- 田中夕子
- 2017年8月24日(木) 11:30

アタック、レシーブ、サーブ、トス、ブロック……。バレーボールはさまざまな技術を複合してゲームが成り立っている。その中で、普段は注目されることの多くない“ブロック“にスポットを当てるべく、元全日本のミドルブロッカーとしても活躍した、V・プレミアリーグ男子2016−17シーズン優勝チーム、東レアローズの小林敦監督にブロックに着目したバレーの見方を解説してもらった。ブロックについて少しだけ理解を深めれば、9月に開催するグラチャンバレーをはじめ、今後のバレー観戦を新たな視点で楽しめるはずだ。
シャットアウトだけがブロックではない
ブロックと聞いて多くの方がまずイメージするのは、相手のアタックを直接コートに落とすブロック(キルブロック)ですが、ブロックの目的はそれだけではありません。ブロックに当ててアタックの威力を弱めたり、コースを限定したりすることでレシーブしやすい状況をつくるのも目的であり、ブロックを意識させ、相手がアタックミスを起こすのもブロックの意義。アタックボールは時速100キロを超えると言われ、ノーブロックでこれをディグ(スパイクレシーブ)するのは理論的には不可能に近い。ですが、ブロックでコースを絞らせ、スパイクを打ってくる可能性が高い位置にレシーバーがいれば正面でそれを反応して上げることは可能です。つまり、派手に止めるだけがブロックではないということです。
もしも、コートに立つ6人がレシーブに入って相手のアタックをレシーブできるならブロックは必要ありませんが、それは究極であり、人間の反応速度には限界があります。ブロックがない状況で相手のスパイクをレシーブで上げる、という戦術は理論的には成り立たない。それを封じるための第一の策がサーブであり、二段階目がブロック。そして、ブロックによりコースが限定されたボールや、ワンタッチしたボールをレシーブする、この三段階がトータルディフェンスと考えられ、それぞれのチームはさまざまな戦術を駆使しています。
相手のクイックにヤマを張るのがコミットブロック

ブロック、と一言で言っても、いろいろな用語を耳にするのではないでしょうか。代表的なものは、コミット、リード、ゲスという「反応の仕方」。コミットブロックとは相手のクイック攻撃に対してあらかじめヤマを張って、相手セッターがどこに上げるかは関係なくまずクイックを抑えにいく、相手のアタッカーと同じタイミングで跳ぶブロックです。クイックだけでなく、時にはサイド攻撃に対してもコミットを仕掛けることもありますが、大半はクイックを確実に止めにいくのがコミットブロックです。
そしてリードブロックは、すべての攻撃に対して1人でも多くブロックに参加させることを目的にしたブロックです。コミットブロックとは異なり、相手のセッターや状況を把握して、トスが上がるのを見極めてから反応する。理論上は相手の攻撃に振られることはなく、アタックに対して確実に1枚以上が参加できるのがリードブロックです。
もう1つ、ゲスブロックというのはその中間。リードブロックを仕掛けようとした際に判断を誤って、間違ったところに跳んでしまう後追いのブロックであり、相手の攻撃を推測して勝手に跳んでしまうものです。コミットほどのスピードもなく、リードのような正確性もない。いわゆる失敗ブロックです。
残念ながらVリーグでも、日本人はゲスブロッカーが非常に多いというのが実情です。世界的に見ても日本のブロックはレベルが低いとされるのはこの辺りに原因があり、国際試合では世界のトップに名を連ねるチームのミドルブロッカーはほとんどゲスブロックをしません。時折、ミドルの選手がゲスブロックをして、結果的に1対1になったサイドブロッカーが効果を上げるときもありますが、ブロック戦術としては失敗です。

また、そのほかには、ソフトブロック(主にワンタッチを狙う)、キルブロックという「手の出し方」。さらにバンチ(コートの中央にブロッカーを集める)、スプレッド(3人のブロッカーを等間隔におく)、デディケート(コートの片側にブロッカーを集めて専念する)などの「ブロックの配置」があります。これらを組み合わせて「バンチリードのソフトブロック」、「スプレッドコミットのキルブロック」というように、「反応」「配置」「手の出し方」を組み合わせた用語が出てくる。それがブロック戦術です。