中垣内体制1年目、グラチャンで出た脆さ 基本戦術やサーブで感じた世界との違い
日本以上に世界は変化し、進化した
16日に行われた世界ランク1位のブラジルと2位の米国との試合後、3−2で勝利したブラジルのミドルブロッカーのルーカス・サートカンプが「試合を決めたのはサーブ。われわれのサーブが走ればセットを取り、米国のサーブがよければ米国がセットを取った」と言うように、サーブの重要性は周知の通り。サーブ力もサーブ戦術も年々高まり、ただジャンプサーブを強く打つ、レシーブの苦手な選手を狙うだけではない。相手のパイプを消す、クイックを消すために誰にどの位置で取らせるのが効果的かを踏まえたうえで、ジャンプサーブもジャンプフローターサーブも強く、ベストサーブをターゲットに打つ。
15年のワールドカップ以降、日本もサーブで攻める意識は高まり、今季から就任したフィリップ・ブランコーチも選手に「アグレッシブなサーブを打て」と言い続けてきた。実際にワールドリーグからアジア選手権までは、胸を張って「サーブが武器だ」と言える結果も残してきたが、今大会は違う。1位のイタリアが1セットあたり1.40本のサービスエースを取ったのに対し、日本は0.82本。サービスエースの本数自体もイタリアの31本に対し、日本は14本。そして、その数字以上に大きな差があった、と柳田は言う。
「僕らは(サーブの)狙いだけを重視してしまって、質が悪い。簡単にAパスが返るようなサーブならばそれは何もプレッシャーではない。相手に駆け引きをされて後手後手になるのではなく、自分たちも二転三転して、『相手がこうしているから自分たちはこうしよう』と、もっと理解できるようにならないといけない。このレベルでできたことは本当に大きなことだし、忘れてはいけないのは、これからもこういう展開が続くということ。だから、相手に押されても引くのではなく、向かって行く。そういう存在が必要だと思うし、僕自身はそうなりたいと思ってやっていきます」
乗り越えるために一歩ずつ、上っていくだけ
リベロの井手智が「最初はみんなが空回りしていたので、上がりすぎず、下がりすぎず、まずは1人1人が自分の持っている最高のプレーを出そうと意識して臨んだ」と言うように、名古屋での2戦と大阪での3戦を比べるだけでも、サーブで攻め、ミドルやパイプを使い、レシーブした後も攻撃参加する。試合に臨む姿勢や戦いぶりも変わり、これまで取り組んできたことの成果が随所で見られた。
加えて、ウイングスパイカーに転向してわずかひと月の小野寺太志が五輪王者のブラジルを相手にプレーする姿は、まだまだ未熟な面も多いとはいえ、これからどう変わっていくのか。期待を抱かせる挑戦でもあった。
海外の強豪との合宿や試合を通して、歯が立たなかったサーブやスパイクに慣れる機会を増やすこと。ミドルブロッカーからオポジットにコンバートされた出耒田敬や小野寺のように、所属チームと全日本で異なるポジションに入る選手に対する今後の強化方針や体制の整備。そして基本技術の未熟さを受け止め、今以上に育成年代と連動した強化システムを構築することなど、数え上げればキリがない。
ここから少しでも前進するために。中垣内監督が言った。
「強化の方向性は間違っていないと自信がありますし、厳しいチャレンジ、それは最初から分かっている話で、そのチャレンジに向かって挑戦し続けるしかない。困難な中にどこに打開策があるのか。常日頃アンテナを広く張りながら活動していきたいと思います」
あの経験があったから強くなれた。3年後に迎える東京五輪でそう胸を張って言えるように。目の前にそびえ立つ壁の厚さと高さが分かったのだから、ここからは、乗り越えるために一歩ずつ、上っていくだけだ。