珍しく乱れた“ボルトらしさ” ラストランは銅、それでも主役はこの男

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競り合い制しガトリンが優勝

男子100メートル決勝のレース直後、苦笑いを浮かべるボルト(右) 【写真:ロイター/アフロ】

 時が止まったかのようだった――。それまで目の前のレースに熱狂していた5万5000人の観衆が、ゴールの瞬間、誰が勝ったのかと固唾(かたず)をのんだ。その結果を見たとき、“伝説”でもなく、“新星”でもない、それまで“ブーイング”の対象である選手だと分かると、ロンドン・スタジアムには不思議なざわめきが包み込んだ。

 陸上の世界選手権ロンドン大会2日目、この日の最終種目として男子100メートル決勝が行われた。今大会での引退を表明していた“人類史上最速の男”ウサイン・ボルト(ジャマイカ)は、4レーン。その隣には、同日に行われた準決勝でボルトに先着した21歳の新鋭クリスチャン・コールマン(米国)が並んだ。号砲とともに飛び出したコールマンを追う形で、中盤からボルトがその差を詰めていく。しかし、ボルトには今までの世界大会で見せた加速が見られず、コールマンの前に出ることがなかなかできない。

 人々の視線が中央レーンの2人に注がれる中、8レーンから飛び出したジャスティン・ガトリン(米国)が中盤付近から2人をとらえると、後半の加速で一気に前に出た。
 ガトリンは9秒92を記録し、2005年のヘルシンキ大会以来2度目の100メートルでの金メダル。100分の2秒差でコールマンが2位、100分の3秒差でボルトが3位となった。

必死のレースでの敗因

最後に伸びたガトリン(手前)が金メダル 【写真:ロイター/アフロ】

「スタートにやられた。普通ならラウンドを重ねるごとに良くなっていくが、そうならなかった。そこにやられた」

 レース後、ボルトは敗因をそう振り返った。前日の予選から「スターティングブロックでつまづいてしまった。今まで経験した中で最悪だ」と、スタートに課題があったことを話していた。実際、リアクションタイムだけを見ても、優勝したガトリンが0秒138、スタートダッシュを決めたコールマンが0秒123なのに対し、ボルトは0秒183。もし、2人と同じぐらいの反応ができれば、結果が逆転していたという計算にもなる。

 ただボルトにとっては、隣がコールマンだったことも敗因の1つだろう。スタートで遅れを取り、さらにピッチが速いスタイルのコールマンが先に最高スピードに到達するのに対し、ボルトは後半型のストライド走法なのは周知のこと。今までは伸びのあるストライドで、加速が生きてきたが、前を無理に追いかけてしまったことで、いつもの伸びが見られない。ゴールの瞬間、少しでも速くラインを超えようと頭を下げていったことも、今までのボルトにはほとんど見られない必死な姿だった。

 一方のガトリンは、2人とはレーンが離れていたこともあり、スタートもスムーズに決め、後半の加速もうまく乗っていた。さらに彼に送られた“大ブーイング”が、「自分のエネルギーを自分がすべきことに集中した」と、より集中力を高めることに働いたのかもしれない。

 競技的な側面で言うと、ボルトはこのレースで敗者となった。

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