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中垣内体制1年目、グラチャンで出た脆さ
基本戦術やサーブで感じた世界との違い

深津「いい経験だけでは終わらせたくなかった」

順調に強化を続けてきた全日本だったが、グラチャンは5戦5敗に終わり世界トップとの差を体感した
順調に強化を続けてきた全日本だったが、グラチャンは5戦5敗に終わり世界トップとの差を体感した【坂本清】

 圧倒的な世界との差に、打ちのめされた。


 ワールドグランドチャンピオンズカップ(グラチャン)は5戦を終えて5敗。結果が問われる大会ではないとはいえ、1勝どころか勝ち点を1ポイントも取れずに終わった現実。主将の深津英臣は唇をかみしめた。


「始まる前は、自分たちのバレーができればどんな相手でもいい結果を残せると思っていました。でも、いいバレーをさせてくれないのがこのレベルなんだとあらためて強く感じた。それは僕だけではなく、初めて代表に入った選手もすごく感じていると思います。今年、こうして経験できたことは大きい。甘く見てもらえばそうですけれど、厳しく見ればそうではない。いい経験にはなりましたけれど、いい経験だけでは終わらせたくなかったです」


 5月の新体制発足以降、ここまでの経過は順調だった。ワールドリーグのグループ2で準優勝し、世界選手権のアジア予選で4戦全勝、その直後のアジア選手権も優勝。勝つことに飢えていた全日本男子にとって、大会続きのハードスケジュールの中で残した結果は自信となった。


 ブラジル(2017年7月7日付の世界ランキング1位)、米国(2位)、イタリア(4位)、イラン(8位)、フランス(9位。日本は12位)。まさに世界のトップと対戦する機会となるグラチャンでどこまで戦えるのか。多くの選手が胸を躍らせ、目を輝かせ、「やるからには全勝を狙いたい」と口をそろえたほどだった。

米国戦で感じたブロックとサーブの差

初戦で対戦した米国は世界ランク2位。ブロックとサーブで大きな差を感じた
初戦で対戦した米国は世界ランク2位。ブロックとサーブで大きな差を感じた【坂本清】

 ところが、フタを開ければそううまくは運ばない。初日の米国戦から完膚なきまでにたたきのめされた。


 米国は1本でエースを奪う強烈なサーブだけでなく、日本のアタッカー、特にバックセンターからの柳田将洋や石川祐希のパイプ攻撃(バックアタック)をつぶすべく、アタッカーの助走コースにサーブを打つ。柳田や石川に取らせて攻撃参加を遅らせるだけでなく、カバーに入ったリベロにアタッカーの前や、両者がぶつかるような位置で取らせることで助走コースをふさぐ。


 勢いに乗るために、まず自分たちの強みを発揮したい。そんな日本の思惑を打ち砕く、米国の完璧なサーブやブロックとレシーブのトータルディフェンスの前に、手も足も出ない。米国と同様か、それ以上に攻めなければならないはずのサーブもミスを恐れて弱くなる。そのため相手にとってはチャンスサーブになり、簡単にパスを返され、柳田やセッターの藤井直伸の上を狙って自在にスパイクをたたき込まれた。


 今シーズン、全日本に初招集されレギュラーセッターとなった藤井が言った。


「ブロックとサーブの差が強烈でした。キルブロックもそうですけれど、米国のブロックは、セッターとしては本当に嫌。こちらが仕掛けても全然ゲスブロックはしないし、サイドに対してもリードブロックの反応が速い。勝つためにはものすごく高い精度が求められる。今までの試合とはまた違う、日の丸の重みを感じた試合でした」

 大会4日目を終えた時点での公式帳票上、スパイク決定率は1位の米国が53.52%であったのに対し日本は44%。1セットあたりのブロック本数は1位のブラジルの2.75本に対し日本は0.79本。これらに加えて、サーブも含めた得点に直接関連する3項目すべてが6カ国中6位だった。

決定的な差となった「基本技術の粗さ」

「基本技術の粗さ」も目立った日本。中垣内監督もブロックの対応を課題に挙げた
「基本技術の粗さ」も目立った日本。中垣内監督もブロックの対応を課題に挙げた【坂本清】

 点を取るための技術においても決定的な差が露わになったのだが、前半の2試合で気になったのはフェイントに対するレシーブやブロックフォロー、二段トスやフリーボールの処理、ブロックの手の出し方など「基本技術の粗さ」だ。本来ならば自チームのチャンスボールとして主導権を握るはずの状況で、簡単にボールが落ちたり、誰が2本目を上げるのか連係にもたつく。2枚そろっているはずのブロックが1枚ずつに割れたり、相手のスパイクを当てても簡単に飛ばされてしまう場面が目立った。


 チャンスボールを返す際には、相手に少しでもいい状態で攻撃させないようにとセッターや攻撃準備で助走に開こうとしている選手を狙う。そのため藤井が「できるだけ(1本目はセッターに)取らせるな、という方針なので僕の付近にきたボールの処理がちょっと慌ただしい感じだった」と言うように、1本目のパスや2本目のトスでミスが出る場面が多くあった。


 石川は「問題はもっと根本にある」と指摘する。


「相手はディグ(相手のサーブ以外のボールをレシーブすること)もプッシュボールも上げていたんですけれど、こっちはプッシュも全然上げられずにポロポロ落としていた。試合だけでなく、練習でも結構フェイントが落ちているのにそのままにしていたこともありました。もっと練習から徹底しないとダメだと思うし、試合でもっと余裕を持ってこういうプレーができないと厳しいと思います」


 アジア選手権以後、中垣内祐一監督は「ブロックを含めたディフェンスに重点を置いてきた」と言う。だが2日目のフランス戦後、中垣内監督も基本技術の未熟さを指摘した。


「しつこく、口が酸っぱくなるぐらいブロックを完成させろと言い続けてきたのですが、どうしても相手のジャンプが高くなると相手のスパイカーを見るためにアゴが上がる。そうすると腕も上がって手が前に出ない。もう少し何とかできるボールがあるはずなんですけれど、なかなか止め切れていないことも含め、まだまだ引き続き大きな課題です」

田中夕子

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など、女子アスリートの著書や、前橋育英高校野球部・荒井直樹監督の『当たり前の積み重ねが本物になる』では構成を担当

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