得点能力が高い打者は誰!? 初めてのセイバーメトリクス講座(3)
リーグ随一の得点力を誇るソフトバンクの柳田 【写真は共同】
長打を打つ能力を判断するには?
カネシゲ:OPSですね。OPSはもう大丈夫です!
鳥越:よかった。OPSというのは「出塁率+長打率」なので、出塁する力も長打を打てる力も見れるというのがウリですね。でもやっぱり長打をめちゃめちゃ打てる選手はしっかり評価してあげる必要がありますよね?
カネシゲ:そりゃそうです。
鳥越:そこでセイバーの世界では「IsoP(アイエスオーピー)」(もしくはISOと表記)という指標を用います。「Isolated Power」の略で、二塁打以上の長打を打てる力を表す数値になります。
カネシゲ:おや、長打率ではダメなんですか?
鳥越:長打率だと単打も入りますよね。
カネシゲ:あ、そうか。長打率の計算では単打も「1」として重みづけられるんだった。じゃあどう計算すればいいですか?
鳥越:簡単です。長打率から打率を引けばいいんです。
IsoP=長打率−打率
カネシゲ:おわ、カンタンだ。好感が持てます(笑)。
鳥越:ちなみに「長打率−打率」は以下の数式と同じ意味を持ちます。
IsoP=(二塁打+三塁打×2+本塁打✕3)/打数
カネシゲ:なるほど。どちらも単打の価値をゼロとするのは同じですね。
鳥越:そうです。極端な話、10打数10安打の大活躍でも、全部のヒットが単打だったらIsoPはゼロです。
カネシゲ:なんだかちょっとかわいそう(笑)。ちなみにIsoPの「アイソレイテッド」ってなんですか?
鳥越:直訳すると「隔離する、分離する」という意味ですが、意訳すると「それに特化した」みたいな感じになり「Isolated Power」で“パワー特化”となります。
カネシゲ:なるほど。「オレには単打なんていらねぇ。無価値だ!」みたいな豪快な選手を想像しておきます。
鳥越:では今年のランキングを見てみましょう。
2017年9月18日時点。規定打席到達の打者を対象 【資料提供:鳥越規央】
鳥越:結局、彼らに求められている能力はこれですからね。
カネシゲ:そこでもトップに入るギータ(柳田悠岐・福岡ソフトバンク)って、やっぱり規格外ですね。
鳥越:ちなみにバレンティン(東京ヤクルト)が60本塁打を記録した2013年のIsoPは0.449というとんでもない数値でした。
カネシゲ:う〜ん、やっぱりホームランを60本打つとそうなるんですね。
四球を選ぶ能力を数値化する
カネシゲ:これはシブい指標だ(笑)。でも選球眼は大事ですからね。
鳥越:この指標は「IsoD(アイエスオーディー)」と呼びます。「Isolated Discipline」の略です。Disciplineは「自制心」みたいな意味ですね。
IsoD=出塁率−打率
カネシゲ:なんと出塁率から打率を引くだけ! これもわかりやすくてステキ。
鳥越:このIsoDは四死球による出塁の度合いを示しており、一般には選球眼の良さを示す指標とされています。でもちょっと弱点がありまして……。
カネシゲ:弱点?
鳥越:たとえば「敬遠されやすい人」とか「勝負を避けられる人」は四球が多くなるので、選球眼に関係なくIsoDは高くなってしまうんです。
カネシゲ:なるほど。強打者ほどそうなりますね。
鳥越:なので最近はIsoDを活用する人は少なくなってきました。でもセイバーの黎明期にはこういうものがあったと覚えておいてください。
2017年9月18日時点。規定打席到達の打者を対象 【資料提供:鳥越規央】
カネシゲ:でも島内宏明(東北楽天)あたりは、本当に選球眼でここに来ている感じがします。
鳥越:ですね。鳥谷敬(阪神)や丸佳浩(広島)もそうだと思います。