白井が目指す新時代のオールラウンダー 長所と短所、どちらを強化すべきか

矢内由美子

得意種目の伸びしろは「シライ3」

得意の跳馬でも今後、さらなる高得点が期待できる 【Getty Images】

 しかしながら白井の場合は、苦手種目の向上に目が向かいがちな中で、得意種目の跳馬でもさらに上積みできる実力を有していることが大きい。

 それは、リオ五輪種目別決勝で見せた大技「シライ2」(伸身ユルチェンコ跳び3回半ひねり)の存在だ。この技のDスコアは今回行なった「シライ/キムヒフン」(伸身ユルチェンコ跳び3回ひねり)と比べて0.4点高い。

 成功率が低いことで今年は回避したが、水鳥本部長は「あの技が個人総合でも入っていくと、(合計)87点台が見えてくる」と期待を寄せる。

2020年へ、まずは下地作り

白井は「6種目そろえる」という今大会の目標を達成した 【Getty Images】

 今後の強化の方向性に関しては、白井自身も考え方を明らかにした。
「僕自身、高いDスコアが持ち味の選手であるということは分かっているし、そこはブレることなくやっていきたい」と、まずは原点であるスペシャリストとしての能力を最大限に生かすことが前提であるという認識を示している。

 そして、そのうえで最初の強化ポイントには「あん馬とつり輪のEスコア」を挙げた。

 背景には、今回の個人総合で出された採点結果がある。あん馬ではミスがあったわけではないが、Eスコアは8.133点にとどまった。つり輪では、こちらも過失というほどのことがなかったにも関わらず、個人総合10位以内の選手でただ1人の7点台である7.966と低く抑えられた。

 白井は、「Eスコアを見て、世界に出ても日本と変わらない評価であると感じた。そこを克服したい」と現実を素直に認める。

「今回は6種目そろえることが目標だったので、(3位という結果に)悔しさはない。東京五輪に向けて良い一歩になった」と力強い白井。新時代のオールラウンダーとして羽ばたく下地をカナダで作り上げた。

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著者プロフィール

北海道生まれ。北海道大卒業後にスポーツニッポン新聞社に入社し、五輪、サッカーなどを担当。06年に退社し、以後フリーランスとして活動。Jリーグ浦和レッズオフィシャルメディア『REDS TOMORROW』編集長を務める。近著に『ザック・ジャパンの流儀』(学研新書)

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