白井が目指す新時代のオールラウンダー 長所と短所、どちらを強化すべきか
内村不在の新王者決定戦は大接戦に
個人総合で初の銅メダルを獲得した白井(左) 【Getty Images】
内村(左)から背中を叩かれる白井(左から2番目) 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
ただ、オールラウンダーと言えば内村航平(リンガーハット)に象徴されるように、どの種目もまんべんなく点を取っていくのが従来の勝ち方だが、白井は違う。ゆかと跳馬で高得点を稼ぐことで合計点を上げていくタイプだ。
今回は、内村が予選中の負傷で棄権したことにより、内村不在の中での新チャンピオン決定戦だった。結果は、肖若騰(中国)が86.933点で優勝し、2位も同じく中国の林超攀で86.448点。3位の白井、4位のダビド・ベリャフスキー(ロシア)、そして5位のマンリケ・ラルデュエト(キューバ)までが1点差以内にひしめく大接戦だった。内村が2位に2点差近い大差をつけて初めて王座に輝いた09年世界選手権のように、トップが抜きん出ているわけではなかった。
白井が「今回は新ルールでの初めての大会で、各国の選手が手探り状態だった。来年以降が本当の勝負になる」と語ったように、20年東京五輪に向けての勢力図が固まったわけではない。
そんな中で今後、白井が個人総合で勝つためにはどういった方向性で強化していくことがふさわしいのだろうか。
強化本部長「13点台をなくすこと」
ベリャフスキーは6種目すべてで14点台を狙える実力を見せた 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】
また、4位のベリャフスキーは13点台が1つあるが、これは落下した鉄棒の得点。平行棒では15点台を出しており、鉄棒の落下さえなければ6種目とも14点以上だった可能性が高い。なお、5位のラルデュエトは13点台が2種目、14点台が4種目だった。
一方で白井はゆかと跳馬の2種目で15点台を出し、特にゆかでは15.733点という驚異的な点を出しているが、あん馬、つり輪、鉄棒の3種目が13点台だった。
ゆかの15.733点は、全種目通じて今大会の決勝でマークされた最高点だ 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
男子個人総合の試合後、水鳥強化本部長は、「オールラウンダーの選手は6種目ともミスのない演技をすることが大事だ。白井選手はこの接戦の中でミスなくやりきれたのが良かった」と、まずは演技内容を褒めた。
そして、スペシャリストとして出場したリオデジャネイロ五輪からわずか1年で、全体の演技構成の難度を大幅に上げたことを評価した。
特に強調したのは苦手だった鉄棒だ。昨年まで2つだった手放し技を今年は4つに増やしたことについて、「あれだけ離れ技を入れるようになったのは大きい」と努力を評価。「つり輪でも力技の中水平の高さが下がり、静止時間がしっかり止まるようになってきた。苦手種目の克服がだいぶできてきた」と分析した。
とはいえ、改善されたといえども13点台では不十分であることは間違いない。
「13点台があるとゆかであれだけの点を取ってもすぐに追いつかれてしまう。13点台の種目をなくしていくことが大事だ。あん馬とつり輪はEスコア(演技の出来映え)とDスコア(演技構成の難度)をしっかり上げていくことが必要」と指摘する。