまや宿敵となったドーリングだった。

 ドーリングはこれまで約3年に渡って諏訪魔のタッグパートナーを務めていたが、今年の7.30大阪でEvolutionを離脱。8.27両国では、諏訪魔vs.小島聡(新日本プロレス)の因縁の大一番の前に諏訪魔を襲撃し、試合をブチ壊す暴挙に出た。怒りの諏訪魔は9.23仙台での王道トーナメント準決勝で対戦した際、わずか7分43秒、万力固めで勝利するも、まだ憂さは晴らせず。悶々(もんもん)とした感情を溜め込んでいた。

 ドーリングはこの日のセミファイナルで行われた三冠ヘビー級選手権次期挑戦者決定戦で、「王道トーナメント」準優勝者の石川修司と対戦。両者は今年の「チャンピオン・カーニバル」決勝戦となる4.30博多でも対戦しており、この時は石川が15分13秒、ファイヤーサンダーで勝ち、初優勝の栄冠をつかんでいた。

 巨体同士がぶつかり合うド迫力のタックル合戦から、石川がブレーンバスターを繰り出せば、ドーリングも雪崩式ブレーンバスター。エルボー合戦から石川がカミゴェ、ランニングニー、ファイヤーサンダーを放つも、カウントは2。ドーリングはデスバレーボム、ボディーアタックからツームストンパイルドライバーでマットに突き刺すと、破壊力十分のフライングボディーアタックを炸裂。半年前の借りを返すと同時に、三冠挑戦のビッグチャンスをつかんだ。

 リング上でにらみ合った諏訪魔とドーリングだが、この日は乱闘に発展することなく、ドーリングが退場。諏訪魔は「ジョーには嫌な思いをさせられてムカつくけど、そういう感情は抜きにして、正々堂々と戦いたい。三冠王者として、全日本プロレスの価値を上げたい」と高らかに宣言した。対戦相手の宮原については「急成長しているのを感じた。スタミナが無尽蔵だね」と評価した上で、それでもエースの座は譲れないという意地を吐露。「UNの精神を持って、オレがチャンピオンになることで、全日本はどうなっちゃうんだろうって思わせたい」と、三冠王座のひとつであり、尊敬する天龍源一郎が長きに渡り巻いていたUN王座を例えに、全日本マットをかき回す覚悟を示した。

 新記録については「時代が違いますよ。あんなすごい人たちを超えたとは思っていない。たまたま自分がやり続けていただけ」と、三沢・川田超えを否定した諏訪魔。四天王プロレスによって築かれた全日本黄金時代のような隆盛をもう一度取り戻せるかどうか、新三冠王者・諏訪魔のこれからの“仕掛け”に期待したい。

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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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