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3本塁打の中村に新怪物誕生の予感
広陵が3季連続4強の秀岳館に完勝

3回目のチャンスにきっちり得点

初戦の中京大中京戦に続き、2回戦の秀岳館戦で今大会3本目となる3ランを放った広陵・中村
初戦の中京大中京戦に続き、2回戦の秀岳館戦で今大会3本目となる3ランを放った広陵・中村【写真は共同】

「1試合に3回は必ずチャンスがくる。そのチャンスをモノにして、流れに乗りたい」とは試合前の広陵(広島)・中井哲之監督だ。相手の秀岳館(熊本)は川端健斗・田浦文丸と好投手を持つとはいえ、チャンスがどこかで訪れるのが野球というゲームの常。そのチャンスを、アウトを余して、つまり無死か1死で得点圏に走者を置くことだと定義すれば、広陵の3回目のチャンスは7回に訪れた。


 1対1。連打で無死一、二塁とした広陵は、バントで1死二、三塁と好機を拡大し、打席には先発投手・平元銀次郎が入る。ここでベンチが動いた。2球目をスクイズ。ピッチャー前にやや強く転がったが、川端がこれを捕球ミス(記録は安打)して1点が入ると、続く高田誠也のセカンドゴロが敵失を誘って広陵が3対1とする。


 優勝候補がごろごろいるブロックで、両者は1回戦を力強く勝ち上がってきた。広陵は、中村奨成の2本のホームランなどで中京大中京(愛知)に逆転勝ちし、夏30勝目を記録している。秀岳館は、川端―田浦のリレーで横浜(神奈川)の強力打線に打ち勝った。


 なんといってもその速攻が圧巻で、初回、竹輪涼介が2球目をライト三塁打とすると、続く半情冬馬が初球をレフトへ運ぶ犠牲フライで、わずか3球で先制。さらに3連続長短打で、合計9球のうちに電撃の3点を先制した。「打者はファーストストライクを見逃すとヒットの確率はがたんと落ちる」という鍛治舎巧監督の教えを、そのまま実戦で生かした格好だ。

高校日本代表候補が快調な投球数

 鍛治舎監督の、広陵戦前の目論見はこうだ。


「平元君は、球数が100を越えると球威が落ち、コントロールにばらつきが出てくると思う。ただ、100に達するのが7、8回だと苦しいでしょうね。だからといって、球数を投げさせるためのウェイティングなどはせず、ウチらしく積極的に打っていきます」


 だがこの日は、平元の調子がいい。6回2失点で降板した中京大中京戦ではややキレを欠いた直球に、力がある。平元は言う。


「初戦は、捕手のサインを見たあと、ずっとミットから目を離さずに投げていた。だけどそれだと、知らず知らずに上体が前に突っ込み気味になることがあると聞いて、今日はサインを見たら、一度目線を切ってから投げたんです」


 もともと捕手の中村とともに、高校日本代表の1次候補の実力がある。本来のできに戻れば、2点を勝ち越した7回まで、秀岳館の強力打線を6安打、幸地竜弥のホームランによる1点のみに抑えても不思議はない。そして、投球数もこの時点で94。「100に達するのが8回では、反撃するのにちょっと遅い」(鍛治舎監督)という、快調なペースだ。

2試合で9打数7安打3本塁打

 さらに、9回の広陵。7回途中に登板していた田浦から1死二、三塁のチャンスをつくると、バッターは中村だ。初球。134キロの直球をものの見事にとらえると、弾丸ライナーが3ランとなって左翼スタンドに飛び込んだ。中村は言う。


「当たった瞬間、行ったと思いました。9回から登板する山本(雅也)が、打席に入る前に声をかけてきて、”リードが2点じゃ足りない”というので、”追加点を取ってやる”と答えたんです。その通りになって良かった」


 これで6対1、勝負あった。左足のつった平元が大事を取って降板しても、あとを受けた山本が9回裏をヒット1本でしのぎ、広陵が3回戦進出を果たすことになる。


 それにしても、中村の当たりが止まらない。「ホームランはまぐれでしょうが、高校生であれだけバットをしならせて打てる打者は、そうはいません。打つだけじゃなく、微妙なコースに変化球がきても、バットがぴたっと止まる」(中井監督)。1、2回戦で9打数7安打6打点、しかも3ホーマーだ。本人は「好投手との対戦は楽しかった」というが、これだけ打てればそりゃそうだろう。

3季連続4強の鍛冶舎監督が勇退

 敗れた秀岳館・鍛治舎監督によると、「完敗です。中村君を抑えて打線を分断するはずだったのに、3本も打たれては……」。


 今大会限りで勇退となる鍛治舎監督。「グラウンドの本部席にある、自分の私物はすべて整理してきました」。だが、圧倒的な打棒と豊富なタレントを擁して、4季連続出場。「去年は飛び抜けた選手が2、3人いました。今年はそれはいませんが、ポテンシャルの総和は高いと思います。実は昨夏、大会が始まってすぐに“強敵は作新学院。全国制覇には、打倒・作新”と思いましたが、先を見すぎるとダメですね。今年は目の前の一戦一戦」と全国制覇を目指した最後の夏は、2回戦で敗退した。


 それでも「横浜、広陵という、きっての名門と試合ができ、夢のような時間でした」と鍛治舎監督はいう。昨春夏、今春と、3季連続で4強に進出した存在感は、甲子園に強烈な印象を残した。鍛治舎監督の、こんな言葉を思い出す。「どういうカラーのチームか、ではなく、カラフルなチームにしたいんですよ」。そういえば過去の甲子園では打撃戦もあれば、投手戦も、先行逃げ切りも、逆転勝ちもあった。社会人野球では、家電の松下電器(現パナソニック)に在籍していた鍛治舎監督らしい表現といえばいえる。


 さて……勝った広陵の、次の対戦相手は聖光学院(福島)。2試合3ホーマーの中村には、なにやら新怪物誕生の予感さえする。ちなみに、1大会個人通算最多本塁打記録は、あの清原和博の持つ5本である。

楊順行
楊順行

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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